3.面接を終えて
「よかったわ、あなたが引き受けてくれて」
蘭を見送るために一緒に出た玄関先で、有希子は嬉しそうに言った。
「優作もね、ほっとしてると思うわ。ああ見えて」
「どうしてですか?」
多分、応募したのは自分だけじゃないだろうと、蘭は思っていた。なにせ、家族全員が有名人というとんでもない家だ。
「だって、あなた新一と同い年なんだもの」
「?」
──それが何なのだ。
有希子は、心なしか母親の顔になった。
「新一はね、昔から頭も要領もよくて、何でもできる子だったの。ただ、そのせいで同世代の子と打ち解けられない所があるのよ」
「え?」
蘭は驚いた。学校で時々見かける彼は人気者で、およそそんな風には見えない。
「もちろん、表面上は友人も多くて人気者よ。さっきも言ったけど、要領はいいから。でも、頭脳がずば抜けているからかしら、なんていうか……壁をつくっている所があるのよ。ものが同じようには見えないのかしらね。
だから、あなたがそばにいてくれれば、あの子も少しは変われるんじゃないかと思ってるのよ」
「……そうなんですか」
うなずきながら、蘭は心中で反論していた。私みたいな人間じゃ、かえって見下されるんじゃないですか?と。
しかし、結果的に、この夫妻の決断は、大いに身を結ぶことになる。
孤児院に帰ると、まっ先に院長に呼ばれた。
「どうだった?うまくいきそう?」
「ええ、先方もいい人のようで。奥様に、とても喜んでいただきました」
「そう。よかったわ。でも……寂しくなるわね」
そう言いながら、彼女は笑顔を崩さない。昔から、相手を困らせるようなな顔は極力しない人だった。
「大丈夫ですよ。時々はお休みをもらえそうですし。ここから遠くないですし、その気になれば、いつでも帰れます」
彼女を励ますように言う蘭が、今言った自分の言葉に動揺しているとは気付かず、彼女はまた笑った。
「がんばってね、花ちゃん」
彼女の激励に笑顔で頷きながら、蘭は部屋へと向かった。 |