挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

コメディ短編集

五重の塔の番人のキャッチコピーで、四階の人だけ違和感がある

作者:佐々雪
 灼熱の太陽の下、熱いバトルが繰り広げられようとしている。


「ククク、よくぞここまで来たな、5人の光の勇者たちよ! 暑い中ご苦労さま!」

「魔王ジャアーク! やっとここまで追い詰めたぞ! 今日こそは貴様が王国から奪ったベルグオーブを返してもらうぞ!」

 リーダーのレッド。拳を握りしめながら、魔王をにらみつける。

「ククク、いいだろう。ただし! お前たちがこの五重の塔の番人たちをすべて倒し、最上階で待つ俺様を倒すことができたらの話だがな!」

「な、なにぃー! 五重の塔だってー!?」

 驚愕するイエロー。

「そうだ。この五重の塔には、各階に一人ずつ強力な番人をスタンバイさせている……!」

「くっ……! あのジャアークが認める実力の番人なんて……! こいつは手ごわそうね……!」

 紅一点のピンクは奥歯をかみしめる。

「ククク……逃げ出すなら今のうちだぞ」

「馬鹿にするな! 俺たちは光の勇者だぞ!」

 と、レッド。

「ククク……その心意気はたたえよう。しかし! ククク……番人たちのキャッチコピーを聞いても、同じことが言えるかな?」

「キャッチコピーだって!? 聞かせてもらおうじゃねえか、そのキャッチコピーとやらを!」

 と、イエロー。

「いいだろう。聞いて後悔するがいい! まずは一階の番人! 怪力殺戮の哲学者デス・フィロソファー、死刑囚ミロンガ!」

「しっ、死刑囚だってぇーー!? しかも殺戮モンスターとは……。こいつは恐ろしいキャッチコピー……! しかし!パワー勝負とあっては、このワシが負けるわけにはいかんのう!」

 猛るようにさけぶイエロー。

「二階の番人! 幻惑の爆速イマジナリー・スピードスター! 疾風のくのいち、カナメ!」

「くのいちってことは、女の子ね! ふふふ……私の相手は決まったようね! どれだけ疾く動いても、私のピンキーリングから逃れることができるかしら?」

 と、ピンクがうっすらと笑みを浮かべ、ウインクをする。

「三階の番人! 世界中のあらゆる武術をマスターした、生きる格闘伝説レジェンド・バトルマスター 格闘家ポポ!」

「フッ……格闘技といえば私の出番のようですね。私の天空空手がどこまで通用するか、試してみたいものです」

「そして四階の番人! 英検準二級えいけん・じゅんにきゅうサイトウ!」

「……え?」

 思わず俺(グリーン)は聞き返す。

 ……英検準二級えいけん・じゅんにきゅう

 なんか今までとキャッチコピーの方向性が明らかに違う。
 履歴書に書くかどうかもちょっと悩む資格だ。いや、俺は英語苦手だから、俺はとれないと思うけどさ。でも戦闘に関係ないし……。


 ……俺が何か聞き間違えたのか?

 暑さでもうろうとしてきて、聞き間違えたのか?

 俺が……悪いのか?


「そして最上階で待ち受けるのは、この俺様、最強にて最狂の魔王、ジャアーク様だ!」

「分かっていると思うが、貴様の相手は俺だ!」

 と、レッドが吠える。

「相手は五人、私達も五人…。一人が一人を倒していけば、ベルグオーブを取り返すことができるのね!」

 と、ピンク。

「フッ……。相手が誰であれ、私は負ける気がしませんね」

 と、ブルー。

「ブルー……貴様は敵のときは恐ろしいやつだったが……味方になると本当に頼もしいヤツだぜ……(ゴクリ)」

 と、レッド。



 ……いや。ちょっとまて。

 なぜだ。

 なぜ誰も口にしない……。

 四階の番人だけ、キャッチコピーの方向性が妙だったことに。


 いや、やっぱり暑さのせいじゃないよ!

 絶対アイツ、英検準二級って言ったよ!

 なぜ、誰も突っ込まない……!

 この中で違和感を感じているのは俺だけなのか?

 他のメンバーの表情をこっそりうかがってみる。

 しかし誰一人、違和感を感じているそぶりは見て取れない。


 ……だめだ。

 周りに頼っちゃだめだ……。

 ここは主体性を持って、自ら動くべきところ。

 流されやすいのは俺の悪い癖だ。


「あのー……すみません。もっかい聞きたんですけど」

 勇気を出して聞いてみる。
 こういう一歩一歩が、人生を変えていくものだと信じて。

「何だ、逃げたしたくなったか……ククク」

「四階の方、もっかいキャッチコピー説明してもらえます?」

「四階の番人! 英検準二級えいけん・じゅんにきゅうサイトウ!」

「ええ、ですよね。英検準二級。えっと……それって戦闘となんの関係が……」

「ちょっと待って! 見て! 塔の扉が開いていくわ!!」

 大切な俺の言葉をさえぎって、ピンクが指をさす。

「敵さんたちも、待ちくたびれているようじゃのう。一階の番人は怪力殺戮の哲学者デス・フィロソファーじゃったかの? どうれ、ワシが軽くひねってくれるわ!」

 と、イエロー。

「二階のくのいちは私にまかせて!」

 と、ピンク。

「三階の格闘マスターとやら。私がお手並み拝見させて頂きましょう」

 と、ブルー。


 ……って、この流れは俺が四階担当なのか?

 全員(魔王含む)の視線が、俺に集まる。


「あ、じゃあ四階の方は俺担当で……」


 ……流された。場の空気に。

 持てなかった……主体性……。

 今日もダメだった……。

 昨日までの繰り返しを……また今日も……。


「ジャアーク。貴様の相手は俺だ!」 

 と、レッド。


 ……ああ、もういいや。

 なんかもう逆に、四階の人に会うのが楽しみになってきた。

 Hello!とか気さくに挨拶とかして、なんでそんなキャッチコピーになったのか、ちょっと込み入った話をしてみたいわ。

 英検いつ取ったかとか聞いてみたいわ。


 俺は流れに身をまかせることにした。

 自身が流された方向こそ、そもそも進みたかった方向だった。状況をポジティブに捉えることにした。


「じゃあ、いつもの名乗りをあげて、乗り込もうぜ!」

 と、レッド。

「おう!!!」


「灼熱のファイア!レッド池袋!」

 ビシーッ!

「深淵のオーシャン!ブルー駒込!」

 ビシーッ!

「煌めくソウル!イエロー五反田!」

 ビシーッ!

「恋するバトルドール!ピンク原宿!」

 ビシーッ!

「……癒やしのマイナスイオン。グリーン巣鴨」

 ビシーッ!


 いつもの決めポーズをとる我々に、ジャアークがぽつりと呟く。

「……なんか、マイナスイオンだけ方向性違うくね?」


 お前が言うな。
最後までお読み頂きありがとうございました。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ