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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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319 頂きます

「坊っちゃん」

 と、雇っていたマームルじいさんとこの人足頭(隊商の古株で馬番頭の人、いや、犬耳おっちゃん)が横に現れた。

「坊っちゃん?」

「──あ、オレか!?」

 坊っちゃんって誰だよ? と考えたらオレのことだったよ。

 村人なオレに肩書きなんてねーから、人足頭が坊っちゃんと呼び出したんだよ。

 坊っちゃんなんて柄でもなけりゃ背中のどこかが痒くなってしょうがねーが、雇い主は皆神さまがまかり通ってる時代に雇い主にタメ語を使えって方が悪い。そこに上下関係を持ち込まねーと上手く機能しねーんだよ、今の時代はよ……。

「んで、なんだい?」

「へい。荷物運び終わりやした」

 相手がガキだろうが雇い主なら頭を下げるのは当たり前で、なんら不思議ではない世界。力があることに超絶感謝だな。

「おう。ご苦労さん。ちょっと早いが昼にしてくれ。あと、食札な。好きなもの食ってくれ」

 ポケットからサプルの店で無料で食える食券(名刺くらいの板)を人数分出して纏めて人足頭に渡した。

「よ、よろしいんでやすか?」

 恐縮がるが、これは去年もやっている。今更だと思うんだがな?

「午後からもしっかり働いてもらいてーからな、いっぱい食って力をつけておいてくれや」

 うちは働く者に優しい職場。あなたがいてこそわたしがいるのです精神で働いてもらってるのだよ。

「ありがたく頂きやす!」

 背後に控える人足たちも頭を下げてお礼を言った。

 はいよと軽く流して人足たちを昼食に行かせた。

「……お前はいったいどこを目指しているんだよ……」

「悠々自適に、好きなことを好きなときにして、優雅に華麗に鮮やかに、ああイイ人生だったと言って事切れるところ、かな?」

 まあ、言葉にしたらそんなとこだろう。

「……な、なんと言うか、高いんだか低いんだかわからんところを目指しているのだな……」

「なに、人それぞれ生き方は違うもの。大切と思うものも違うもの。オレがそうしたいと願い、そうなるように努力しているだけ。別に理解されなくても構わんさ」

 決めたのは自分。やるのは自分。オレが知っていればイイことだ。

「はぁ~。その意志の強さだけは素直に凄いと感心するよ」

「とても十才の子供のセリフではないな」

「まったくだ」

 口に出してまで修正するほどのことじゃねーが、オレ、先日十一才になってます。王都に行ってたくらいに。まあ、誕生日を祝う文化がないんで華麗にスルーしたけどな。

「さて。マームルじいさんたちは昼、どうする? 予定がなけりゃ一緒にどうだ?」

 含みを持たせた目でマームルじいさんらを見回した。

「もちろん、喜んでご同行させてもらうさ。サプルの料理もこの旅の目的だからな」

 と言うことで場所をサプルの店──『ポフェリア』へと移す。

 オトンの血を一番濃く継いでるのか、名前を付けるときはキラキラネームになっちゃうサプルちゃんなのです。

 ちなみにポフェリアとは南の大陸の言葉で『真心』と言う意味だ。そーゆー他国の言葉より自分とこの文字を覚えて欲しいもんだよ……。

「ちゃんとやってるよーだな」

 女衆の品出しに時間を取られて縮小規模でやるかと思ったが、ちゃんと全席(三十席)座れるようにしたようだ。

「とは言え、さすがに席はねーか。なら、オープンスペースにすっか」

 サプルの店はテイクアウトOKにしてある。なんで、隊商と店の間の仕切りとしてオープンスペース──テーブルと椅子を置いてあるのだ。

「サプル。四人前適当にみつくろって持ってきてくれや」

「はぁ~い。わかった~」

 厨房で残像を生み出すサプルにお願いして空いてるオープンスペース席に移動した。

「今回はなんなのだ?」

 椅子に座るとマームルじいさんがわくわくしなから聞いてきた。

「確か鳥肉を中心とした料理らしいな。よくは聞いてないが」

 肉捕獲担当が鳥を獲りすぎて鳥肉余り状態なので、鳥肉料理にすると聞いただけなのだ。

「そうか。あぁ、去年食べた唐揚げ、また食いたいなぁ~」

 イイ年してんだから油っこいものはひかえろよな、まったく。

「まあ、できる前にちょっくら話をしようや」

 収納鞄から葡萄酒とカップを出して三人に注いだ。

「……飲めないクセにいつも旨いものを選ぶよな、お前は……」

「金にものを言わせて高い酒を買ってるだけさ」

 もちろん、安い酒(ド田舎では高級酒になるんだよ)も買ってるがな。

「で、だ。王都でアブリクト貿易連合と言う、まあ、自由貿易島ができる。そこは種族、人種、国を超えて商売をするところで、くるものは拒まない。商売しましょうそうしましょう、ってなところだ」

 もっとも、そうなるかは親父さんの努力と同じ理念を持つ者が集まるかどうか。オレじゃねー誰かの頑張り次第ってことだ。

 三人のじいさまらを見回すと、それぞれ深い思考の海に沈んでいた。が、真っ先に上がってきたのはマームルじいさんだった。

「……そこは、わしでも入れるのか?」

「入れてくれ、って言えば入れてくれるさ。参加する商人の数が増えればそれだけ連合の力となるからな」

 数は力。増えれば増えただけ経済領域は拡大し、国が、街が、そして村が豊かになる──かどうかは参加する商人の努力と思惑次第。イイ方に向かって進んでくれだ。

「つまり、バーボンド殿が?」

「いや、会長さんは参加してる一人だ。貿易連合の代表は別のヤツさ。まあ、会長さんに負けずとも劣らない男とだけ言っておこう」

 その判断は親父さんと向かい合ったヤツがすること。たんに前情報を渡しただけだ。

「なるほど。ふふ。その男の背後には相当な大物がいるようだ」

「案外小心者で欲と見栄にまみれたクズ野郎かもよ?」

 真っ直ぐ、貫かんばかりの視線をさらりと交わしてやる。

「まあ、なんだ。そんな話があるってことだ。興味があるんなら会長さんとこに行って見ればイイさ。オレの名を出せば話を聞いてくれると思うぜ?」

行く行かないもマームルじいさん次第。オレが決めることじゃねーさ。

「……ったく、これで村人とかふかしてるんだから意味わからんわ……」

「村人であることを他人に認められたい訳でも認めさせたい訳でもねー。これはオレの姿勢と覚悟、そしてアイデンティティー……はわかんねーか。まあ、オレがオレであるための自分に向けた宣誓だ。はなから他のヤツに理解なんて求めちゃいねーよ」

 他人の目など気にしていたら人生の半分を台無しにする。その分、苦労とか苦労とか苦労がつきもんだが、まあ、どんな人生にも苦労はつきもの。なら自分の望む方向に行く苦労をするまでさ。

「──お待ちどうさま! 鳥肉の盛り合わせだよ!」

 ウエイター役の若奧さま、えーと、確か、マイブのあんちゃんの嫁さんで……なんだっけ?

「ごゆっくり~!」

 思い出す前に去って行ってしまった。

「おぉ、鳥肉の盛り合わせとは豪勢だな。これで銅貨三枚とかあり得ないだろう」

「これでか? 王都の高級店なら金貨一枚は軽く取られるぞ!?」

「なんと言う贅沢か……」

 驚くじーさまたち。食事情は隣も同じか。ほんと、この村に生まれて神さまありがとうだな。

「ほれ。驚く前にまずは食え。料理が冷めっちまうだろうが」

「おっと、そうだった。では、作ってくれたサプルと食材になった鳥たちに感謝を込めて頂きます!」

「ああ、頂きますだ」

「頂きます!」

 すっかりオレらの色に染められたマームルじいさん──と言うよりカムラ王国の人たち。この広場では珍しくない光景となっていた。

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