第03話 目の前は
―阿笠邸
「よぉ博士!これからしばらく世話になるぜ」
コナンはそう言いながらテレビに目をやる。
「ああ、それで…蘭君はどうじゃった?」
「!」
“蘭”この言葉にコナンは反応してしまう。
「別に…元気そうだったよ」
思わず博士と目を逸らす。
「あなたを気遣ってでしょうね。彼女の明るさ…」
こう言ったのは博士の家に住んでいる灰原哀だった。
「灰原…」
「健気よね…あなたのせいで夢への一歩を潰されてしまったっていうのに」
「これ!哀君!!」
エスカレートしていく哀の言葉を博士が遮る。
しかしコナンの脳裏にはその言葉がしっかり刻み込まれてしまった。
(オレのせいで…蘭が…全国大会に出られなくなった…)
先日の会話が蘇る。
『なんたって空手で関東大会優勝だもんね!』
『蘭姉ちゃんならきっと全国レベルでも優勝だよ』
「…」
「新一、気にするんじゃないぞ?君に責任はないんじゃから…」
コナンは言葉が出なかった。
オレに責任がない…そんなわけがない。
キーを連絡所に預けていれば犯人と遭遇してしまうことはなかった。
そうだ…蘭の連絡所に預けるかという提案を否定したのは…。
オレだ…。
コナンの思考はどんどん悪い方向へと進む。
★
―米花総合病院
蘭はギプスの上から自分の膝をさする。
「焦っちゃ駄目よ…蘭…」
自分で自分に向けた言葉。
ベットの上で小さく呟いた。
―10分前
「毛利!大丈夫か?」
「数美先輩!」
蘭の空手部の先輩が見舞いに来た。
「これお見舞い!ごめんね〜レジ袋で」
数美はそういって袋いっぱいのりんごを差し出した。
「たった今、コナン君が帰っちゃったところなんですよ」
蘭は残念そうにりんごを見つめる。
「ああ、あの幽霊騒ぎの時の子ね!」
「ええ…」
数美は椅子に腰掛ける。
「それしにても残念だったな、毛利。せっかくの全国大会に出られないなんて」
「え?」
「だって靱帯切ったって聞いたけど…」
「…でも…リハビリすればちゃんと膝も曲がるようになるって、手術した先生が」
「…夏までに完治は…無理だと思う、私も」
「!?」
蘭はうつむいた。
血の滲むような努力で勝ち取った関東大会の一位。
ずっと憧れてた全国大会。
(そんな…)
「…毛利、これで足一本失くした訳じゃないから…諦めないで…ね?」
「…はい…」
事実を知った蘭は、数美が帰った後の静まり返った病室で声を出さずに泣いた。
夕方の空は綺麗な黄金色に染まっていた…。
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