挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

309/992

309 オレ知ーらねー

「申し訳ありません。急に押し掛けてしまいまして」

 スライムなことを忘れてしまうくらい優雅で完璧と思える一礼をする。

「気にすんな。オレも急に押し掛けるタイプだしな、相手にされたからって怒れねーよ」

 まあ、うちは基本、ウェルカム。嫌いなヤツにしか戸を閉ざしてねーよ。

「ありがとうございます。そう言ってもらえると助かります」

 本心から出たんだろう、ほっとするバンベル。なんともハイスペックなスライムだよ。

「で、今日はなんだい?」

「大変申し難いのですが、主の話をお聞きくださいませ」

 暗に中へと言っているので馬車の中にお邪魔します。

 禍々しい馬車からは想像できないくらい、なんとも日本的でごちゃごちゃとした八畳間だった。

 うんまあ、エリナだしと無理矢理自分を納得させ、勧められた座布団に腰を下ろした。

「今、お茶を淹れます」

「お構いなく」

 目の前に座るエリナから全力で視界を外してバンベルに応えた。

 お茶と煎餅を出され、ありがたく頂く。あー茶がウメー。

「ベーどの!」

 どうやらオレの現実逃避にしびれを切らしたのか、ちゃぶ台を両手で叩いて絶叫するエリナ。ほんと、現実は厳しいぜ。

「はぁ~。わかったよ。聞くよ。聞きゃイイんだろう。そんでなんだい、いったい?」

 とっとと済ませて楽しい現実に戻りてーよ。

「拙者、熱いパトスを爆発させたいでござる!」

「ふ~ん」

「あれ? 以外にクール?」

 いや、クールと言うよりはコールドって感じ? お前の言ってる意味も熱いパトスもオレのなにかが拒否して心が凍てついてるよ。

 とは言え、現実を見るには現実を受け入れなくてはならねー。が、直に見れる勇気も根性もねーので、まずは受け入れやすいバンベルを見る。お前だけが心の拠り所だよ。

「で、なんだって言うんだ?」

「まさかのスルー!?」

 ハイハイ。イイ子だからもうちょっと待ってね。今、大事なお話してるからさ。

「なんと申しましょうか、主が絵を描いていることはご存知でしょうか?」

「ああ。なにを描いてるかは全力で知りたくねーがな」

 もうそれわかってるじゃん。とかは聞きません。人には触れたくねーことの一つや二つはあんだよ。察しろや。

「ま、まあ、なにを描いてるのはこの際横に置きまして、港に行ったおり、なにかに心を揺さぶられたと申しましょうか、衝撃を受けたと申しましょうか、なんとも説明に困るのですが、主の『熱いパトス』がほとばしばった? みたいで、薄い本を沢山創った訳でして……」

「な、なんでござろう。少年に虫を見るような目を向けられるのがちょっと快感でござる」

 虫を視界から蹴り出し、バンベルにだけ集中する。

「本、ね。まあ、創るのはエリナの勝手だし、好きにしろだが、なんでオレのところにくるんだ? 言っとくが、オレは絵より文字派だぞ」

 漫画や絵を否定はしねーし、素晴らしいものだと思ってる。だが、オレの好みは文字いっぱい。絵は少しで充分ですって質なだけ。好きなヤツが好きなものを読めって主義主張を致します、だ。

「あ、いえ、べーさまに読んでくれなど口が裂けても申しません。べーさまにお願いしたいのは、読者を、もしくは同類──いえ、同好の志を紹介してもらえないかと、思いまして……」

 途中、バンベルの本音は聞かなかったことにして、だ。なかなか無理難題……あ。

「いるのですか!?」

 バンベルの嬉々とした叫び(助け)に、否定したい気持ちでいっぱいだったが、もう手遅れ。まるで狩人のような目と気配で逃げ道を塞いでいた。

「……エリナと同じ趣味かはわかんねーが、男嫌いのクセに男と男の友情が好き、ってヤツなら知ってるな……」

 そのときは変な趣味してんなと軽く流したが、今思えばエリナのような目をしていたよーな、気がする。間違えであってくれと切に願います……。

「同志でごさる! それは絶対に同志でごさるよ!」

「ベーさま! これこの通り、その方をご紹介してくださいませ!」

 二人の勢いにドン引きだが、ここは前に進まないと解放はしてくれないんだから踏み越えろ、だ。

「わかったよ。紹介してやるよ。ただ、そいつは帝国貴族で公爵令嬢だ。直ぐには連絡つかんぞ。まあ、その親父ならそこら辺飛んでいるだろうからジェット機で飛んでれば直ぐに見つけられるとは思うがな」

 真珠を捌いてもらうのに二月だか三月に一回は会ってるし、根っからの飛空船野郎。仕事より空ってバカだ。今の時期ならクルルがいる湖辺りの空を遊覧してるはずだからそう難しくはねーはずだ。

「ジェット機でござるか! わかったでござる。直ぐに創るでござるよ!」

「あ、いや、創っても乗るヤツいねーだろう。サプルは隊商相手の商売で忙しいんだからよ」

「なら、ジェット機に乗れる部下も創るでござるよ。べーどのはそのお方と連絡できる方法をお願いするでござる」

「それなら大丈夫だ。ジェット機の翼に緑色のコーヒーカップの絵を描いとけ。それがオレの印だからよ」

 別に家紋って訳じゃねーが、オレだと知らしめるために公爵に教えたものだ。飛空船って、バカにできねーほど武装している。味方だと示さなければ問答無用で攻撃してくるからな。

「わかったでごさる! バンベル、帰るでごさるよ!」

「はい、主!」

 そのままオレを乗せて帰りそうだったので慌てて馬車から飛び下りた。

 爆走する馬車をしばし茫然と見詰め、バンたちに声を掛けられるまで我を失っていたことに気が付いた。

 ……えーと。オレ知ーらねー。

 公爵家の未来に背を向け、広場へと向かった。 
なにやら1月2月は残業の気配が……。投稿できないときはスンマセン。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ