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本音を言えない私にダサ眼鏡の彼氏ができました。 作者:みりん

第三章 薔薇のネックレス

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4 「俺にしとけよ」

 放課後、文化祭一週間前でおまけに帰宅部の私は、準備を手伝わないといけない。図書館でのダイチとの勉強会はここ数日中止になっていた。ダイチも、昨日までは準備を手伝っていたんだけど、今日は用事があるからと帰ってしまった。

 用事って何よ。私と一緒に作業するのが気まずいから帰ったんじゃないでしょうね。私、別れたなんて認めてないからね。

 イライラしていたせいか、その日私の作ったジャック・オー・ランタンの顔が怖くなってしまった。

 私は、帰ってからLINEをした。

「私、別れたなんて認めてないからね!」

「絶対、別れないからね!」

「嫌だからね!」

「ちょっと、無視しないで!」

 ダイチからの返信はなかった。既読さえつかなかった。
じりじりする私の気持ちとは裏腹に、金曜の夕方に送ったLINEに、日曜の夜になっても返事はなかった。何度か電話もした。応答がなかった。

 無視!? 信じられない! 勝手に決めて、一方的に宣言して、一切取り合ってくれないなんて! 酷くない!?

 ……付き合い始めた頃、返事さえくれなかった頃に戻ったみたい。あの時は、バイトが忙しくて、夜遅くに返信するのは悪いだろうっていう変な気遣いのせいだったんだけど……あと、なんて返信して良いか分からなかったって言ってた。

 けど、寂しくなるからLINEはいつでも気にしないで返して欲しいってお願いしてからは、夜遅くなっても返事くれたのに。それに、こんなに大事な内容に返事くれないとか、今までなかった。

 どうしちゃったのよ、ダイチ。

 私は悲しかった。

 でも、一番辛いのは、嫌がらせを受けているダイチの方かもしれない。

 表情に出さないだけで、本当は傷ついているのかもしれない。それなのに私ったら、ダイチを責めるようなメッセージを送っちゃった。

 明日、祝日だけど、文化祭の準備のために皆登校するから、その時に、まず謝って、それから話し合おう。きっと、わかってくれるよね。

 私は無理やり目を瞑って、眠りについた。

 だけど、私のその考えは甘かった。ダイチは、月曜日、学校に来なかった。

 運動部で来れない人以外は全員強制参加で準備をするって決まりだったのに、ダイチはそれを欠席してしまった。

 不満そうながらも渋々準備に参加しているミサミサと一緒に、私はぐるぐる悪い方へ考えてしまいそうになる思考をなんとか切り替えて、準備を手伝った。

 真面目で律儀なダイチが、休むなんて……。どうしちゃったのよ。

 すごく、心配だった。

゜+o。。o+゜♡゜+o。。o+゜♡゜

 その翌日、私はかなり早く学校に行ったんだけど、教室に着いたら、ダイチの机の上には既に花瓶が置いてあった。

 私は皆が来る前に、それを慌てて教室の棚の上に戻した。

 ふ。嫌がらせのネタも尽きて来たんじゃない? ワンパターン化してるじゃん。

 私はどうでも良いことを鼻で笑ってから、急激に虚しくなった。

 ダイチは、学校をまた休んだ。

 今日は平日で、普通に授業がある日なのに。それに、ダイチを最後に見た金曜日は、風邪をひいている様子はなかった。でも、先生には病欠の旨を連絡はきちんとしてるみたい。

 まさか、いじめを苦にして不登校になっちゃったんじゃ?

 最悪の想像が頭をよぎる。

 私は慌ててLINEを送った。

「風邪? 大丈夫?」

「ひどいの? 明日は学校来れそう?」

「お見舞い行ってもいい?」

 でも、相変わらず、LINEの既読さえつかなかった。電話をしても、応答はない。

 どうしよう。このままじゃ、ダイチ、学校来なくなっちゃう。

 どうしよう!

゜+o。。o+゜♡゜+o。。o+゜♡゜

 LINEの返事も電話の応答もないまま、一夜が明けてしまった。

 私は心配過ぎて寝れなくて、少し寝坊してしまった。いつもより数分遅れて教室に到着する。教室には、ほとんどの人が既に登校してきていた。けれど、ダイチの姿はない。

 私は、自分の席に荷物を置くと、真っ先にダイチの机に向かった。

 すぐに、鼻を突き刺すような臭いが漂ってくる。雑巾が置かれていた。腐った牛乳の臭いのする雑巾。

 私はくらっと目眩がした。

 誰がこんな酷いことを。

 私はまだ湿っている雑巾をつまみ上げて、教室の隅に置かれているゴミ箱の中に捨てて、ベランダに干してある机ふきの綺麗な雑巾を濡らしてダイチの机を水ぶきした。

 水ぶきしても、さっきの刺すような臭いがまだ鼻に残っていて、苦しくて、私は泣きそうだった。

 酷い、酷い、酷い。なんでこんな。悔しい!

 執拗に机を磨いていると、丸高くんが近づいて来て、声をかけてきた。

「相田さん。神崎なんかにかまうのやめて、俺にしとけよ」

「!?」

 私が思わず丸高くんの方を振り向くと、クラスメイトの机に座ってふんぞり返っている丸高くんと、その取り巻きの姿が目に入った。丸高くんと一緒にいつもつるんでいる男子達は、本人と同じで皆茶髪で、一様にニヤニヤとした顔をしていた。

「そんな雑巾臭い奴と一緒にいたら、相田さんにも臭いの感染るぜ?」

 丸高くんがそう言うと、こらえきれない、という風に取り巻き達が爆笑した。

 私の中で、何かが切れた音がした。

「ダイチはいい匂いだよ! そんな酷いこと言う丸高くんなんて大嫌い! まさかダイチに嫌がらせしてるの、丸高くんじゃないでしょうね!?」

 きっと、まっすぐ睨んでそう叫んでいた。

 まさか、私に反撃されるとは思っていなかったらしい丸高くんは、驚いてまごついた。

「俺じゃねえよ。俺は朝練があるからそんなことやる暇はねえ。証拠もないのに責めんなよな」

 丸高くんの取り巻き達は、そうだそうだ、と丸高くんがバスケ部の朝練に励んでいることを証言した。

 私はイライラしていた。

 ここ数週間溜まっていた鬱憤が、一気にあふれてヒステリーになっていた。口を開いたら教室中に聞こえる大声で叫んでいた。

「じゃあ誰よ! 皆も! 関係ないフリして見てるだけっていうのも、十分イジメに加担してることと一緒なんだからね! クラスメイトが学校来なくなってもまだ続けるなんて、最低だよ! 最低だよ!」

 涙で前が見えなくて、皆がどんな反応をしてるのか全然見えなかったけど、教室は一瞬不自然に静まり返っていた。

 このままダイチが学校来なくなっちゃったら、どうしよう。

 皆の前で泣いてしまうのが悔しくて、私は顔を隠して教室を走り出た。
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