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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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516 聞かぬが花

 朝食を済ませたあと、ライオウに跨がり集落へと下りた。

 時間的には、もう村の連中が働いている頃なので、集落な人の姿はない。辛うじて隠居さたじいさんや働き手にならないチビっ子が見て取れるくらいだ。

「まずは、冒険者ギルドか」

 バリアルのギルド長に依頼されたとは言え、筋を通しておくのが吉。まあ、姉御には話しておかねーと、なにされるかわからんしな。報告はしておくか。

「おっちゃん生きてるか~」

 いつものように入り、いつものように声をかけるが、キレる三十代からの返しがなかった。死んだか?

「生きてるわよ」

 と、定位置にいる姉御が返してきた。

「おはようございやす。おっちゃん、どーしたんです?」

「休みよ。ちょっと心労が祟ってね」

「心労? こんな平和な田舎で?」

 つーか、冒険者ギルド(支部)が忙しくなるなんてあんのかい? 昔ならいざ知らず。

「……平和なのは君の周りだけよ。こっちは姫勇者様のことで頭が痛いわ……」

「勇者ちゃん、暴れてんですかい?」

 見た感じ、壊れているところはなかったが。

「姫勇者様は、真っ黒の泥だらけの毎日よ」

 なにやらゲッソリな姉御。それがなんだって言うんです? 微笑ましいことじゃないですか。

 まあ、村を守るために来て、遊び回ってるのは醜聞がワリーかも知れんが、勇者が村にいる。その事実があれば多少遊び回っていても問題ねーだろう。誰も監視してる訳じゃねーんだからよ。

「あ、その世話役が問題なんでしたっけ?」

「ええ。田舎暮らしに堪えられないと、冒険者を雇って逃げ出したわ」

「まあ、世話役の事情は知りやせんが、別にいなくてもイイじゃないですか? 聞いてる話では、勇者ちゃんは満足そうだし、お付きの女騎士さんも問題にしている様子はないようですし」

 欲しいのは勇者。他はいらんでしょう。

「そうもいかないのよ。姫勇者様は、冒険者ギルド預り。冒険者ギルドが面倒みなくちゃならないの」

 それはわからないではない。預かったのに放置ではそれこそ醜聞だ。外にも中にもワリーだろう。が、その冒険者ギルドがボブラ村の冒険者ギルド(支部)に丸投げしたんならテキトーにさせておくのが適切なんじゃね? それに楽でイイじゃん。

「……ふ~。あのね、仮にも一国のお姫さまが毎日真っ黒の泥だらけになるなんてあり得ないの。それが勇者となれば尚更よ。前に言ったようにこれは姫勇者様の修行も兼ねてるって。それなのに教師役も兼ねてる世話役がいなくなるなんて……。冒険者ギルドが全面的に協力してるのに大問題よ」

「ふ~ん。大変ですね」

 うんまあ、そうとしか言いようがないわ。

「もう、他人事だからって」

 事実、他人事ですもん。

「で、王都から代わりは来るんですかい?」

「検討中らしい話よ」

 やはり冒険者ギルド内での派閥争いで、バリアルのギルド長らが先手を打った形か……。

「なにかあったの?」

 黙り込んだオレに、姉御が訝しげな目を向けてきた。

 ……相変わらず勘が鋭い人だよ……。

「冒険者ギルド、ギルド評議員クレイン・ボルマのお願いで勇者ちゃんはオレが預ります」

 収納鞄からバリアルのギルド長に書かせた書をカウンターに置いた。

「……どう言うこと?」

 股間がキュッとしそうな眼差しをぶつけてくるが、根性で見返した。

「これは、オレの友人たる評議員からのオレ個人へのお願いです。ボブラ村冒険者ギルドは、その協力者として認めてきださい」

 書にもそう書かせてある。

 これは、評議員クレイン・ボルマの独断専行だが、オレ個人へのお願い。ゆえに強制力はねーし、ボブラ村の冒険者ギルド(支部)が断ることもできる。が、今の現状で断るなんて無理だろう。この状況を打開できるのはオレしかいねーんだからな。

「まあ、勇者ちゃんのことはオレに任せてください。悪いようにはしませんから。あ、ただ、いろいろご協力はお願いしやす。この依頼は冒険者ギルドの預り。オレはそのお手伝い、ってな感じなんで」

 股間に力を込めながら姉御に笑顔を見せた。

「……まったく、あなたときたら……」

 呆れる姉御に笑顔を崩さない。やるなら最後までやりきれだ。

「わかりました。姫勇者様のことはあなたに任せます」

「はい。お任せあれ」

 書は姉御に渡す。評議員クレイン・ボルマの手柄にするために。

「まったく、冒険者嫌いもそこまで行くと立派よ」

「別に冒険者と言う生き方に否定はありやせんぜ。ただ、その生き方がしたくないだけですよ。オレにしたらなんで姉御が冒険者ギルドにいるのかがわかりませんぜ」

 姉御は元冒険者。それもS級。親父殿が束になっても勝てないだろう。まあ、命が惜しいんで姉御の過去には触れないが、S級だっただけにその資産は下手な貴族よりある。

 こんなド田舎の冒険者ギルド(支部)で受付嬢している人ではない。王都の冒険者ギルドか本部にいる人だ。でなくても、悠々自適に余生を送れる人なのだ。

「ふふ。なにもしない人生はつまらないじゃない。それに、わたしらこの村が好きよ。シャニラがいてあなたがいる村が好き。それだけよ」

 明らかにそれだけじゃないが、それを聞くのは野暮ってもの。聞かぬが花だ。

「それで、勇者ちゃんはいずこに?」

「外で待ってれば来るわよ」

 なにか含ませた言葉ではあるが、サラっとスルー。来たらわかんだれうよ。

「んじゃ、外で待たしてもらいやす」

「ええ。よろしくね」

 姉御に挨拶して外へと出た。
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