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本音を言えない私にダサ眼鏡の彼氏ができました。 作者:みりん

第三章 薔薇のネックレス

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5 犯人

 私は、1限目を保健室のベッドの中で過ごした。

 生理痛だということにしたら、保健の先生は許してくれた。私が泣いていたのがバレていたのかもしれない。2限目が始まる前には保健室を追い出されてしまった。

 でも、皆にあんなこと叫んじゃって、私どんな顔して帰ればいいの? 先週レイカ達にもあんなにキツく意見言っちゃったし、あれ以来、レイカ達ともちょっとぎこちない。

 どうしよう。

 クラスの皆を責めるようなこと言っちゃって、皆怒ってないかな。

 後先考えずに言いたいこと言っちゃったことが、急に不安になってきた。でも、確かにあれが、私の思ったことで、間違ったことを言ったつもりはない。

 とぼとぼと、気の重いまま私は教室に帰った。

 私が入口に戻ると、気のせいか休み時間のざわめきが一瞬止まった気がした。すぐに気のせいだと思い直し、自分の席に戻る。ため息をついた。

 ええと、2限は英語だったはず。教科書を出していると、レイカ達がやってきた。

「あんた、派手にやったわね。驚いたわ」

「どこ行ってたの?」

「心配したよ」

「レイカ、ヤエ、ミサミサ。ありがとう。保健室行って寝てたー」

 私がヘラっと笑うと、皆苦笑した。

「ラッキーだったね、保健の先生(あのおばさん)ケチだからなかなか寝かせてくれないよ」

「あはは。泣いてるのバレたのかも」

「あんた、最近ほんとダサいわね」

 そう言ってレイカは笑った。私も笑うしかない。あはは。言われちゃった。

「でも、嫌いじゃないわよ。最近のあんた」

「へ?」

 ニヤリとレイカは楽しそうに笑った。

「うんうん。ナナは神崎を愛してるんだねー」

 ミサミサは目を輝かせた。あ、愛してるなんて、そんな言葉考えたことないよ。照れる。

「私は彼氏にそこまで心酔出来ないから、少し羨ましい」

 ヤエは肩をすくめて笑った。

「ナナがこんだけ心配してるってこと、神崎に思い知らせないとね」

「思い知らせるって、なんか物騒だよ、ヤエ」

 私達は笑った。さっきまでの心配は吹き飛んだ。レイカとミサミサとヤエがこうして笑ってくれるなら、他のクラスメイト達から多少浮いても、もう大丈夫。

 ほっとした時、クラスの大人しいグループの女子達が私達の方にやってきた。

「なんかよう?」

 レイカが問いかけると、そのうちの一人がおずおずと口を開いた。ダイチのことを密かに見つめていた子だった。

「あの、朝の相田さんの話し聞いて……黙ってるのも、嫌がらせに加担してることになるってやつ……」

「まさか、あんた何か知ってんの!?」

 レイカが詰問口調で詰め寄ると、その子はビクっとして固まった。一緒についてきた友達に励まされて、その子はなんとかまた口を開いた。

「あの、違うかもしれないんだけど……。私、昨日の朝、委員長が神崎くんの机の前に立っているの見たの」

 委員長って、あの委員長!? まさか、そんなことって。嫌がらせの処理を手伝ってくれた委員長が、なんでダイチの机の前になんて立っていたんだろう。

「見間違いだと思って考えないようにしてたんだけど、机に、花瓶を置いてるように見えたんだけど……でも、まさか委員長がそんなことするわけないし、すみません! やっぱり、いまのなしで!」

 喋っているうちに自信をなくしたのか、今にも踵を返してしまいそうなその子に対して、レイカはニヤリと笑みを投げた。

「よく言ってくれたわ。ありがとう」

「わくわくしてきた」

 ヤエが舌なめずりすると、ミサミサもテンション高めに首をかしげた。

「レイカー、どうする!?」

「そうね。本人に直接聞くのが手っ取り早そうね」

「でも、委員長が本当に犯人だったとして、正直に認めてくれるかな」

 私が不安げに問うと、レイカはますます楽しげに笑った。

「私にいい考えがあるわ」

 その時、予鈴が鳴り、英語の先生が教室に入って来た。皆はじかれたように一斉に自分の席に戻っていった。

 レイカのいい考えって、なんだろう。

 かなり怖いけど……、犯人がわかるなら、私何だってする!

゜+o。。o+゜♡゜+o。。o+゜♡゜

「委員長、ちょっといい?」

 放課後、文化祭の準備が始まってざわめく教室の中、私とレイカ、ヤエ、ミサミサのいつメン4人は、委員長を呼び止めた。

 振り返った委員長はきょとんとした顔で首を傾げた。

「どうしたの、皆揃って……?」

「ちょっと、ついてきて」

 腕を組んで睨みつけるレイカに凄まれたら、誰も逆らうことは出来ない。私達は委員長を連れて、屋上に移動した。

 曇り空でどんよりとした空の下、私達と委員長は対峙した。

「一体何のようだよ? こんなところまで連れてきて」

 少しビクビクした様子の委員長に、レイカは腕を組んで少し顎を上げ首を傾げ、上から目線で見下しながら、女王様然として口を開いた。

「それは、あんたが一番よくわかってるんじゃない?」

「な、何のこと?」

 委員長は、あくまでシラを切り通すつもりらしい。

「あんた、神崎に嫌がらせしてるでしょう。朝、あんたが神崎の机に花瓶を置いてるのを見たって人がいるのよ。大人しく白状したら罰を軽減してあげてもいいわ。早く白状したほうが身の為よ」

 くすり、とレイカは笑った。とても楽しそうだ。対する委員長は、あからさまに挙動不審だったけど、なんとか冷静さを保とうとしている様子が窺えた。

「嫌だなー。罰なんて、大げさな……。僕が神崎くんに嫌がらせなんてするはずないじゃない。確かに僕は教室の鍵を開けるために、いつも早めに教室に行くようにしてるけど、それだけだよ。クラスの皆のために早起きしてるっていうのに、見間違えるなんて酷いなあ。あはは」

 空笑いで誤魔化そうとした瞬間、レイカが首を振って合図をした。

 瞬間、ヤエが素早く委員長の背後に回って羽交い締めにした。委員長が混乱して動けないでいる間に、ミサミサが早業で委員長のベルトを外してズボンを下ろしてしまう。

 私は、スマフォを構えて、シャッターを押した。

 パシャ、という電子音。

 青ざめる委員長が制止する隙も与えず、女子に羽交い締めにされてパンツ姿の委員長の写真が撮れた。もちろん、ヤエとミサミサの顔は写っていない。

 スマフォに収まっている写真を見せると、爆笑するヤエとミサミサとレイカ。うう、皆いい性格してる。怖い。そういう私も共犯だけど。

 委員長は泣きそうな顔でズボンのベルトを留め直しながら、抗議の声を上げた。

「何するんだよ!」

「この恥ずかしい写真を現像して、全校生徒が目にする校門に貼り付けられたくなかったら、しょーーじきに白状しなさい!」

 レイカに言われて、委員長は半泣きになりながら、パンツ写真が収まったスマフォを奪おうとレイカに突進した。さらりと避けるレイカ。ヤエとミサミサが二人がかりで委員長を取り押さえた。そして、委員長が全力でジタバタもがいている間に、レイカは素早くスマフォを操作して、ニヤリと笑った。

「暴れないで! 大人しく白状しないなら、いますぐにボタンひとつで、これをLINEでクラスメイト全員に送りつけるわよ!」

 スマフォを構えるレイカの姿に、委員長はついに諦めて、膝をついた。そして泣き出した。

「お願いだから、やめて下さい! そんなことされたら、僕もう学校行けない……! 認める! 僕がやりました! 神崎くんへの嫌がらせ、僕がやりました!」

「委員長……本当に? 脅されて、無理やり認めてるんじゃなくて?」

 私が問いかけると、委員長はうなだれたように頷いた。

「僕、丸高くん達に頼まれて……」

「頼まれたからって、毎日、毎日、嫌がらせしてたっていうの?」

 今にもレイカがボタンを押してしまいそうな素振りでスマフォを掲げると、委員長は慌てて声を荒らげた。

「いや! 確かに僕も神崎くんのことは面白く思ってなかったから! 僕も、相田さんのこと憧れてたから、丸高くんの気持ち分かったし! でも、僕だって、丸高くんにいじめられてたんだ! でも、神崎くんに嫌がらせしたら、僕はいじめられずに済んだから、だから……!」

 コンクリートの床に膝をついて、涙ながらに訴える委員長が、少し哀れに思い始めて来た。別に、委員長がどさくさに紛れて私に告白したからじゃない。

 委員長の話しを信じるなら、実行犯は委員長だけど、結局、命令してたのは丸高くんで、真の犯人、首謀者は丸高くんだったってことだから。

「お願いだ! 早くその写真消して!」

「レイカー、こう言ってるけど、どうする? 丸高に命令されたって言ってもこいつが犯人なことに変わりないよ。ボコっとく?」

 面倒くさそうにヤエが言うと、レイカはため息をついた。

「ナナ、どうしたい? あんたが決めなさいよ」

 その場の全員の視線が私に集まった。

「――私は、もうダイチへの嫌がらせしないって約束してくれたら、それで良いよ」

 私が言うと、レイカは肩をすくめた。

「まあ、あんたならそう言うだろうと思ったわよ。よかったわね、ソーダイくん。パンツ写真をばらまくのは、あんたが次に嫌がらせをした時までお預けみたいよ」

 ソーダイって言うあだ名は、委員長が早稲田って名前の癖に、早稲田大学に合格するほど賢くないというイヤミ、からかいを含んだあだ名で、レイカは明らかにそれを意識して、侮蔑を込めてそう呼んだ。

 脅しの効果は抜群だと思う。

 元々、丸高くん達に脅されて嫌がらせをしたくらいだし、委員長は脅しには屈するタイプの人間だろうから。

 これでもう、明日からダイチへの嫌がらせは起きないはず。

 まだ泣き止まない委員長を屋上に残して、私達は校舎へと入った。

「ナナ、行って来なよ」

 階段を下りながら、レイカが言った。

「うん、準備のことは気にしないで! 私が皆にうまく言っとくから」

 ミサミサが請け合ってくれた。私は頷いた。

「うん……ダイチん家に行ってくる! 行って、嫌がらせはもう起きないって教えてくる!」
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