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第四十話完成です。
第四十話:戦慄の人形劇

「今この場にいるターゲットは……全部で五匹ですか。」

突如現れたムウマージ――シェイドは、確認するようにいった。
五対一と不利な状況のはずなのにその声には余裕の色が見られた。

「どういうわけかブラックリストに載ってしまった可哀想なポケモン、ヒナタとカズキ。
元ルナティック暗殺部所属の仲良しコンビ、ガランとアラン。
そして、同じく元ルナティックで幹部達を束ねる総隊長、スカイ。
……裏切り者ばかりですね。」

シェイドは残念そうにため息をつく。面倒くさい、というふうにも見えた。
それにしても、スカイさんてそんな重要な役職についてたんだ…。

「あなた方を殺してしまうのは実に惜しいですね。特にスカイは、総隊長の上リヒトの補佐役というすばらしい地位を授かっていたというのに……。
仲良しコンビも、敵に一度助けられたくらいで考えを改めるなんて…残念すぎてため息も出ませんよ。」

そう言ってわざとらしく盛大にため息をつく。
出てんじゃねぇか、と元ルナティック組は心の中で言い返す。実際に声に出さないのは、シェイドの戦い方を知っているからだ。

「そこのフシギダネとヒノアラシは攻撃した相手が悪かったですね。
もしラクシアでなかったら、たかが毒状態にしたくらいでブラックリストになんか載らなかったでしょうに。」

「……どういうこと?」

「ラクシアは我が主君、ルエル様のお気に入りでしてね。そしてブラックリストを管理してらっしゃる。
…自分の大切なコレクションを傷つけられたら、こうなるのは必然でしょう?」

そう言って不気味に笑うシェイド。私は背中に氷塊が滑り降りたような感覚を覚えた。
静かで丁寧だけど、人を見下したような言い方。私は笑顔の裏に悪魔の顔を見た気がした。
汗が噴き出し、鼓動が早くなる。恐怖に似た何かが、私の心を締め上げてくる。

「まあ、ワタシならその件は水に流しても……」

「御託はいいからさっさと始めたらどうだ?どうせテメェは、初めから俺達全員を殺すつもりだろ?」

と、そんな私をかばうかのように、スカイが一歩前に出て言う。
ガランとアランは私とカズキに近づくと、そっと耳打ちしてくれた。

「あいつは相手を操ったり、惑わせたりするのが得意だ。あいつの言葉には耳を傾けないほうがいい。


「あいつは何を言おうが当初の目的を遂行する。」

イクリプスの二匹は元ルナティックだ。シェイドのことも知っているのだろう、さっき何も言い返さなかったのはそのせいか。
確かにさっきスカイが止めてくれなかったら、あいつを倒すという前に“どうしたら助かるか”ということを考えていたはずだ。
あの後「言うことを聞けば見逃してやる、さもなくば全員殺す。」などということを言われれば、“戦う”という選択肢は、薄れてしまうだろうから。

「劇の前のトークは長ければ長いほど劇が盛り上がるというものですが…せっかちなお客さんですね。
では、リクエストにお応えして始めるとしましょうか。――戦慄の人形劇を!」

シェイドの瞳がギラリと紅く煌く。すると、倒れていた探検隊達が起き上がり、全員の視線が私達に向けられる。
その瞳はシェイドと同じく紅く染まっていた。

「気味の悪い人形劇だな!火炎放射!」

スカイの口から灼熱の炎が放たれる。その炎は向かってきたゴーリキーに直撃し、吹き飛ばした。
しかし、ゴーリキーはすぐに立ち上がりまた向かってくる。

「無駄ですよ。このポケモン達はワタシの操り人形。
…人形が痛みや苦しみを感じると思いますか?」

シェイドは小さく笑う。目が紅いのもあって、その様子はとても不気味だった。

「それなら大元を断つまでよ!マジカルリーフ!」

「火炎放射!」

私はシェイドに向かって技を放つ。カズキも気づいて加勢した。
が、しかし……

「シャドーボール。」

シェイドが放ったシャドーボールにより、私達の技をいとも簡単に消滅してしまった。

「そんな攻撃でワタシを倒そうなんて、可笑しすぎて片腹痛いですよ。」

「くっ!」

さっきのシャドーボール。明らかに手加減していた。
ウィン達の足を引っ張らないようにと、せめて自分の身は自分で護れるようにと、依頼でダンジョンに行く度に鍛錬してきたのに、それでもぜんぜん歯が立たない……
私は自分の無力さに歯噛みした。

「ヒナタ!危ない!」

「…えっ?」

俯き気味だった顔を上げると、そこには操られたストライクが鎌を振り下ろすところだった。

「ッ!?」

「ジェットナックル!」

神速の如し速さでガランがストライクに殴りかかる。ストライクは遠くへと飛ばされた。

「大丈夫か!?」

「え、ええ。何とか……」

「……ヒナタ、そんなに落ち込むことはない。お前の判断は正しかったぞ。」

元気がない私の心を察したのか、ガランは少し口調を柔らかくして言った。

「でも、ぜんぜん歯が立たなくて……」

「当たり前だ。あいつは四天王ルエルの補佐役だ。その辺の幹部よりよっぽど強い。」

そこに、会話にアランが入ってきた。
こちらは口調は変わらないものの、心配するようにアランが言う。

「ヒナタ、元気出して?確かにあいつは強いけど、でも、きっと勝つ方法があるはずだよ!
今はその方法を考えなくちゃ!」

「自分一人で抱え込もうとすんなよ!俺達もいるんだぜ!?
――力を合わせて、な?」

カズキ、そしてスカイも続く。
…いつからこんなに弱くなっちゃんたんだろう?力が足りない部分は知識でカバー。それが私の考え方だったのに。
こんなところで落ち込んでてどうする。私だけでできないことでも、みんなでなら――

「……ごめん、みんな。心配かけちゃったね…。
でも、もう大丈夫。今はあいつを全力で倒す!――みんなで力を合わせて!!」

『――おお!!』

みんなには心身ともに助けられてばかりだな。それに応えられる様に頑張らなくちゃね!

「よし!そうと決まれば作戦会議だ!
“トルネードウォール”張ったからしばらくは大丈夫だぜ!」

私達の周りには風の壁が渦巻いていた。
ぜんぜん攻撃がこないと思ったら、こういうことだったのね。

「まず、操られたポケモン達を止めるにはシェイドを倒さなくちゃならない。…これは合ってる?」

「ああ。シェイドが自分から洗脳をとく以外はそれしかねぇ。」

「となると操られたポケモン達の攻撃を避けつつ攻撃するしかないわね。
さっきは偶然にも攻撃できたけど、次はもっと警戒するはず。
それに、さっきみたいに迎撃してきたりすることを考えると……かなり厳しいわね。」

さっきのシャドーボールはかなり強力だった。しかも、おそらくあれは全体の力の半分も出していない。
それに、もしもその迎撃をかいくぐっても、最悪の場合、探検隊を盾にしてくるかもしれない。

「あいつは特殊攻撃を極限まで高めたっていうしなぁ。並みの攻撃じゃ抜けられないぜ?」

「だが、厳しすぎる鍛え方のせいで、そのほかの能力値はかなり低いと聞いたが。」

「えっ?それはホントですか?」

ガランの発言にピンと来て、私は確認を取った。

「ん?ああ。大技を決めればほぼ一撃だろう。
……それができれば苦労しないが。」

「“敵の動きをすべて封じれ”たらできるかもしれないが。」

アランが言った一言。一見無理だと思えるが、私はこれをやってくれると思われるポケモンに心当たりがあった。
ウィンと違って子供っぽいけど、ウィンと同じように頼りになる存在――

『ルナならできるんじゃないかしら(かな)?』

カズキと声が重なった。驚いてカズキのほうを見ると、同じように驚いた顔で私を見ているカズキの姿。
考えていることは一緒のようだ。

「おお!なるほどな!!確かにルナちゃんならいけるかもしれねぇ!
よしっ!早速呼んで……」

「その必要はないよぉ♪」

風の音に混じって、子供っぽい声が聞こえてきた。
声のするほうを見てみると、渦巻く風の一部が動きを止め、そこから中へと入ってきたキュウコンの姿が――

『ルナ!?』

「久しぶり!ヒナタにカズキ!会いたかったよぉ!」

ルナは私に向かって飛びついてくる。
ちょ、ちょっとルナ!!?私今フシギダネなんだから!――く、苦しい……
姿は見えないが、カズキも同じような状況にさらされてるらしい、呻き声が聞こえてくる。

「……ルナ。その辺でやめとかないと本気で死ぬぞ?」

「え?……わぁ!ご、ごめんねヒナタ!カズキ!嬉しくてつい……」

アランの冷静な言葉でようやく解放された。
つい、でこんな事やらないでほしい…。ああ、頭が痛い……

「ああ、綺麗なお花畑が見える……」

カズキが目を虚ろにして言う。
か、カズキ!しっかりしてぇ!!
慌ててカズキの肩を揺すったら正気に戻ったからよかったけど、アランの言葉が冗談に聞こえなくなってきた…。
ちなみにスカイが嫉妬して飛び掛ろうとしていたのをガランが必死に止めていたのはまた別の話。


「……ゴホン!それでルナ。こういうわけなんだけど、できる?」

気を取り直して、私はルナに説明をする。ルナは勢いよく頷いた。

「任せて!…でも、ちょっと時間がかかるかも。」

「大丈夫!俺の“トルネードウォール”がある限り、敵の攻撃は通さねぇぜ!!」

スカイが自信満々に言う。
確かにこの風の壁は外の様子は見れないが、強固。そう簡単には破れないだろう。

「ルナちゃんの“封縛術”の準備ができたら“トルネードウォール”をとく。」

「そして動きを止めたらオレ達の――」

「ああ。合わせ技で止めだ。」

タイミングが大事だ。外の様子がわからない以上、いかに迅速に技が発動できるかが勝負。
――一気に畳み掛ける!
しかしこの時、私は一抹の不安を抱えていた。

「(…静か過ぎる…。)」

いや、“トルネードウォール”の風の音があるから“静か”とは言いがたい。
だが、さっきから敵の攻撃音などが聞こえないのだ。まるで誰もいないかのように。
シェイドが強いのは先程の攻撃から痛いほどわかっている。おそらくあの手加減攻撃でも連発すればこの風のバリアを破ることもできるだろう。
しかし、攻撃の音は聞こえない。

「(こちらがバリアをとくのを待ってる?でも、壊せるだけの力を持ってるのにわざわざ敵に回復の時間を与えるわけ……)」

と、ここで私はあることに気づく。よく嵐の前の静けさなんていうが、こういことなんじゃないだろうか?
――“私達と同じことをしようとしている”のではないだろうか?
たとえば、こちらを一撃で倒せるような技を持っていて、いまはその力をためている。そして、バリアが消えた瞬間に――ドカン。
これなら攻撃が来ないのにも納得がいく。しかしだとしたら……
――マズイ!

「準備オッケーだよ!」

「よし!“トルネードウォール”をとくぞ!」

「ッ!?待って……!」

私は叫んだが、時すでに遅し。風のバリアは消失してしまった。

「やっと出てきましたね。この時を待ってましたよ!」

『ッ!!?』

壁が消えて私達の目に飛び込んできたのは、真っ黒な巨大な球体を頭上に掲げるシェイドの姿。
シェイドはこちらが行動するより早く――

「闇に沈め!デアボリック・インパクト!!」

――真っ黒で巨大な球体を撃ち放った。
はい、いいところで切っちゃいました♪

スカイ
「ふざけんな!一体どうなるんだよ!?」

さあ、それは次回のお楽しみです♪
でも、まだこれからってところかな?


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