露草の下
露草が一面に咲いていたね。
君はスカートが汚れるんぢゃないか気にしながらもそっ、と青藍より尚明るい青の上に座った。
サーキュラースカートがふわりと広がり、露草色に丸いクリイム色を作った。
君はバスケットから昼食用に作ってきたバゲットのサンドイッチやなんかと銀のカトラリーを取り出した。
僕は君から指示されていた通り、檸檬水の入った水筒を取り出した。
バゲットにはサラミとチーズ、それからレタスが挟んであった。
僕たちは真昼の空の青と露草の青に挟まれて、お喋りしながらお昼を食べた。
紋白蝶が僕たちを揶揄するように舞っていた。
君が話す時、少し口角の上がる癖。
白目の部分が薄青い瞳。
長い栗色の髪の毛。
そして何より朗らかで明るい笑い声。
笑う時、花色の唇の間から覗く真珠のように皓い歯。
誰より好きだよ。
何よりも好きだよ。
キスした時、ちょっと頬を紅潮させて上目遣いになるところも。
そんな時の君は目が潤んで、星を湛えたようになるんだ。
いつだって君のことを想っている。
星空を見れば君が夜空一面にいるかのような錯覚に陥る。
愛しい君。
僕以外の誰にも笑いかけて欲しくないし、誰とも口をきいて欲しくない。
目を閉じれば君の笑顔と、サーキュラースカートの円を思い出す。
愛しい君。
君の領分に僕以外の誰かの入る余地があるなど嫌だった。
だから僕は
だから僕は
君を露草の群れの下に埋めなけりゃいけなかった。
君を露草の群れの下に埋めて僕も死ななけりゃいけなかったんだ。
美しい挿絵は樹里さんより頂きました。