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ROBOT HEART絵本風シリーズ

ROBOT HEART 【2】

作者:Cat Bell
If you can fly again, I would like to go together.
To the place distant somewhere different from this.
とある【平和な世界】があった。
かつて一度は戦争で、滅びてしまった世界であった。
人々は過去を大いに反省し、争いのない世界を作った。

お金や地位や向上心。
争いの元はすべてなくした。
食べ物、住む場所、仕事に家族。
必要なものは配られた。

初めからすべてを与えられた彼らには、
疑問も不安も苛立ちも、不満も妬みも何にもなかった。
そんな【平和な世界】には若い博士が1人いた。
生まれたときから彼は将来、博士になると決められていた。

挿絵(By みてみん)

ある日、壊れたロボットが、博士の元へと運ばれて来た。
かつて世界を滅ぼした、危険な兵器のロボットだった。
博士は兵器のロボットを、調査するよう命令された。
危険な兵器のロボットだったが形は人間そっくりで、少女のような見た目をしていた。
背中には大きな機械の翼があって、どこかで目にした天使の姿を博士に思い起こさせた。


スイッチ入れられロボットは、機械の瞳を博士に向けた。
「私の言葉がわかるかい」
博士の言葉にうなずくロボット。
「キミについてた危険な装置はすべて外して捨ててしまった。
ここは【平和な世界】であって、キミはいらない存在だ。
しかし私は7日間、キミを観察することにした。
キミがこの【平和な世界】に意味のある物ならば、キミを修理し自由にしよう」



挿絵(By みてみん)
1日目、何事もなく過ぎ去った。
人が行きかう街の中、ただ立ち尽くすロボットに、
人々はちらりと視線をやるだけで、いつもと同じ毎日を同じように終らせた。



挿絵(By みてみん)
2日目は強い風が吹いていた。
一人の婦人がやって来た。
婦人は肩に掛けていた、厚手のストール差し出し言った。
「受け取りなさい。こんな日にあなたは何も羽織っていない」
ロボットにストール巻きつけて、婦人は首を縮めて帰っていった。
「忘れていたわ。風がこんなに冷たいものとは」



挿絵(By みてみん)
3日目は日射しが地面を焼いていた。
一人の青年やって来た。
青年は足に履いていた、革のブーツを差し出し言った。
「受け取りなさい。こんな日にキミは何も履いていない」
ロボットにブーツを履かせると、青年は足早に帰っていった。
「知らなかった。地面がこんなに硬いものとは」



挿絵(By みてみん)
4日目は激しい雨が降っていた。
一人の男がやって来た。
男は手に持っていた、大きな傘を差し出し言った。
「受け取りなさい。こんな日にキミは雨宿りもしていない」
ロボットに傘を持たせると、男は雨に打たれて帰っていった。
「気づかなかった。雨がこんなに痛いものとは」

ロボットは博士に聞いてみた。自分には何が必要なのかと。
「キミには何もいらないはずだ。
キミは寒さも暑さも痛みですらも、持ち合わせてはいないのだから。
彼らの取った行動は、無駄で意味のないことだ。
しかし彼らは何かを失い、それで何かを手に入れた。
与えられたのはもしかして、彼らの方かもしれないよ」



挿絵(By みてみん)
5日目は霧が辺りを覆い隠した。
一人の少女がやって来た。
「ねぇお願い。あなたの羽を一本でいい。私にくれることはできないかしら」
ロボットは羽を一本抜き出すと、少女に向かって差し出した。
「あなたを見たとき思ったの。あなたはとっても綺麗だと」
少女は羽を抱きしめて、霧に隠れて帰って行った。

ロボットは博士に聞いてみた。自分はなぜこの形なのかと。
「確かにキミは美しく、愛らしい姿に作られている。
危険な兵器のロボットに、似つかわしくもないほどに。
私はこの調査でのキミ処分が決まったならば、キミを破壊するだろう。
そんな私でさえも、それは惜しいと少し思う。
そしてそれはやはり非常に、危険なことだと感じるよ」



挿絵(By みてみん)
6日目は一人の少年がやって来た。
少年は松葉杖をついていた。
「その翼を使ってキミは、自由に空を飛びまわれるの?」
ロボットは答えた。
自分の翼は壊れているから空を飛ぶことはできないと。
「ボクの足も壊れてしまった。ボクの仕事は曲芸師。
みんなを楽しませるのがボクの仕事だ。
だけどもう、ボクも飛べなくなってしまった」
うな垂れつぶやき少年は、杖を突きながら帰って行った。

ロボットは博士に聞いてみた。彼はこれからどうなるのかと。
「彼には別の役割が、すでに用意をされている。何も心配いらないはずだ。
それよりキミは自分のことを、もっと考えたらどうだろう。
明日は7日目、最後の日。キミは今、いったい何を考えている」



挿絵(By みてみん)
最後の日、少年は再びやって来た。
少年はわずかな笑みを作って見せた。
「次の役目が決まったよ。動物の世話をするのがボクの仕事だ。
とっても素敵な仕事だよ」
ロボットは言った。
それなのに、あなたは嬉しそうには見えないと。
「まだちょっと慣れないだけだよ。それだけさ……」
少年は再びうな垂れた。
「ねぇもしも、キミが再び飛べたなら、僕も一緒に連れて行ってよ。
こことは違うどこか遠くへ」
ロボットがうなずき少年は、ロボットの小指に指を絡ませ、約束だよと微笑んだ。

ロボットは博士に聞いてみた。自分はいらないものだったかと。
このままあなたに壊されて、二度と飛べはしないかと。
「キミは何も持たないただのロボット。ただただそこにいただけだ。
そんなキミに人々は、何かを思い、何かを感じた。
私はそれを無駄なことではないと思うよ」








挿絵(By みてみん)
ある日の夕暮れ人々は、太陽沈む茜の空に一羽の大きな鳥を見た。
見た事もないその鳥は、どこかで目にした天使の姿を彼らに思い起こさせた。
「あの鳥は少年を一人連れていた」
誰かがそう口にした。
人々の心の奥底に小さな小さな疑問が生まれた。

いったいどこへ少年は、旅立ってしまったのだろう。
いったいどうして少年は、そんなことをしたのだろう。
いったい何を少年は、あの地の果てに見つけるだろう。

小さな小さな亀裂から【平和な世界】は壊れていった。
一度壊れ始めたそれは止めることなどできはせず、あっという間に崩れて落ちた。
それはあまりにあっけなく、もろい砂山のようだった。



挿絵(By みてみん)



こうして再びロボットは世界を壊すこととなったが、
博士はなぜかそのことを、後悔してはいなかった。


★ Let's go somewhere ★
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