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本音を言えない私にダサ眼鏡の彼氏ができました。 作者:みりん

第二章 夏休みとキスと三角形

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1 妹なんて聞いてない!

『いま電話大丈夫か?』

 神崎くんからそんなLINEが来たのは、私たちが奇跡的に仲直りした終業式の翌日、夏休み最初の日の夜のことだった。

 不本意ながら友達と神崎くんを傷つけるような会話をしていたのを本人に聞かれ、喧嘩みたいな状態で1ヶ月もの間、ずっと会話もできずに過ごした私たち。
もう完全に自然消滅コースだと思っていたけど、突如昨日、神崎くんに呼び出された学校の中庭で、私は二度目の告白をした。

 一度目の告白は、4月の終わり。レイカの大事なものをダメにしちゃった罰ゲームで、名前しか知らないクラスメイトの神崎くんに嘘の告白をした。

 だけど、神崎くんと付き合って、彼のことを知っていくうちに、どんどん惹かれていって、いつのまにか私は本気で恋に落ちていた。神崎くんがダサ眼鏡をかけていて、クラスでも一人浮いているからって、友達の評価は最悪だけど、そんなこと関係ない。今まで付き合ってきた彼氏たちと全然違う神崎くんのペースに巻き込まれて、喧嘩をしたって、友達に罰ゲームを終わっていいと言われたって、忘れられなくなってしまっていた。

 お別れを言い渡されるのを覚悟して行った中庭で、そんな気持ちを告げたら、神崎くんは許してくれて、それどころか、誕生日プレゼントまで用意してくれていたんだ。

 乳白色のシェルでできた薔薇のネックレス。

 今も私の鎖骨の間で揺れている。

 1ヶ月もお話出来なかったから寂しかったって言ったから、今日の朝には『おはよう』ってLINEも来たんだよ。喧嘩の前でも連絡事項以外LINEが来ることなんてなかったのに。気を遣ってくれてるのがわかる。これで幸せじゃないなんて言ったら嘘だよ。

 私は、デコパージュの専用液でハートの形に切り抜いた折り紙を貼りつけたばかりのキャンドルを勉強机の上に置いて、すぐに返事を書いた。

『もちろん♡ 嬉しい(*^^*)♡♡』

 返信を送った瞬間、既読がついた。すぐにスマホが震える。神崎くんから電話だ。もちろん迷わず緑のボタンをタップした。

「もしもしっ」

「あ、相田さん? 出るの早いね」

「えへへ! だって、早くお話したかったんだもんっ」

「……そうか」

 あ、今きっと照れてる。私は嬉しくなってくすくすと笑った。左耳に両手を添えて、ダイレクトに響く神崎くんの声を噛み締めた。ああ、ドキドキする。落ち着いていて、ちょっとハスキーな神崎くんの声。すきだなあ。

「へへ。声聞けて嬉しい。でも、珍しいね。神崎くんから電話なんて。もしかして、初めてじゃない?」

「確かに、そうだな。相田さんの夏休みのスケジュールを聞きたいんだが、LINEだと手間だと思ったんだ」

「それ! ナナも気になってた! 昨日はバイト前でバタバタしてたからお互い聞きそびれちゃったもんね。待って、スケジュール帳開く」

 私は通学カバンからスケジュール帳を出すと、7月のページを開いた。

「えっと、明日は暇だけど、月曜日からは補習があるから午前中は全部つぶれてるう。神崎くんは、やっぱり夏休みもバイト入れてるよね?」

 恐る恐る尋ねると、スピーカーから肯定する声が返ってきた。

「ああ。来週は全部13時からバイトだ。土日も11時から18時まで入ってる」

「すごい! 大変そう……。でも、じゃあ来週は会えないね。再来週はどう?」

 私はスケジュール帳の8月のページをめくりながら尋ねた。

「それなんだが、8月の3、4、7、8日は何か予定あるか? 都合が合えば俺の部屋で勉強会をしたいんだが」

 スケジュール帳のカレンダーを確認する。真っ白。まだ予定はない。

 それにしても、勉強会だって! さすが神崎くん。言うことが真面目っ! けど、さすがに神崎くんのお部屋にお邪魔するのはどうだろう? 二人っきりはさすがに危険? いつかと違って神崎くん風邪引いてないし。今までの経験上、元彼に自分の部屋に誘われた場合、十中八九どころか、100%の確率で襲われてるからなあ。いくらシャイで奥手な神崎くんでも、部屋に二人きりになったら豹変するかもしれないし……。

 いや、やっぱりそれはないか。神崎くんだし。でもでも、もしも豹変したらしたで、見てみたいかも! ワイルドな神崎くん! 興味ある! 嫌だと思ったら今までと同じで暴れて逃げれば良いし、うん、やっぱりお部屋行きたいかも!

 ここまでの思考が約1秒。そこでふと気づく。

 でもここで「行く」って即答したら、軽い女だと思われない?

 それは困る。これでも私は処女なのに、ビッチと間違われるのは絶対嫌だ。大事にしてもらえなくなっちゃうって聞くし、都合のいい女みたいに扱われるのは有り得ない。

「ええ~? どうしよっかなあ」

 私は、とりあえず迷ってるフリをする。本当は神崎くんに会えるなら場所なんてどこでも良いんだけど、即答してやる気満々の軽い女に見られないように。

「そうか。無理なら良いんだ」

「へっ!?」

 あっさりと引いてしまう神崎くん。待って待って! なんで!? そこはもうひと押ししてくれないと! 神崎くんがどうしてもってお願いしてくれたから行くってことに出来ないじゃん!

「補習もあるのに、勉強会なんてつまらないよな」

「そ、そんなことはないけど……」

 実はちょっとはあるけど……やっぱちゃんとしたデートしたいっていうのは確かにある。4月の終わりから付き合って来て、途中話せない期間があったとは言え、一度もふつうのデートをしたことがないっていうのは、ちょっと寂しい。

 一緒にプリクラ撮りたいし、買い物したり、カフェ巡りしたり、映画見たり、遊園地や水族館にだって行ってみたい。

 私の気持ちがバレてしまったのか、神崎くんは困ったように弁解を始めた。

「実は、ヒロカに受験勉強を見てくれと頼まれたんだ。せっかくだから相田さんも一緒にどうかと思ったんだが――」

「ヒロカって誰!?」

 私は思わず詰問口調になってしまう。だって、どう考えてもヒロカなんて女の名前だ。神崎くんの口からまさか女の子の名前が出るなんて想像もしてなかった。

「あ、悪い。ジローの妹だよ」

「田辺くんの妹?」

 田辺くんとは、神崎くんの親友で、確か小学3年生の頃からの付き合いだって聞いた。

 ていうか、田辺くん妹なんかいたんだ。ジローっていうくらいだから、お兄さんはいるだろうなと思っていたけどさ。

 疑わしげに尋ねると、神崎くんは落ち着き払ったいつもの声音で説明してくれた。

「ああ。俺、小学生の頃は母さんが入院してたりして、放課後はいつもジローの家に遅くまで入り浸っていたんだ。実家が近所だから。おばさんが母さんと仲良かったのもあって、母さんが死んだ後も晩飯一緒に食わせてくれたり親切にしてくれて、だからヒロカとも幼馴染なんだ」

 なにそれー。それじゃあ、田辺くんだけじゃなくて、そのヒロカって子ともすごい絆ありそうじゃん。そんな仲良さそうな女の子が神崎くんの周りにいるなんて聞いてないよ! 

「俺の受験が終わって引っ越してからは一度も会ってなかったけど、この前久しぶりにジローの家に行ったら、珍しく頼みごとされて。あいつ、今年受験生だからな。しかも、うちの高校狙っているらしい。おばさんにもお願いされて、今まで色々世話になって来たし、こんなことでもなければ返せないから、気の済むまで付き合ってやりたいんだ」

 えええ。しかも、田辺くんのおばさんまでそのヒロカって子とグルで敵なの!?

 私はヒロカを女の勘で敵認定していた。会ったこともない子だけど、関係ない。勉強を教えてもらうために神崎くんの家に行くなんて、神崎くんに気があるから以外にないもん。絶対!

 しかも、恩があるから確かに断りづらいお願いだ。それを分かっててのお願いっていうところに策略を感じる。

「もちろん、バイトも入れておきたいから毎日という訳にはいかないが。でも、そうすると相田さんと会う時間もなくなってしまうから、せっかくだから、一緒にどうかと思ったんだ。でも、夏休みまで勉強ばかりは嫌なら良いんだ。他に――」

「行く! 行きたい! 参加させて! その勉強会!」

「良いのか? 来てくれたら俺は嬉しいが――」

「良いの! 勉強会! 神崎くんに会えるなら、ナナなんでも嬉しい♡」

 必殺ぶりっ子スマイルをして、電話越しにハートを飛ばしてみる。

「――そうか」

 ふ。照れてる。照れてる。

 正直に告白するくらいだから、神崎くんに悪気はなさそうなのよね。神崎くんにとって家族みたいな存在なんだってことは伝わって来た。

 これを断れだのなんだのグチグチ言ったらきっと神崎くんに嫌われて“ヒロカ”の思うツボだ。だいたい、嘘の告白をしたのを許してもらったばかりで、これ以上嫌われるようなことはしたくないし。

 それに、要はその勉強会でヒロカに勝てば良いのよ。

 なんたって、ナナはお化粧なしでも可愛いし、胸もDカップあるし、足もマッサージを欠かさないから
「折れそうだね」って言われたことがあるくらい細いし、学校でもモテるし、彼女にしておいて損はないはずだもん。

 彼女の印のネックレスだってもらったし、堂々としてれば良いだけ。ヒロカがどんな子だろうと、絶対負けないんだから!
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