第四十一話:一難去ってまた一難
目の前には真っ黒で巨大な球体。
それはまわりの物を飲み込みながら私達に迫ってくる。
その距離わずか数メートル。
攻撃する気でいたスカイ達は、急いで防御動作に入るが――距離が近すぎる。
ルナがとっさに張った守りの壁も球体に触れた瞬間、あっという間に霧散してしまった。
何もかもが手遅れだった。攻撃も防御もする時間など無かった。
――終わった……
あれを受けたら無事で済むはずがない。私は覚悟を決めるしかなかった。
「バニッシュ!」
シェイドの掛け声と同時に真っ黒な球体は私達のもとに着弾し、そして――
ドカーーーン!!
――大爆発を起こした。
「――……え?」
だが、私はいつまでも意識を保っていられた。
あれだけの爆発なら即死でもおかしくはないのに――ん?
私は身を起こそうとしたが、何かが身体の上に乗っていて起き上がることができない。
それは全体が黒くて、所々に黄色いわっか模様がある――
「が、ガランさん!!?」
なんと上に乗っていたのはガランだった。
まさか……私を庇って……
「ひ、なた……無事か……?」
と、ガランはとても弱々しい声で問い掛けてきた。
私はなんとか抜け出しガランの方を見て頷いた。
「よか……た……」
「ごめんなさい……私……」
「何で……謝るん、だよ……。俺が…勝手にやった、ことだ……。
それに……他の奴らだって、そうだぜ……?」
ガランの言葉にハッ、と顔を上げ、まわりを見てみる。
隣ではアランがカズキを守るように倒れていていて、後方を見てみれば、ルナが倒れているスカイを涙目で揺さ振っている。
「みんな……大切な奴を守るために動いた……
ただ、それだけだ……」
「ガランさん……」
ヒナタの声にガランはニッ、と笑うとガクリと意識を失った。
「……………」
私は無言で立ち上がると、ツルを伸ばしてカズキを手繰り寄せる。
「カズキ。ほら、起きて。」
「ふぇ……あ、ヒナタ!無事だったんだね!?」
カズキは私の姿を見るなり安堵の表情を見せた。
しかし、私は無言のまま何も言わない。
「……ヒナタ?」
「カズキ……あいつを、倒そう。絶対に!」
「!?」
カズキはとても驚いた表情になった。
私が急に大声を上げたというのもあるが、一番の原因は、私が“泣いていた”ことだろう。
ただしその涙は、悲しみではなく怒りの涙だ。
「みんなを傷つけたあいつを――絶対に!!」
「ヒナタ……うん、わかったよ!
あいつを――シェイドを倒そう!」
「ルナも協力して!」
「もちろん!スカイをこんなにしちゃって、許さないんだから!」
私達はキッ、と前を見る。そこにいるのはムウマージ――シェイドだ。
「まさか三匹も仕留めそこなうとは……。この技は反動が大きいというのに……。」
シェイドは悔しげな声を上げる。
宙に浮いているが、その体はふらついていて相当ダメージが溜まっていることがわかる。
デアボリック・インパクトは威力こそ反則的だが、与えたダメージの二分の一を受けるというデメリットが存在するのだ。
「ヒナタ!あいつは技の反動で動けないみたい。攻撃するなら今だよ!」
「ええ。でも、動けなくても迎撃ぐらいはできるはず。みんな私の指示通りに攻撃して!」
「わかった!」
「オッケ〜!」
庇ってくれたみんなのためにも、こいつだけは絶対に倒す!
私は背中の種に力を込め――
「タネ爆弾!」
種型の爆弾を放った!
しかしシェイドはいかにも余裕といった表情を見せる。
「その程度ではワタシは倒せませんよ!?
シャドーボール!」
シェイドが放った黒い弾によって、私のタネ爆弾はいとも簡単に相殺されてしまった。
タネ爆弾は途中で爆発し、黒煙がお互いの姿を隠す。
でも、これは計算のうち!
「カズキ!」
「うん!オーバーヒート!」
「なっ!?」
カズキの放った仄白い炎は、黒煙を突っ切ってシェイドに向かって飛んでいく。
「ま、守る!」
シェイドは緑色に輝くバリアを前方に作り出しそれを防ぐ。
くっ、守を覚えてたのね……!
さすがにこれは予想外だった。
だが、いい方向で予想外のことも起こった。
「裂破!」
ルナの掛け声とともに白銀に輝く鳥がシェイドに向かっていき、そして――
バリーン!
――ガラスが割れるような音を立てて、守るを打ち砕いた!
「ぐあっ!?」
裂破はそのままシェイドに直撃し、ダメージを与えた。
「ヒナタ!今だよ!」
「え、あ、うん!カズキ、日本晴れをお願い!」
「わ、わかった!」
こんなこともできるのか、と感心していたが、ルナの声にあわてて指示を出す。
「合わせていくわよ!?」
『うん!』
「ソーラービーム!!」
「オーバーヒート!!」
「火炎放射!!」
日本晴れの効果で強化された技が一つに合わさり、シェイドの身体を貫いた。
「ぐ……く、そ……」
攻撃をまともに受けたシェイドは地面に倒れ伏していた。
もはや宙に浮かぶ余力もないようだ。
「倒した、の?」
「やったよヒナタ!僕達勝ったんだよ!」
「わーいわーい♪」
はしゃぐカズキとルナに対し、私は妙な胸騒ぎを覚えていた。
なんだろう……この感覚。まだ何かあるような……この胸のざわめきは……
「は…はは……」
『ッ!?』
突然シェイドが笑い声を上げた。
私達は揃ってシェイドに視線を向ける。
「……何がおかしいの?」
「はは……まさか…ワタシが、敗北するとは……思いませんでしたが……念のため、保険を用意して、おいて…よかった………」
「!?どういう意味!?」
「なに……あの盗賊に、部下を二匹、差し向けただけですよ……」
「なん……ですって……!?」
盗賊――これは紛れもなくジュプトルのことを指している。
なぜジュプトルを!?ジュプトルは無関係のはずなのに!?
私が絶句している隙にシェイドはふらふらしながらも宙に浮かび上がる。
「さて……ワタシは一時退却しますか……。さすがにダメージを受けすぎました……。」
「ま、待て!!」
カズキは叫んだが、その時にはすでにシェイドはテレポートの体制に入っていた。今から攻撃しても間に合わない!
シェイドの体が透けていき、その顔がニタリと笑う。
しかし、完全にその体が消える次の瞬間!
「がっ!!?」
『!?』
突如、私達の背後から何かが飛来し、シェイドに直撃した。
消えかけていたシェイドの体が再び実体を持ち、地面に突っ伏する。
「何逃げようとしてんだシェイド?まだオレの言った命令を果たせてねぇだろ?」
「る、ルエル…さま……」
苛立ったような声で喋りながら現れたのは、右目に黒い眼帯を付けたバンギラス。
その手には少し大きめの銃が握られていた。
しかもただの銃ではなく、銃口のしたにナイフがついた銃剣だった。
バンギラスは私達の前を素通りし、倒れた状態で驚いているシェイドの前に来る。
「ルエル様……なぜ、ここへ……?」
「レインの奴が仕事を代わってくれたんだよ。
……それより、無様な姿を晒しやがって、オレの顔に泥を塗ってんじゃねぇよ!」
「も、申し訳――ぐあっ!?」
バンギラス――ルエルは、銃に付いている剣でシェイドの身体を刺した。
苦痛に声を上げるシェイドをルエルはさらに痛め付ける。
「この役たたずが!」
「……………」
ルエルが罵声を浴びせるがシェイドは応えない。
どうやら気を失ってしまったようだ。
「ったく!スカイはともかく、ほかはみんな雑魚じゃねぇか。苦戦する意味がわからねぇ。」
そう言ってルエルは人を見下すような目で私達のほうを見る。
しかし私は、新たな敵の登場に焦りを覚えた。
くっ!ジュプトルが危ないっていうのに!
私は自分の危険の前にジュプトルのことを心配していた。ジュプトルはルナティックのことを知らない。それを知らずに戦闘になったら、いくらジュプトルでも苦戦するはず――。
早く助けなくちゃ!
「フンッ!シェイドの姑息な作戦が心配か?他人のことより自分のことを考えたらどうだ!?」
「!?」
ルエルが素早く銃口を私に向け――撃った。
放たれた弾丸は私の頬をかすり、地面にめり込む。
「安心しろ。せいぜい痛くないようにあの世に送ってやる。感謝するんだな!」
「禁!」
二発目の発砲。今度はまっすぐに私の額を捉えていた。
ルナが瞬時に不可視の壁を展開するが――
「無駄だ!」
「ウソッ!?」
――弾丸は壁を貫き、そのまま直進した。
私は思わずギュッと目を瞑った。
が、その時!
「守る!」
突如響いた聞いたことのない声。そして何かが弾かれる音。
私は恐る恐る目を開けてみた。そこには――
「何とか間に合ったようですね。」
「間一髪、ってところかな?」
ドククラゲ、そしてツボツボ。
――長と無月の姿がそこにあった。
新たな敵の登場、さらに長い引きこもり期間を経て、無月と長が登場です!
無月
「誰が引きこもりだ!誰が!?」
え?君だけど?
無月
「よーし、歯食いしばれ……」
や、ヤバ………
ここは、逃げる!
無月
「待ちやがれぇ!!」
長
「無月様、落ち着いてくださいよ……(汗)」
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