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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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85 維新志士

サブタイは適当です。なんとなくです。
維新志士、よー知らんがな。
「やはり、地上のお茶は旨いですな」

 ハーブティーを一口飲んだナルバールのおっさんが満足そうに言った。

 人魚も空気のある場所では液状のものを口にするが、ハーブティーを旨いと言うのはナルバールのおっさんくらいだろうよ。

「そんなに気に入ったのならまた持ってくるよ」

 ハーブなら山でよく採れるし、加工も難しくはねーし、村でも飲んでるのはうちとオババぐらいなもの。減るどころか溜まる一方のお茶だ。

「それは嬉しいですが、海の中では飲めるところが限られている上に火が焚けませんからね、ここにきたときの楽しみにしますよ」

「なにか魔法で空間を作ればイイだろう。人魚の世界には名のある魔法師が何人といんだからよ」

 人魚の世界では魔術より魔法が発達している。ハルヤール将軍からもらった自動翻訳の首輪 (イヤリングとかもある)なんて地上の魔術師では作れないもんだぞ。

 そう考えると、ラーシュの国の魔術師ってのは優秀なんだな。文字を自動変換してくれるんだから。

「ご存知の通り、海の中は争いに満ちています。名のある魔法師は最前線か国の中枢にしかいません。とても民には回ってきませんよ」

「しょーがねーな、人魚の世界も。戦争なんてしてねーで技術なり文化なりを育めよ。んなことしてっと他の種族に追い抜かれるぞ」

 別に平和主義者でもなければ戦争を否定する気はない。この世界じゃ弱けりゃ食い物にされ、利用され、家畜以下の存在にされっちまう。己を主張するために戦わなければならない。ましてや異種族が多く存在する世界だ。理解し合える訳がねぇ。だから異種族間戦争なんて当たり前に起こる。共存共栄なんて言葉どころか概念すらねーからな、この世界は。

「ベーさまは慧眼でいらっしゃる。皆がそうだと人族に後れはしないのですがね……」

 苦渋の表情を見せる。

 まあ、どの種族だろうと自分らが一番と思うもの。例え他の種族に劣っていようと認めない。でなけりゃ弱肉強食なこの世界では生きて行けんしな。

「維新志士だな、ナルバールのおっさんは」

「いし……なんですか、それは?」

「まあ、現状を変えたいと願う志しある者、って感じかな」

 言ってるオレも維新志士の意味は知らねーが、ナルバールのおっさんの目、なんか強い意志があって、そんな言葉が出てきたのだ。

「いし、なんでしたか?」

「維新志士だよ」

「……維新志士……」

 なにやら噛み締めるように呟くナルバールのおっさん。いつもの張り付けたような笑顔より何倍もイイ顔してるよ。

「まあ、おっさんがなにしようが勝手だが、あんまり無茶はすんなよ。戦士でもなけりゃあ、貴族でもねー。おっさんは商人。商人らしいやり方をしろよな」

 戦士には戦士の、商人には商人の戦い方がある。下手に戦い方を変えても上手く行くはずねーからな。

「……本当、あなたと言う人は……」

 呆れたような感心したような、なんとも感情丸出しの顔を見せた。

 が、オレはそれに突っ込んだりはしない。火傷したくないからな。

「あ、あの、よろしいか……」

 と、買い物していた客がカウンターに集まっていた。

「おっと、ワリーワリー。金は適当にコレに入れてくれ」

 基本、人魚の世界に釣りはねーし、真珠の大きさや色で値段が決まる。うちは、一センチの真珠が銅貨一枚に換算し、個数で取引している。なので、無人販売方式と言うかセルフ方式になっているのだ。

 まあ、ぶっちゃけメンドクセーのと、ちょろまかしされたら次から出入り禁止にするとはナルバールのおっさんに言ってある。なんで、不都合が出るまではこのままだ。

「にしても大量に買ってくな。次の仕入れ、大変だな」

 なんとか客を捌き、店内を見回すと、八割近く空になっていた。


 つーよりも品出しの方が大変か。ちっ、メンドクセーな。

「こりゃ、しばらく休業だな」

 前回は、並べるのも楽しくて時間は気にしなかたったが、今回は苦労しか感じねーな。まあ、一月もあればなんとか品出しできるか。

「な!? そ、それは困ります! ただでさえ滅多に開かない店なんですから!」

「知らねーよ。オレはオレの都合でしか動かねーって決めてるからな」

 前世じゃ、いつ首になるかわからねー状況で、人案削減だ、コストだと、いろいろ苦しめられた。まあ、それが仕事だと言われたらその通りだが、それを納得できるかは別問題。オレは、苦痛でしかなかった。もう二度とあんな仕事などしたくない。神(?)から三つの能力をもらい、こうしてド田舎に生まれ、好き勝手生きられるのだ、今世は自分を貫いて充実した生を謳歌してやるって決めたんだよ。

「な、なら、せめて人を雇って商売してください。我々もあなた頼りの商売なんですから!」

「それもメンドクセーな。だいたい、こんな店で働こうとする物好きなんていんのかい?」

 儲け度外視の趣味な店。月に二回も開けば働き過ぎと思ってる。ましてや品出しがメインの仕事である。暇を通り越して拷問じゃねーの?

「では、わたしが紹介いたします。給金もこちらで出します。もちろん、主はベーさま。ベーさまのやり方でおやりください。ただ、我が儘を言わして頂けるなら、月に四度は開いてください。商品もできる範囲でよろしいですから」

 なんかまんまと嵌められた気もしないではないが、まあ、好き勝手にやってるとは言え、責任を果たしてこその自由である。始めたからには終わらせる義務がある。ならば、ナルバールのおっさんの言葉に乗るのもしゃーねーか。

「んじゃ、誰か紹介してくれや。だが、こっちにばかりに構ってやれねーからな」

「まったく、それで村人だと主張するんですから、あなたは……」

 好きな仕事は苦にならねーし、やりたい仕事はいくらやっても疲れねー。忙しくも充実した日々は心がとっても穏やか。素晴らしきかな今世である。
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