第02話 命懸け
―…パンッ!
放たれた弾はコナンの衣服の肩部分をかすった。
「コナン君!?」
銃声で異変を感じた蘭は思わず叫ぶ。
「ち…もう一匹いやがったか」
男は呟くと、銃を構え直す。
パン!パンパンッ!!
「…っ!」
(え……蘭!?)
蘭は滑り込みでコナンを抱きかかえ、守ったのだった。
「んっ…!痛…」
「蘭…」
コツコツコツ…。
「おい、始末はいいから早く乗れ!!人が来る」
「あ…ああ」
(…車の中に仲間!?くそっ…マスターキーを持ってやがったな!!)
ブロロロロ…。
(行っちまう!ナンバーを覚えねぇと…)
コナンは車を追いかけようとしたがハッとした。
蘭だ。
さっきから左足を異様に痛がってるように思えた。
(まさか…オレを助ける時に骨でも折ったのか…!?)
車のエンジン音はもう聞こえなくなっていた。
「…蘭?」
「コッ…コナン君?…無事なの…ね…っ?」
「うん、ボクは大丈夫。それより…蘭姉ちゃん、足どうかしたの!?」
「わ…分からな…いけど…っ、踏み切った…左…足がっ…」
「あの〜…どうかしました?」
そこへ、先ほどの足音の主がやって来た。
「今すぐ救急車と警察を呼んで!!」
コナンはすかさず叫ぶ。
「え?…何があっ…」
「いいから急いでっ!!!」
そして蘭の体は米花総合病院に運ばれた。
病院には蘭の父親である、毛利小五郎も駆けつけた。
蘭は手術室に行き、小五郎は医者から簡単な説明を受けた。
「おじさん…蘭姉ちゃんは?」
「やはり手術だそうだ。なんでも左膝の靱帯を切ったらしくてな…」
「じ、靱帯だと!?」
コナンは血の気が引いた。
靱帯の怪我は完治に何ヶ月という時間がかかる。
おまけに完全断裂すると再起不能になる可能性もあるのだ。
つまり、蘭は再起不能は免れたとしても全国大会には確実に出られない。
「蘭…オレを助けた…せいで」
「まぁ、今回の執刀はスポーツ選手なんかの手術で有名な先生だそうじゃねーか」
「…」
「それからお前が拾った犯人の車のキーだが…お前の指紋以外、何も出てこなかったそうだ」
「!」
「今はお前の証言をもとに捜査中だ。まだ逃走中の強殺犯と決まったわけじゃないしな」
―2時間後
ガチャッ!
ガラガラ…
「!!」
「先生、娘は?」
「ご安心下さい、手術は滞いなく終わりました。お嬢さんは眠らせておきましたので」
(蘭…)
コナンは疲れきった青い顔の蘭を見つめた。
★
―翌日
「あら、コナン君!来てくれたの」
「う…うん」
一日経って、蘭はすっかり元気になった。
左足のギプスが痛々しいが、いつもの蘭だ。
「私とお父さんはしばらく家に帰れないから、阿笠博士の家に泊まってね」
「…うん」
コナンは蘭と目を合わせられなかった。
蘭のことだからきっと表に出してないだけで、全国大会のことを心から悔やんでいるはず。
そう思うと、コナンは込み上げてくる感情を押さえ込むだけで精一杯だった。
とても笑えそうにない。
「…どのくらいで直るの」
蚊の鳴くような声でコナンは聞いた。
「それがまだ分からないのよ。私の頑張り次第でもあるみたいだし」
「そう…」
「…コナン君?どうかした?」
蘭のその言葉にコナンは小さく笑って答えた。
心配をさせたくない。
今は自分のことだけ考えてほしい。
その思いから出た少しの笑顔と言葉だった。
「ううん。じゃあボク、博士んち帰るね」
コナンは小走りで病室を後にする。
そのまま男子トイレに行き、個室に入った。
しーんとしたその空間で、蘭の前で押し殺していた感情が溢れ出す。
コナンはその場にうずくまった。
泣きたくはなかった。
コナンを気遣って微笑む健気な蘭を思うと…泣きたくはない。
今、一番辛いのは蘭なんだ…。
必死にそう思うと少し気持ちが落ち着いて、コナンは博士の家へ向かった。
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