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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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明日も仕事。早く寝ないと。
 叫んだら幾分か気持ちが安らいだ。

 まったく、これほどストレスが溜まったのなんて今世じゃ初めてだぜ。

 やっぱ、ちょくちょく発散させねーと前世みてーに腐っちまうぜ。気を付けろよ、オレ。

「……あ、あの、ベーさま……?」

「あ、ああ。何度もワリーな。あんたの存在を受け止めんのにオレのなにかが抵抗しててよ、感情が制御できなかったんだよ。だが、なんとか受け止めたから大丈夫だ」

 そうだ。目の前に真実があるんだ、抵抗しても無駄なこと。さっさと受け入れて楽になれ、だ。

「このような醜い姿で現れたこと、深く謝罪致します」

「いや、イイよ、謝らなくても。別に姿がどうこうとか、種族がどうこう言ってる訳じゃねーからよ。ただ、しゃべるスライムとか初めて見たからな、びっくりしちまっただけさ」

 初見で素直に受け入れたヤツをオレは正気と認めねーぞ。

「そうでしたか。確かにわたしは下等なスライム。しゃべりもすれば驚いて当然でした」

 いや、あんたを下等にしたら人間なんてミジンコ以下だよ。

「では───」

 と言うと、ゲル状の体が蠢き、人型へとチェンジした。

「人型になれんのかよっ!」

 つうか人化だよ、もはや。燕尾服に蝶ネクタイって執事じゃねーか。あ、いや、執事だったっけ。ぐおーっ! なんか納得できねー!

「はい。ですが、どうもこの形は不便でして。お見苦しいところがあればご容赦を」

 ま、まあ、人間だってスライムにチェンジしたら動き辛いだろうし、せっかく人化してくれたんだから多少のことには目を瞑るよ。

「しかし、スライムってなんでもありだな。そんな進化ができるって知らんかったよ」

 そんなこと、魔物図鑑にも載ってなかったぞ。

「いえ、わたしの場合は、マスターの力によるものです」

 あ、そー言やぁ、マスターとか出てきたっけな。イン子のことですっかり忘れてたよ。

「まあ、そのことはイイや。話を進めようぜ」

 気分が安らいだとは言え、まだショックが抜けきれてねー。今はマスターなるものまで面倒みきれねーよ。

「単刀直入に申します。バリアルとチャーニーを解放してください」

「……………」

 オレはなにも答えず、黙ってスライム───バンベルを見る。

「もちろん、非はこちらにあります。無茶を言ってるのも理解しております。お詫びはいかようにも致します。どうか解放をお願い致します」

「………………」

 頭を下げるバンベル。だが、オレはなにも言わない。だって、本当に無茶言ってんだもん、こいつ。

 だがまあ、このまま黙りしててもただ時間を消費するだけ。なんの解決にもならねーしな。

「なあ、バンベルさんよ。それが問題解決に繋がってると、本当に思ってんのか?」

 だったら本当にあんたは下等なイキモンになるぞ。

「いいえ。まったく思っていません。ただ、いきなり物で謝罪するより誠意を見せたくて頭を下げました。ご不快に感じたら更に謝罪致します」

「わかってんならイイよ。誠意は受け取った」

 ほんと、スライムを超越してんな、こいつは。どう進化すればこうなんだ?

「感謝を」

 まったくもって誠心誠意を感じさせる見事な謝罪である。

「まあ、誠意は受け取ったが、あいつらはオレを殺そうとしたし、うちの弟にも同じことをした。それを許さねーとは言わねぇ。こんな世界だ、生きるため、食うため、己のため、生き物を殺すことが当たり前だ。それをやってるオレにあんたを責める資格はねーからな。だが、それが当たり前だからこそ、あいつらの命はオレのだ。オレが手に入れたものだ。それを返せとは筋が違うだろうがよ」

 それが弱肉強食。これが現世。明日は我が身だからこそ、命の価値は高いのだ。前世で読んだ本に、『命を軽く見る者の命は軽い』とあった。この世界に生まれて確かにと実感する。

 だからオレは命を大切にする。どんなゲス野郎でも無駄に命は奪ったりはしねー。必ず有効利用ができねーかを考える。オトンを殺したオークの群れでさえ、ちゃんと有効利用した。その命に感謝をした。

 ここでバンベルに二人(?)を返すのは簡単だし、別にただで返したところで懐は痛まねぇ。なんの不利にもならねーからな。

「返して欲しけりゃ対価を出しな。それであんたの本心が見えるってもんだ」

 まあ、本心と言うよりは思惑だがな。

「……正直、あなたを見るまでは金貨や魔道具を用意すればと、軽く見ていました。ですが、あなたと対峙して、あなたと話をして、わからなくなりました。あなたは金や物では動きそうもない。ましてや脅しに屈する方ではない」

 スライムなのに良く人を見てんな、こいつは。

「だから、借りを作らせてください。あなたが我々を必要と思われるとき、その借りを払わして頂きたい」

 そーきたか。ほんと、スライムかよ、こいつはよ。

「わかった。それでイイよ」

 その言葉にバンベルがちょっと驚いた顔になる。器用だな、お前さんは。

「不思議かい?」

「はい。正直言って」

「だろうな。だがまあ、簡単に言えばあんたが気に入ったってことだ」

 まあ、いろいろ突っ込みてー存在ではあるが、おもしろい存在でもある。オレの今世の経験上、そんなヤツと友達になっておくと吉になる。

「わたしがスライムでも、ですか?」

「ああ。スライムでも、だ」

 友達に姿形、身分なんて関係ねー。気に入ったか気に入らねーかだ。








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