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本音を言えない私にダサ眼鏡の彼氏ができました。 作者:みりん

第二章 夏休みとキスと三角形

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9 ビーチバレーのハプニング

 とにかく海に来たんだから泳ごう!

 ということになった。

「俺、荷物見ときますよ。ケイゴさん、せっかくここまで運転してくれたんですし、楽しんで下さい」

 神崎くんの突然の申し出に、ケイゴさんは顔を輝かせた。

「マジで!? 君、若いのに気が利くねー! ありがとう! じゃあ遠慮なく! レイカ、行くぞ!」

 巨大な浮き輪を抱えて、ケイゴさんはレイカのサングラスを外すと荷物の上に置き、腕を掴んで海へと走り出した。

「ちょっと、ケイゴ!?」

「うちらも行こうー!」

 きゃっきゃとはしゃいで、ミサミサとヤエも二人の後に続く。

「ヒロカは、ここでダイチくんと荷物番してあげるよ! 一人じゃ寂しいだろ!?」

 ヒロカちゃんが抜けがけしたので、私も焦って名乗り出た。

「いいよいいよ! 私が付き合うから。荷物番は大人に任せて、ヒロカちゃんは泳いでおいで!」

 秘技、大人スマイルをヒロカちゃんにお見舞いする。けど、神崎くんが(かぶり)を振った。

「いや、いいよ。荷物番くらい一人でできる。相田さんも、泳ぎたいんでしょ。俺に遠慮せず楽しんできて」

 確かにさっき、泳ぎたいとは言ったよ。覚えててくれて嬉しい。けど、それは神崎くんと一緒にいっぱい泳ぎたかったんであって、下心ありきであって、純粋に海を楽しみたいっていう訳じゃないんだよ! ……とは、さすがに言えない。そんな爽やかな笑顔を向けられたらなおさら。

「わりいな、ダイチ! ほら、ヒロカ、行くぞ!」

 田辺くんに手を引っ張られたヒロカちゃんが、とっさに私の手首を掴む。

「わっ!」

 引っ張られて、私はあっという間に波打ち際までたどり着いてしまった。パラソルの下に神崎くんを残して。こうなったら、もうヤケだ。ざぶざぶと海に入って行くことにした。

 すると、横を歩いていたヒロカちゃんが、やけに早足で私の先を行くように海へと入っていく。何かイラっとしたので、私は泳いでヒロカちゃんを抜かした。ヒロカちゃんも泳ぎ始める。気づいたら、私とヒロカちゃんは全力のクロール対決をしていた……。

 なんで、こうなっちゃったの?

゜+o。。o+゜♡゜+o。。o+゜♡゜

 沖まで全力クロールをして、ブイにタッチして浜辺へ戻って来たら、私は体力を使い果たしてしまった。

 勝負は私の負け。

 一学期終わるまで陸上部で鍛えていたヒロカちゃんはケロっとしている。水泳は結構得意だと思ってたからショック。高校入ってから帰宅部だから、最近、体育の授業とカラオケのためのダンスの練習以外でちゃんとした運動してなかったからな。体力の差が歴然と現れてしまった。

 というか、昨日の夜ご飯抜いたのと、朝ちゃんと食べて来なかったのも敗因かも。

 私は田辺くんに支えてもらいながら、フラフラでパラソルまで戻り、持ってきていたペットボトルのスポーツドリンクを飲んでシートの上に寝転んだ。

 神崎くんが心配そうに覗き込んでくれる。

「大丈夫?」

 私は苦笑した。

「ごめん、お騒がせしちゃって。ちょっと休憩したら大丈夫と思う」

 そう答えてはみたものの、がちでクラクラする。軽い熱中症かな。何やってるんだろう、私。どうせ水着も見てもらえないんだったら、朝ごはんしっかり食べてくるんだった。

 私がしょんぼりしていると、ヒロカちゃんが呆れたように追い打ちをかけた。

「だらしないな~。大人ぶるなら面倒かけないでよね」

 ぐ。何も言い返せない!

「ヒロカ」

 たしなめるように神崎くんが名前を呼べば、ヒロカちゃんは歯を見せてカラっと笑った。

「ねえ、この人放っておけないし、ここでビーチバレーしようよ! ヒロカ、ビーチボール持って来たんだ」

 そう言うとヒロカちゃんはバッグの中から潰れたビニールを引っ張り出し、それに空気を入れ始めた。ビニールはみるみる膨らんで、まん丸大きなスイカになった。

「お、懐かしいな」

 田辺くんが言えば、ヒロカちゃんは微笑んだ。

「ほら、昔も遊んだよね」

「そうだな」

 神崎くんも頷く。

「何なに? あー! ビーチボールだー!」

 ミサミサの声に振り返れば、ヤエとミサミサの二人もちょうど海から上がって戻ってきたところだった。

「うし。じゃ、皆でビーチバレーやろうぜ!」

 田辺くんが上機嫌で言えば、ヒロカちゃんは目を輝かせた。

「うん!」

「俺はいいよ」

 辞退する神崎くんを、田辺くんが引っ張り起こす。

「うるせえ! (しな)びるのはまだ早いぜ! 行くぞ!」

 仕方なく、という感じで神崎くんもビーチバレーに参加することになった。

 パラソルの近くのちょっとしたスペースに円になり、田辺くん、ヒロカちゃん、神崎くん、ヤエ、ミサミサの5人はビーチボールをトスして遊び始めた。

 ボールを砂浜に落とさないように、5人の間を順番に飛ばしていく。ポーンと高く舞い上がったビーチボールを追いかけては、また次の人へボールを上げる。ボールが5人の間を行ったり来たりするのをぼーっと眺めながら、私は何やってるんだろう、と自己嫌悪していた。

 ふと気になって、遠くの海を探すと、沖の方で小さく浮き輪に乗ったレイカが腕を振り回してるのが見えた。ケイゴさんは、と見れば、少し離れたところでレイカを見ている。あれは……レイカ、怒ってるっぽい。レイカは泳ぐのが苦手なのだ。運動神経抜群で、球技なんかでは大活躍するレイカだけど、泳ぐのだけは苦手らしい。足のつかないような海に漂わされたら、まず間違いなく切れるだろう。ケイゴさん、レイカを怒らせて楽しんでいる? そのために浮き輪を用意したんだとしたら、なんて怖いもの知らずなんだろう。

 そして、めちゃくちゃ楽しそうなんですけど~!

 私も、神崎くんとあーいうことしたかったー!

「きゃ!」

「わ!」

 小さな叫び声が聞こえて、私は慌てて目をビーチバレーのメンバーに戻すと、砂浜の上で仰向けに倒れる神崎くんの上にヒロカちゃんが押し倒すように倒れていた。

 しかも、む、胸が!

 ヒロカちゃんのおっきい水着の胸が神崎くんの裸の上半身に押し当てられてる――!?

「――っ痛てて」

「ご、ごごごめん! ダイチくん、大丈夫か!?」

 ヒロカちゃんが、我に返って飛び退くと、神崎くんは背中や腕についた砂を払いながら起き上がった。

「まあ、怪我はない」

「ごめん、ボール追ってたら気づかなくて」

 赤面するヒロカちゃん、わかりきった事を言い訳している。起こったことを、ただ述べただけ。見てればわかる。だとしても、ぶつかって、こけて、そう上手いこと神崎くんを押し倒したりできる!? しかも、胸を押し付けたりできる!?

 まさか、わざと!?

 私はビーチパラソルの下からすごい眼力で二人を睨みつけてしまった。見る人が見れば、殺気のオーラが立ち上っているのが見えたことだろう。

 ちょっと胸が大きいからって調子にのってー! 信じられない! 絶対許せない!
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