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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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403/988

403 勧誘

 親方は、思い立ったが吉日の人――人外さんなようで、直ぐに引っ越し準備に取りかかった。

 とは言え、一時間二時間で準備できる量ではないので、夕方、グレン婆の心地好い一時の前で落ち合うことにした。

「さて、なにして時間を潰そうかな?」

 これと言ってやることもなし。な、こともないが、今は午後の一時半。なにかするには時間が足りない。まあ、ブラっと歩いてみるか。

 ブラっと歩いて五分くらい。通りの隅でよくやっている屋台からイイ匂いが漂ってきた。

「……焼きラビーか……」

 季節的にはもう過ぎた木の実だが、品種によっては今の時期になるものもある。多分、そんな品種のラビーなんだろう。

「いらっしゃい」

 屋台を覗くと、五十くらいのおばちゃんが商売をしていた。

「おばちゃん、これにいっぱいちょうだい」

 収納鞄からザルを出しておばちゃんに渡した。こーゆー屋台は、基本、器持ち込みなんだよ。

 愛想のよいおばちゃんにオマケしてもらい、その横に土魔法で長椅子を創り、そこでいただくことにした。

「これも薄味だね」

 プリッつあんが自分の頭もあろうかと言うラビーを食いながら、屋台のラビーを評した。

「まあ、品種によるもんだろう」

 確かに、ブララ島のラビーよりは薄いが、オレにはこれと言った不満はねー。食後のデザートとしてはイイんじゃねの。

 行き交う人を見ながらモグモグ食ってると、なんか見覚えのある人が通り過ぎた。

「……あ、倉庫借りるときのおっちゃん」

 えーと、名前、なんったっけ? シーでもなくサーでもなくて……思い出せん。なんだっけ?

「バーザですよ、ヴィベルファクフィニーさん」

「あーハイハイ、バーザさんな。すっかり忘れてたが思い出したよ」

「なに気に失礼なこと言ってるわよ、ベー」

 それを本人の前で言ったらアウトじゃん。

「今日は、なかなか可愛らしい方々をお連れですね。紹介してもらってもよろしいですか?」

「これ、プリッつあん。オレの頭の上の住人で、こっちのがドレミ。オレの横にいる住人だ」

「そうですか。初めまして、プリッつあんさんとドレミさん」

 なかなかアイアンハートをお持ちだ。まったく動揺を見せねーよ、このおっちゃん。

「わたしは、プリッシュ。プリッつあんは、愛称よ。間違えないでよね!」

 プリッシュよりプリッつあんの方が断然可愛いのにな。

「そうでしたか。では、改めて。プリッシュさん、初めまして」

 ニッコリ笑うバーザのおっちゃん。ある意味、あんちゃんと同じ神経を持ってる人だな。

「散歩かい?」

「ええ。今日は休みなもので街をブラブラしてました。ヴィベルファクフィニーさんもですか?」

 ザルに入ったラビーを見ながら聞いてきた。

「まあ、ちょっと時間潰しにな。暇ならどうだい?」

 ザルを掲げて見せた。

「そうですね。ご相伴させていただきますか」

 気の利いたプリッつあんが場所をよけ、そこに「ありがとうございます」と感謝をのべながら座った。

「バーザさんは、酒とお茶、どっちがイイ?」

 焼きラビーは口の中の水分、持ってかれるからな、飲み物なしでは、ちとキツいんだよ。

「では、お酒を。昨日、タージ様とお会いして、ヴィベルファクフィニーさんが珍しいお酒を持っているとお聞きしましたので、遠慮なく言ってみました。わたし、お酒が大好きなものでして」

 そんなに飲めませんがねと、付け足した。

 タージ? 誰だっけ? とはウソだよ。さすがに誰かはわかるわ。あの人だろう、あの人。まあ、敢えて誰とは言わねーがな。

「そうかい。なら……」

 収納鞄から適当に一本……ブランデーを出した。

「そのままで飲むもよし。水で割って飲むもよし。お茶に入れて飲むのもイイとか聞いたことがあるよ。まずは、一口飲んでみなや」

 コップと水を出してやり、まずは飲ましてみた。

「ほぉう。今まで飲んだことがない味ですが、実に旨い!」

「舌にあってなにより。まあ、ほどよく飲んでくれ」

「よろしいので、かなり高価なものとお見受けしますが?」

「どうなんだろうな? 銀貨二、三枚くらいかな?」

 どうも外国産のようで、よーわからんわ。

「まあ、イイ酒の前で金の話は無粋だ。飲んで味わえだ」

 オレはブララジュース(プリッつあんは、コーヒー羊乳。ドレミは羊乳な)を出して、バーザのおっちゃんと乾杯した。

 焼きラビーをツマミながら世間話をする。

「いえ、わたしは、ギルド職員ですよ。倉庫の受け付けはギルドの仕事なので」

 世間話の中で、どこの商会で働いてのと聞いたら、そんな答えが返ってきた。

「左遷されたのかい?」

 いろいろ遠回しに聞くのもメンドクセーので単刀直入に尋ねた。

「はい。ギルド内もいろいろありまして」

 すんなり口にするバーザのおっちゃん。やはり、この人はできる。オレの意図を見抜いてるぜ。

「何処も同じ、か。苦労してんな」

 まあ、人がいるとこ派閥あり、だからな。

「しかたがありません。妻と子を養うためですから」

 ふ~んと、バーザのおっちゃんを見ながら考え込む。

 おっちゃんは、気付きながらも気付かない顔でブランデーを楽しんでいた。

 ……フフ。腹芸も得意なよーだ……。

「じゃあ、転職でもしてみねーかい?」

「転職、ですか。仕事内容と給金次第ですね」

 しっかりしてらー。だが、それでこそ商人だ。

「世界を相手にする商売で、給金は、ギルド長と要相談だな。まだ、人材不足で副ギルド長とか会計とか、いねーからよ」

 このおっちゃんには、それで充分だろう。

「他にお誘いしてる人はいるので?」

「いや、やっぱ誘うなら優秀で、やる気のある人がイイからな」

 それには応えず、ブランデーを一口。ゆっくり飲み込んだ。うん、慎重でイイね。

「まあ、直ぐには求めんよ。それこそいろいろあるからな。もし、やりたくなったら、親父さん、ブラーニーを訪ねてくれや。親父さんには話を通しておくからよ。さて。ちょっと知り合いがきたんで、これでな。あ、この出会いを祝してもう一本。楽しく味わってくれ」

 じゃーなと別れ、オレの出会い運によって導かれた、よく知る人物のもとへと向かった。
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