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第452話 物語とは関係ありません16 『 なんちゃら2(仮) 』編

4コマ劇場 アイオライト_810・・・・・2013/12/13

 シリーズ3

  タイトル「物語とは関係ありません16 『 なんちゃら2(仮) 』編」


第1話


 中等部二年の夏休み――鷲崎瑞希はちょっとした奇跡を体験した。

 いや、そう言ってしまうと少し語弊があるかもしれない。なにしろ瑞希には奇跡を受けたという自覚がなく、またその当事者でもなかったからだ。

 全てが終わり、いろんな話を聞くことで、はじめて己が奇跡の一端に関わっていたことに気づかされる。つまり、瑞希のあずかり知らぬところで奇跡は発生し、彼女が何をすることもなく物事は解決してしまったというわけだ。

 誤解のないように付け加えておくと、瑞希は積極的に奇跡へ関われなかったことを嘆いているわけではない。なんの事実も知らされず、ある意味蚊帳の外だったとはいえ、その出来事が無事に解決できたことを心の底から喜んでいる。

 むしろ、奇跡の過程で大切な先輩が命を落としてしまうかもしれない事実を突き付けられていたとしたら、瑞希は平静を保つことができなかっただろう。

 正直、先輩のために何もできなかった自分には苛立ちを覚えることもある。しかし、今となればこれで良かったとも思える。

 先輩が無事なら、瑞希にはなんの不満もなかった。


 夏休みに入る直前のある日のこと、瑞希の所属しているクラブの部室で原因不明の大爆発が発生した。その事故により、部員の一人が意識不明の重体に陥ってしまう。

 事態を重く見た学園側は、原因が判明するまで瑞希たちの部活動を禁止する。

 しかし、瑞希たちは事故に巻き込まれた部員の夢を叶えるためにも、学園の決定事項に反して部活動を再開させた。

 そんな部活動の中で奇跡を体験するわけだが……学園側にしてみれば何ら関係ないことである。結果、瑞希たちは自宅謹慎を言い渡されてしまった。

 謹慎期間を終えた瑞希たちは本日から学業に復帰する。

 慌ただしかった夏休みとは違い、平穏な日々が戻ってくるだろう。そんな淡い期待は、復帰初日で打ち砕かれた。

 教室に入ると、仲の良い友人たちが駆け寄ってくる。

「瑞希、久しぶりだね」

「お勤めお疲れ様です」

「『Planet MANA』の制作は順調みたいだよ」

 ほぼ同時に喋りはじめる友人たちに瑞希は難しい顔をする。べつに聞き取れなかったのではなく、あまり触れてほしくない内容が含まれていたからだ。

「お久しぶり、心配かけてゴメンね。お勤めって、どこかの施設に入れられていたわけじゃないんだから。あと、『Planet MANA』の話は聞かないで……」

 苦笑しながら伝えると、今度は友人たちが不思議そうな顔をする。

「えぇ~、どうしてさ~?」

「瑞希から話聞けるの、すっごく楽しみにしていたのに~」

「『Planet MANA』は、あなたたち『なんちゃらプラネット』をモデルにした映画なんでしょ?」

 おもわず言葉を詰まらせてしまう瑞希……

 『Planet MANA -星を創った学生たち-』 それは、瑞希たちが体験したひと夏の奇跡を題材に制作されている映画のことであった。

 詳しくは、いずれ語られる機会があるかもしれない。しかし、瑞希からあの奇跡について、誰かに話すつもりはまったくなかった。

「え、え~っと、映画が完成してから確認してねってことで~」

「なるほど、口止めされているってわけね」

「う~ん、すごい話題作なんだから、完成前の情報リークはマズイもんね~」

 どうやら友人たちは、都合よく勘違いしてくれたようだ。

 確かに瑞希たちは奇跡について口止めをされていた。それは、映画制作関係者からではない。

 瑞希たちに口止めをした相手とは、現存する二神の一人。平たく言えば、この世界の神さまであった。


リーン、ゴーン、リーーーン……

 始業を告げるチャイムが鳴り響く。程なくして担任教師が教室に入ってくる。

「は~い、みんな席について~。え~、今日はみんなに転入生を紹介するね~」

 それを聞いて教室内がざわめく。自分の席に戻ろうとしていた数人は、あまりのことに立ち止まって、おもわず固まってしまった。

 ここ私立白鳳学園は、初等・中等・高等の一貫教育の学園である。

 一度入学してしまえば進級・進学するのにそれほど苦労はしないが、それはあくまでも初等部から学んできた生徒たちに限られている。

 中等部あるいは高等部からの入学……ましてや年度途中の転入など、よほど高成績を収めない限り認められていない。つまり、これから紹介される転入生は、もの凄く優秀な生徒だといえよう。

「さあ、入って来て」

 クラス中の視線が入口の扉に集まる。誰もが転入生に興味を持ち、好奇心に満ちた視線を向ける。しかし、扉を開けて現れた転入生の姿を見るなり、みんな言葉を失い――思考を止められたかのように固まってしまった。

(痛い子キターーーーー)

 転入生というのだから、瑞希たちと同じような生徒が現れるものだと……普通は考える。少し変わったことがあったとしても、多少なら想定内として受け入れられるだろう。

 だが、その出で立ちは、瑞希たちの想像を軽く超越していた。

 麦わら帽子を被り、火の国の額当てを付け、丸亀マークのついた山吹色の道着を纏い、はだけた胸元には柄杓の形をした星座の傷跡が見え、極め付けは死神代行の大刀を背負っている。

 一言で表現するのなら 『いろいろ雑ざっている』 であろう。

 某有名漫画雑誌の新旧ヒーローの特徴を合わせ持つものの、全てに完全に勘違いをしている。とにかく……とても残念なのである。

「え~、自己紹介をしてくれるかな~」

 えも言われぬ空気を察したのか、担任が転入生を促す。すると、転入生は半歩ほど前に出て、胸を張るよう高らかに叫んだ。

「拙者、魔界一の大国、デマントイド王国よりやって参った。名をショーロマイト・ガーネットと申す!」

 口調も時代錯誤――

 まるで、この国の文化を勘違いしている外国人のようである。

「ま、魔界……って?」

 誰かがそう呟いた。

 ぶっ飛んだ姿とそのキャラクターにより話半分で聞いていたのだが……言われてみれば自己紹介にとんでもない単語が含まれていた。みんなもそれに気づいて騒ぎはじめる。

「お、驚くのも無理はないと思うけど……彼の言ったことは本当のことです」

 教師生活2年目。まだまだ駆け出しの若い担任も困ったように苦笑する。

「そ、それってつまり……」

「ふむ、拙者の故郷はこの聖界でいうところの異世界。種族的に言えば……魔族ということになり申す」

 いったい何の冗談なのだろう。転入生は自分のことを魔界からやって来た魔族だと言った。

 もしそれが本当だとすれば、まさに大変なことである。いや、単なる妄想……厨二病全開の、見た目通り痛い子なだけかもしれない。

 いまのところ、何が真実であるかは謎である。ただし、受け手に与えた影響は計り知れないものがあった。

 我に返ったクラスメイトたちが一斉に騒ぎはじめる。中には、狂ったように悲鳴を上げる生徒もいた。

「み、みんな落ちついて、彼は……危険な魔族ではないから!」

 担任教師の言葉も、大音量のざわめきに掻き消されてしまう。こうなってしまえば、しばらくは収拾がつかないだろう。

 魔族の転入生の登場に、瑞希の日常が音を立てながら崩れてゆく。もうしばらくは、平穏な日々が戻ってくることはなさそうだ。



★ コメント ★

 お久しぶりだね瑞希ちゃん♪(笑) 例のごとく全30話を予定しています(更新は別タイトルで・・・)


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