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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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432 その心は

 この世界、人里から十キロも離れたらそこはもう秘境だ。

 人が国境をつくろうが、ファンタジーを支配しることはできない。どこの国も人が住めるところが国であり、他は名ばかりの支配地である。侵略戦争なんて人に優しい地域じゃないとできねーよ。

「……もう、六匹か……」

 狩り場に決めた山に入って三十分。最低と決めていた数を狩ってしまった。

 角猪は繁殖力が強く雑食で、人が食べたら死ぬような毒キノコすら食う悪食な生き物だ。だが、肉質はよく、冒険者ギルドに行けば必ず捕獲依頼が貼り出されているくらいだ。

 まあ、ファンタジーな世界で生きる猪であり、凶悪な角を持っているため、捕獲するのはD級以上の冒険者かベテラン狩人。新米冒険者では殺されるだけだ。しかも、本職の狩人ですら一日がかりの狩りとなるくらいだからな。

「んだが、明らかに異常だな」

 元A級冒険者で弓も超一流なザンバリーのおっちゃんに任せているとは言え、角猪とのエンカウント率が高過ぎる。やつらは臆病で、逃げ足の早さは脱兎のごとく。トータの足でも追い付けねーだろう。

 だから、角猪を狩りは先手必勝。見つかる前に狩れ、である。

 今回もそれで狩っていたのだが、角猪は三匹で現れ、その一匹を狩れば充分。狩りの基本だと、弓を下げたことに非難されることはねー。

 だが、残りの二匹がこちらへと襲って来た。まずあり得ないことに驚いたが、ザンバリーのおっちゃんに隙はなし。

 流れるように矢をつがい、そして、的確に角猪の額を打ち抜いた。

 たまたまかと思ったが、五分後に現れた三匹も同じ行動を見せたのだ。

「なんつーか、前にも同じことがあったな」

 ザンバリーのおっちゃんを見れば、この出来事が異常だと肌と経験で理解しているようで、厳しい顔をしていた。

「……斥候、だな……」

 ザンバリーのおっちゃんがポツリと呟いた。

「やっぱりか。つーことは、それを率いるなにかがいるってことか。まったく、また面倒事か」

 まあ、人生なんてそんなもん。グチってもしょうがねーか。

「ベー」

 その目が『おれが時間を稼ぐ。逃げろ』と言ってたが、そんなもん聞く訳ねーだろうと鼻で笑ってやった。

「テメーの狩り場で逃げたらトータにデカい顔できねーだろう。なあ、オヤジよ」

 まだできる兄貴でいてーしな、ここは一つ、沽券を築いておかんとならんでしょう。

「ったく。冒険者やっててこれほどよかったと思ったことはないぜ。元A級の冒険者の実力、見せてやるよ」

「それでこそオレたちのオヤジだ」

 ニヤリと笑う未来のオヤジに、未来の息子として最大の賞賛を贈った。

「熱い親子よのぉ。なら、わたしも本気を出すとするか」

 と、賢者殿が淡く煌めくと、白髪の少女が黄金の美女に変化した。

「……まさか、ハイエルフとは。マジでいたんだな……」

 いるとは聞いてたが、ハイエルフは伝説級の存在。エルフですら一生に一度見れたら御の字と言われてるくらいだ。

「ハイエルフとわかるベーに驚きじゃがのぉ」

「金髪碧眼なんてハイエルフしかいねーだろう。つーか、ハイエルフじゃなくて新種の珍生物なのか?」

「そりゃお前だ!」

「そりゃお前さんだ!」

 なぜか突っ込まれてしまった。

 納得いかねーが、前世の記憶があったり、三つの能力があったりと、もうフツーじゃねーが、珍ではねーぞ!

 とか言い返したかったが、ザンバリーのおっちゃんが次の獲物が近付いてくるのを察し、矢をつがいた。

「おっ。こっちからも来たようだ」

 オレには感じないが、元A級の冒険者とハイエルフが言ってるのだ、間違いはねーと、殺戮阿吽を構えた。

「こりゃ、囲まれてるな」

「しかも魔獣化されとるのぉ。大物じゃな」

 魔獣化。それは、魔によって支配され、変化したものを言うらしい。

「できれば生きたまま捕獲してーんだが?」

「魔獣化したものの肉は不味いぞ。まあ、皮や角と言ったものは美味しく使えるがな」

 さすが元冒険者。言うことが含蓄があるね。

 それでもエリナのエサになるから生きたまま捕獲してーが、二人に苦労を強いるのも申し訳ねー。今回は、肉以外を美味しく頂きますか。

「来るぞ!」

「ふふ。久々に腕がなるのぉ」

 賢者殿がどこからか等身以上の凶悪な戦斧を出した。

 美女化した賢者殿の身長は、約百八十センチ。細身のクセにボンキュッポン。あ、いや、そうじゃなくて、よくその体で二メートルもの戦斧を操れるものだ。

 木々の間から忽然と現れた二メートル近い角猪を真っ二つにしてしまった。

「おいおい、狩りに来てんだから狩りしろよ。殺戮なら他でやれ」

 次々と出て来る角猪を真っ二つにして行く賢者殿。つーか、あなた、実は戦闘狂でしょう。

「フハハハ! そう固いこと言うでない。昔っからブタは嫌いでな、つい殺したくなるんじゃよ」

 もう、そうかいとしか言いようがないくらい無双状態。もう、どこが使えるかわかんねーな。

「まあ、肉片でもエサになるし、集めておくか」

 海の生物に好き嫌いはねー。角猪以上に悪食。そして、角猪以上に美味しく頂ける。拾えや拾え。無駄なく拾え~だ。

「つまらん。もう終わりか?」

 殺しも殺して三十数匹。ザンバリーのおっちゃんの出番がまったくなかったよ。

「にしても、結構いたな。まったく、これが普通の角猪なら捕獲して家畜化できたのによ」

 魔獣化したとは言え、これだけの数が出て来るなんて奇跡に近い。皮算用したって責められねーぜ。


 ブゥオオオオオオォォォッ!


 と、なにかが吠えるような音が山々に響き渡った。

「こっちだな」

 発生源がわかるのか、ザンバリーのおっちゃんと賢者殿が動いた。

 見張らしのイイ場所に出て辺りを見回す。が、オレの目には、山々しか見えなかった。

「あそこじゃ」

 と、賢者殿が向かいの山の稜線辺りをアゴで差した。

 生憎とオレの視力は平均的よりやや上。一キロ以上離れたところにいるものなど豆粒ほどにも見えねー。

 なので結界で望遠鏡を創り出した。

「……こりゃまた珍妙なのが出て来たな……」

 ブタがブタに跨がっているとはこれいかに。誰かその心を教えてくれや。

「まったく、生命に溢れた世界だぜ」
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