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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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312 カムラの商人

 うむ。今回はご新規さんが多いんだな。

 改めて広場を見回すと、約半数(六隊)が初めて見る隊商だった。

 人の名前を忘れてしまうオレだが、顔を覚えるのは大得意。一度見たら忘れないのだ。

「あ、ベー。ここにいた」

 店に帰りながら隊商の様子を見ていたらトアラがやってきた。

「どうしたい?」

「隊商の人が呼んでるよ」

 と言うので行って見ると、馴染みの隊商らが風呂の前に集まっていた。

「なんだい、隊商のお偉いさんが集まって?」

 中には商会の会長やら若頭などがいた。

「ベー。これは風呂だよな?」

 そのうちの一人で、一番の実力者たる……じいさんが代表して口を開いた。

「ああ。北欧からきた連中が余りにも臭くてな、強制的にいれたんだよ」

 何度かきている隊商は、サプルの性格を知っているのでなるべくキレイにしている。でないとこの広場は買い物もできねーのだ。つーか、サプルの半径三十メートル以内に入れないのだ。

 ──身綺麗にしろ。

 この広場での最優先事項であり、絶対ルールなのだ。

 ……これにはオレでも逆らえませんデス……。

「なら、この風呂を使わせてくれんか? サプルに嫌われたら買い物ができなくなるんでな」

 そー言やぁじいさん、最初の犠牲者だったっけな。

 これでもカムラ王国では名の知れた商会の会長さんだが、サプルの前では汚ねーじいさん。身綺麗になるまで近寄れず、そのときはなにも買えず仕舞いだったのだ。

「随分とお節介をやくじゃねーか? 自分の買う物が減るだろうによ」

 北の商人はやり手であり、敵に塩を送るようなことはしない。自分の利益が一番って感じの性質を持っている。

「それで店が開けないんじゃ本末転倒だ。聞いたが、二度も逃げ出したそうじゃないか。さすがに自分だけの利益を求めてはられんよ」

 なるほど。そう言う考えもあるか。サプルは汚物に対して容赦ねー上に、自分のキレイを優先させる。ましてや女衆の纏め役はサプルであり、商品を管理(収納鞄からの出し入れな)を担当している。本来なら今日から商売する予定だったが、その二度の逃亡で遅れているとか。更に遅れたら損どころの話じゃねー。信用すら危うくなっちまう。ブララジャムはカムラ国で大人気の品。王さまの食卓にも上がると言う。ちなみに、じいさんが王さまの御用聞きです。

「まあ、キレイにしてくれんならこっちも助かるし、構わねーよ。サプルに排除されねー程度にキレイになってくれや」

「あ、ベー。女風呂も創ってあげてね。今回は女の人もいるからさ」

 気が利くトアラの提案で、今回若い女が多いことを思い出した。

「あー、いたな。つーか、考えるのはどこも同じだな。バカなのか、あんたらの国の商人は?」

 余りオレの好きな商売道をしねーカムラ王国の商人だが、利にさといところは尊敬にあたいする。それがこんなお粗末を見せられたらガッカリどころか興醒めだわ。

「カムラの商人とは言え、上も下もいる。賢いのも愚かなのもいる。一括りにしないでくれ」

 おっと。オレとしたことが自分の一番嫌いなことを言っちまったぜ。

「すまねー。オレの失言だった。これこの通り謝るよ」

 誠心誠意、じいさんに頭を下げた。

「お、おい、止めてくれ! ベーにそんなことされたらワシの方が罵られてしまうわ! 許す。許すから止めてくれ!」

 じいさんや他の連中が慌ててオレの頭を上げさせた。

「ったく、お前さんの相手をしておると疲れるわい。これだけの力があるんだからそう簡単に頭を下げるんじゃない」

「失言には詫びるが、オレは自分の間違いをなしにはしねー流儀なんでな、誰の声だろうと従えねーよ」

 自分の行いに背を向けたら男(大馬鹿野郎)じゃねー。タダのクズ野郎だ。男(大馬鹿野郎)なら自分の流儀を貫いて立派な男(大馬鹿野郎)になったれだ!

「やれやれ。さすが雌獅子を手玉に取る小賢者さまだ。わしらでは手におえんよ」

「ああ。雌獅子以上に敵にしたくないわ」

 褒められているようで貶されているセリフと苦笑いに、憮然とした顔で返した。

「ま、まあ、他の新参者らにはこちらで話しておくよ。だから明日には店を出してくれ。それと、お前さんにバカなことはしないようにも言っておく。それでもバカをする者がいたら遠慮なくあそこのバカどもの横に並べてくれ。これはカムラ王国商業ギルドの総意と決意だ」

 カムラ王国で商会連合と対なす勢力、商業ギルド。その総意とか決意とかまた厄介なことを押し付けてくれる。まったく、そっちの国のことはそっちでやりやがれよな。

「……そう、睨まんでくれ。もはや我らの国ではこの広場はなくてはならないものになっている。塩を安く仕入れられることはもちろんのこと、沢山の海産物や外国の品がバカみたいな値で売っている。それだけでも利益があると言うのに、カムラの野菜や家畜を高く買ってくれる。それも大量にだ。ここでお前さんらに嫌われたら我が国の屋台骨が傾くどころか崩れてしまうわ」

 そんな大げさな。たかだか村がやってる広場で国が傾く訳ねーだろう。それに、カムラの野菜──ちょっと辛みのあるカブやクセのあるゴーヤ(モドキ)は人魚の舌に合うらしいから代わりに仕入れているだけ。量も荷車百台もねー。家畜だって百頭にも届いてねー。まあ、あるのなら何百頭も買うとは言ってるがな。

「……鋭い洞察力を見せたと思ったら単純なことに目が届かない。お前さんほどわからないヤツはおらんよ……」

「ほんとだわ」

 なんかトアラにまで同意されてしまった!

「お前さんの言葉ではないが、誠意には誠意を。感謝には感謝を。そして、我々、商業ギルドはベーに友好を示す。これからもよろしくだ」

 商売は人と人がするもの。それを知っているからカムラの商人は油断できねーんだよな。

「まったく、そうとはわかっていても嫌いになれねーからタチがワリーよな、あんたらは……」

「アハハ! カムラの商人として、最高の誉め言葉だ!」
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