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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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553 どんと行け

 ムムッ。オレの考えるな、感じろが港へ行けと囁いている。

 なんてことはなく、ただ気まぐれで港へ向かったまでなんだが、我が出会い運は常時発動型。向かった先に会うべき人がいるのだ。

「お、赤毛のねーちゃんじゃねーか。久しぶり」

 港へ来ると、赤毛のねーちゃんと副船長の少年とばったり遭遇した。

「あ、あんた、まだ王都にいたの?」

 なにやら歓迎されてないご様子。オレ、嫌われてる?

「いや、今さっき来たばかりさ。赤毛のねーちゃんは、海に出てねーのか?」

 まあ、嫌われてようが好かれてようが、オレの人生に支障はねー。赤毛ねーちゃんとはそんなに繋がりがある訳じゃねーしな。

「仕事がないのよ」

 なにやら苦々しくそっぽを向いてしまった。副船長の少年、説明ぷりーずだ。

「船が船ですし、大口の輸送はできませんし、姉御――じゃなくて、船長に信用がないので依頼がないんです」

 確かに、あの船で輸送とかは無理だし、こんな小娘に依頼を出すとかまさに冒険だろうよ。

「んじゃ、今はなにで稼いでんだ?」

「アブリクト島まで人や荷を運んでます。サリエラー号は速いので」

 ほとんど飛んでると言った方がイイ船だしな、行き来するには持ってこいだろう。

「つまり、赤毛のねーちゃんは、それが不満だと?」

「そうよ! あんなの船乗りの仕事じゃないわ!」

 充分過ぎるほど船乗りの仕事だと思うが、小娘にそれを納得できる度量なけりゃ経験もねー。どう説明しても感情が理解しないだろう。

「それで親から仕事をもらっておいて愚痴か? 随分て立派だな、赤毛のねーちゃんは」

「――――」

 顔を真っ赤にしてオレを睨むが、それを口から出すことはしなかった。まあ、自分でもわかってるんだろうが、その感情を制御できねーんだろう。若いね~。

「もし、赤毛のねーちゃんの矜持が許すのなら、オレの商会に来るかい? まあ、オレんところに来ても人や荷を運んでもらうんだがな」

 ただちょっと、いや、ワールドワイドなお仕事になるがよ。

 さあ、赤毛のねーちゃんは、どう決断する?

「やるよ。あんたんところに行くよ」

 即決に近い決断をした。言っておいてなんだが、どんな思考の流れがあったんだ?

「あたいには、まだあんたがわからない。だけど、親父はあんたに賭けて人生を勝ち取った。なら、あたいもあんたに賭ける」

 フフ。決断だけは親父さん譲りか。将来有望だな。

「なら、損はさせられねーな」

 いや、後悔するくらい儲けさせてやるよ。

「……あ、いや、ほどほどでいいからね。親父みたいには無理だからね……」

 そんな雑音は聞こえません。馬車馬のように働いてもらいます。

「ほんじゃ、アブリクト島に行こうか。大切な流通手段をもらうんだからな」

 アブリクト島が近いとは言え、普通の船では丸一日かかる。赤毛のねーちゃんの船のように一、二時間で渡れる船をなくすなんて致命的損失だ。

 そのことは親父さんも理解しているだろうから、代用を用意してやらんと、親父さんに恨まれるぜ。

 よく理解してない赤毛のねーちゃんを促し、船――サリエラー号が停泊している桟橋に向かった。

「オッサンズはいねーのかい?」

 桟橋に泊められたサリエラー号には誰もいず、見張りもいなかった。

「船は順番でやってるんだよ。全員乗ったら客を乗せられないからね」

 まあ、言われてみれば確かにだな。あんなガタイのイイオッサンズが乗ってたら客なんて五人も乗せられんわ。

「あの魔道剣、どこで手に入れたんだ?」

「帝国だよ。魔道具は帝国が本場だからね」

 なるほど。帝国での用がまた一つできたな。

「それより、今から出発するのかい? これからだと夜になるよ」

 ただ今の時刻、六時十分。陽が長い季節とは言え、あと一時間もしたら真っ暗になる。

 空と同様に海も暗くなったら錨を下ろして停泊する。ましてや夜になるのに出発とか非常識。普通の船乗りならバカ野郎と叫ぶところだろう。多少は非常識が身についたようで結構結構コケッコー。

「なら、夜間航行の訓練だ。アブリクト島の方角はわかってるな?」

 意外や意外。この時代に方位磁石とかありやがる。なんで、方角さえわかっていれば航行できるのだ――と、公爵どのが言ってました。

「いや、わかってるけど、無茶苦茶だよ! 夜行性の海竜だっているんだからさ!」

「そこは船の性能と船乗りの勘でなんとかしろ。一流の船乗りになるんならな」

 ソナーやレーダーがないのだ、己の五感や第六感でカバーしろや。

「あんたが一番無茶苦茶だったよ!」

「若いなら玉砕覚悟で無茶をしろ。なに、運がよけりゃ死なねーよ」

「いや、死ぬよ! 運がよくても死ぬよ!」

「安心しろ。オレは運がイイ」

 そして、なにがこようと生き残れる実力もある。どんと行け、だ。

「ベーに関わったのが運の尽き。諦めなさい」

 頭の上からなにかを悟ったかのような声が発せられるが、無視してくれて結構ですから。つーか、黙ってろや、この腐れメルヘンが!

「……なんか帰りたくなったよ……」

 ああ。帰ろうか。新たな家(仕事場)に、な。ケッケッケ。
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