諦観
昔は 何の気がねもなく 言えた言葉がある
何の遠慮も 気遣いもなく 言えた言葉がある
昔は なかなか言えなかった言葉がある
言った後の事を考え 言うのを恐れた言葉がある
前者は 主に友人に
後者は 主に恋人に
それが
今では 言えなくなった
今では 言えるようになった
友人に気を遣い始めた 言葉を選んだ
恋人を思いやらなくなった 言葉をぶつけた
いつの間にか 自らの中で何かを得て
それと同時に 自らの中で何かを失い
その結果として 自らの中で何かが残り
最後に 自らの中で何かが変わった
そして
今では言えなくなった自らの意志を
熱い溶岩のような魂のこもった言葉を
それは 年をとったためなのか
それは 切磋琢磨を恐れているのか
分からぬまま ただ
それが 冷たくなっていくのを 眺めている
じっと 死に向かっているのを 眺めている
そして
今では言えるようになった陳腐な言葉を
うわべだけで魂のこもっていない言葉を
それは 年をとったためなのか
それは 処世術を身につけたからなのか
分からぬまま ただ
それが 無駄に騒いでいるのを 眺めている
騒ぎ 得しようと動いているのを 眺めている
しかし 僕は ただ
それが 悪い事なのか それが いい事なのか
全く 考える 気力もなく
対岸の火事を 単なる好奇心から 見るように
ただ ぼうっと 眺めている
「どっちだっていいのさ 大して変わりはない」
そうした 諦めの心境を持って
ただ ぼうっと 眺めている
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