8.孤児院訪問
彼女が住んでいたという孤児院は、高校からさほど遠くない所にあった。多分、工藤邸からの距離と大差ない。
高校在学中にも関わらず仕事を探していたことといい、わざわざ住み込みを志望したことといい……。
「……まるで、どうしても出て行きたかったみたいだな」
つぶやいて、敷地内に入る。そこで遊んでいた子供たちに、すぐさま囲まれた。
「お兄さん誰ー?」
「怪しい人ー?」
本人に堂々と聞くところが、子供らしい。新一は苦笑しつつ言った。
「オレは蘭…毛利蘭さんの知り合いだよ。院長さんと話したいんだけど」
反応は意外だった。
「もうり?」
「らんさん?」
「誰だっけ?」
なぜか首を傾げる子供達。答えを出したのは、10歳を少し越していそうな、ショートカットの女の子だった。
「ああ、多分花ちゃんの事だよ。確か、本名そんな名前だったから」
一斉に「あ〜」と納得する子供達。少女はその子達にゲームを続けるよう言うと、「こっちです」と新一を案内した。
「いいの?オレが何者が確認しなくて」
「工藤新一さんでしょ?有名人の。花ちゃんから、ちらっと聞いたことあるから」
自分を覚えている名称が「高校生探偵」ではなく、単なる「有名人」だということにさりげなく落胆したが、そこはポーカーフェイスで訊いてみた。
「へぇ。なんて?」
返事は、これまた意外なものだった。
「高校でもすごい美形で、ちょっと私に似てる人って」
「似てる?」
どういう事?
そう訊こうとしたとき、少女は立ち止まった。
「院長ー、お客さんだよ。花ちゃんのお友達」
中から扉を開けたのは、初老の婦人だった。新一が頭を下げる。
「初めまして。工藤新一といいます」
「ああ、花ちゃんの勤め先の方ですね。どうぞ。一度お話したかったわ」
少女に、みんなの所に戻るよう言うと、彼女は新一に椅子をすすめた。
「あの子は、よくやってますか?」
「ええ。休日には、ここに戻ってきてるはずですが」
「ええ、まあ。ちゃんと3回とも、戻ってきてくれてますよ。でも、なかなか話してくれないんです」
新一の表情が変わったことに気付かず、話を進める院長。
「……ところで、さっきちょっと、気になったことがあるんですが」
その後、穏やかに苦笑していた院長は、顔を曇らせることになった。 |