第二十八話:時の歯車を求めて
廃村になった村に朝日が差し込む。
その光で、僕は目を覚ました。
「お目覚めですか、無月様。」
「ん…おはよ、長。」
僕が目を覚ました頃には、長もジュプトルも起きていた。
「みんな早いね。」
「……今日くらいは早起きしてもらいたかったですよ…。」
長が呆れたように言う。
まあ、今日は大事な“決戦当日”だし、気持ちは分かるけどね。
ヨノワールがでたらめな事を言ってくれてから数日経った。
道具などを揃えたりして、なるべく万全の状態を作り、今日はいよいよ水晶の湖に時の歯車を取りに行くことになったのだ。
…別に急がなくたって、時の歯車は逃げたりしないと思うけど……。
「しかし、本当にいいのか?俺と一緒に乗り込めば、敵視されるのは必然だぞ?」
少し心配そうに言うジュプトル。
もともと一匹で行こうとしていたのを僕が引き止めたのだ。
「そんな心配無用だよ。自分の心配でもしてたら?」
「……ふっ、そうだな。」
本当の盗賊なら他の心配なんてしない。やっぱりこいつは正しいんだ。
「じゃあ、行こうか。」
「ああ。」
「そうですね。」
僕達は時の歯車を取りに水晶の湖へと向かった。
相も変わらず綺麗な水晶がきらきらと輝いている。
……気に食わない。そんなに輝いたら、僕が目立たないじゃないか。
と、心の中で文句を言いつつも洞窟を抜け、湖へ辿り着いた。
「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ。」
前に戦った場所には、大胆にもヨノワールが腕組みをして待っていた。その後ろには、時の歯車を守るユクシー、エムリット、アグノムの姿。
前と変わらず、湖は水晶で覆われていた。
「ヨノワール……。随分余裕だな。俺ごとき一匹で十分ということか?」
「貴様は私には勝てない。それは未来にいた頃からわかっているだろう?」
「それはやってみなくちゃ分からないだろ。」
「僕達もいるのを忘れないでよ?」
さっきから二匹しかいないような会話して、無視するなっての。
「お前はあの時のツボツボか?」
「そうだよ。…つまんない話はいいからさ、とっとと始めようよ。どうせ通してくれないんでしょ?」
「…ふん、そうだな。しかしお前達にこの私が倒せるかな?シャドーパンチ!」
「当たり前でしょ!守る!」
ヨノワールの拳から放たれた影は、守るによって防がれる。
「ジュプトル様。彼はワタシ達に任せて、時の歯車を!」
「だが……いや、わかった!」
何か言おうとしていたが、結局言わずにジュプトルはヨノワールの横を通って時の歯車のある湖に近づく。
「させんぞ!」
「それはこっちの台詞です!」
ジュプトルの前に立ちはだかろうとするヨノワールを、長が触手でからめとる。
ジュプトルはその間に先に進んだ。
「それ以上は行かせません。」
「時の歯車は渡さないよ!」
「おとなしく捕まれ!ジュプトル!」
ヨノワールに代わってジュプトルの前に立ちふさがったのは、時の歯車を守護する三匹だ。
「できれば戦いたくはないが、これも未来のため…世界のためだ!」
ジュプトルはリーフブレードを構え、突進していく。
が、しかし……
「封印!」
「なっ!?身体が…動かない!!?」
ヨノワールは雷パンチで長を振り払うと、ジュプトルに向かって技を放った。
封印は、対象の相手の動きを一定時間封じる技だ。
まためんどくさい技を……。
「長!これ持って!」
「お、おっと……!?」
僕は殻の中からバズーカ砲を取り出して、長に渡す。
そして、その中に入った。
「無月様!?まさか……」
「よく狙ってよ?さあ、撃って!」
「……わかりました。」
僕が使える、とっておきの技だ!
長はヨノワールに照準を合わせる。
「!!?皆さん!逃げてください!!」
さすがに慌てた様子のヨノワールが、ユクシー達に言う。
「他の心配してる場合か!?食らえ!モンスターキャノン!!」
ドオオーーン!!
轟音とともにバズーカ砲から発射された!
「くっ…!」
防ぐのは無理と判断したのか、とっさに左に避ける。
「甘いよ!」
「!?」
僕は触手でヨノワールをからめとる。
少し避けるくらいじゃ、この攻撃はかわせないよ!
そのまま勢いに乗って水晶の壁に激突する。
「ヨノワールさん!」
壁に激突し、倒れたヨノワールにユクシー達が近づく。
「さて、仕上げに…っと」
ヨノワールを解放して、僕は殻の中から“手榴弾”を取り出す。
安全ピンを外し、ヨノワールの傍にそれを置くとジュプトルのもとに急ぐ。そして……
ドカーーーン!!!
凄まじい爆発音とともに辺りの砂が舞い上がる。
同時に何かが砕けるようなガシャーン!という音も聞こえたため、おそらく水晶の壁が壊れたのだろう。
「(……ふっ、計算どおり。)」
ジュプトルを爆発から守るために張った守るの壁の中で、ちょっと嬉しい誤算にほくそ笑む。
「……お前等…本当に何者だ…?」
ヨノワールが倒れたせいか、封印が解けたジュプトルが驚きの表情を浮かべる。
「感心してないでとっとと時の歯車を取ってきてよ。」
「あ、ああ…。」
ジュプトルが時の歯車の沈む湖に近づく。が、その時!
「舐めるなぁー!!」
「何!?…ぐふっ!?」
突如倒したはずのヨノワールが砂煙の中から姿を現し、ジュプトルに炎のパンチをたたき込んだ。
「ジュプトル!?」
「おのれ!やってくれましたね!」
すぐさま近づこうとするが……
「重力!」
「なっ!?」
急に身体が重たくなった。
重力は、相手のまわりの重力を強くして動きを制限したり、鳥ポケモンを地上に引きずり落としたりする技だ。
どこまでめんどくさい技を使うんだ!
「散々てこずらせてくれたな。」
爆発で起こった砂煙が晴れる。
さすがに無傷ではなかったが、まだまだ余裕といった表情だ。後ろには爆発に巻き込まれたのか、ユクシー達が倒れている。
「覚悟はできているだろうな?食らうがいい。シャドーボール!」
「ぐっ……」
まともに食らってしまった。重力のせいでうまく動けない…!
「(ここはいったん引くか…?)」
ちょっと格好悪いけど、ここでくたばるよりはましだ。ジュプトルには悪いが、後でサン達に知らせて助けてもらおう。
……やっぱり出しゃばるのはまずかったなぁ。
動かしにくい身体を動かして、殻の中から“煙玉”を取り出す。
「ジュプトル!後で助けるからね!」
僕は煙玉を地面に叩きつける。その瞬間、辺りが煙に包まれた。
ヨノワールが立往生している隙に僕達はその場から逃げ出した。
「……逃げたか。」
煙が晴れ、静寂に満ちた空間にヨノワールの声が響く。
結局、時の歯車を取ることはできなかった。
「お前の仲間は、随分と頼りないのだな?」
「……………」
ヨノワールは、自分の攻撃によって気絶したジュプトルに問い掛ける。当然返答はない。
その後ヨノワールは、ユクシー達が起きるのを待ってトレジャータウンへと戻るのだった。
水晶の湖からなんとか脱出した僕達は、できるだけ急いで元レンレン村に戻る。
僕の感が正しければ、おそらくいるはずだ。
しばらくして到着すると予想どおり、村の北の外れにある海が見渡せる場所にピカチュウとライチュウの姿が見えた。
「サン!レイ!」
「ん?無月に長か。どうした…って聞くまでもないか。」
「ジュプトルがいないってことは、失敗しちゃったんだね?」
「…そ、そうだよ。悪い!?」
自分が悪いのはわかっているが、どうも素直になれない。
僕は湖での事を話す。
「なるほど。つまり簡単に言うと俺達にジュプトルを助けだして欲しいというわけか?」
「う、うん…。」
そんな呆れたような目で見るなっての!
「わかった。難しいが、出来る限りやってみよう。」
「任せてよ!兄ちゃんがなんとかしてくれるから♪」
「……お前もやるんだよ。」
「わかってるよ♪」
……今更だが、本当に大丈夫だろうか。
「だが無月。一つ言っておく。
自分に出来ないからって、すぐに人に押しつけるのはどうかと思うぞ。」
「っ…!?」
レイはそう言うと、サンを連れて行ってしまった。
「無月様……」
「わかってるよそのくらい…。でも、僕だって、誰かを守りたいって気持ちは、人一倍あるさ!」
なぜかムカつく。それは、悲しみにも似た感情。
「そんなこというなら、次は守護者の禁忌の技を使ってでも護ってみせるさ!」
もう聞こえないと知りつつも、レイに向かって力一杯叫ぶのだった。
昨日今日と部活で大会がありました。
ヒナタ
「結果は?」
…ベスト16です。
カズキ
「まあ、よく頑張ったと思うよ?」
さすがに県内トップクラスは強い…。
……まあそれは置いといて、そろそろキャラ人気投票でもやろうかと思ってます。その内番外編の方にでも載せるので、よかったら見てくださいね!
次回はキャラ紹介の予定です。
では。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。