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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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308/992

308 期待されたりされなかったり

「あ、そー言やぁ薪も運ばなくちゃならんかったっけ」

 朝食を済ませ、じゃあ出掛けるかと家を出たところで思い出した。

 まあ、いつも余分には出してるし、薬代が溜まっているから一月や二月薪を出さなくても支障はないが、平穏無事に村で暮らしたいのなら村人の義務はしっかりと果たしておくことが大事だ。

 人の妬みは怖いもの。だからって他人の目を気にしてびくびく生きることはねーが、あると思って行動した方が対処はしやすいし、味方もいるので孤独になることはねーはずだ。

 なんで、より良いスローライフを送るには地道な努力に信頼の積み重ねが大事って訳よ。

 時間が惜しいので結界で薪を荷車に積み、リファエルに引かせて出発した。

「おはよう、ベー。今日は広場に行かないの?」

 途中、トアラたち山の娘衆の出会った。

「薪を下ろして冒険者ギルドに依頼を出したら行くよ。あ、フェリエが先に行ってると思うからよろしくな」

「え、フェリエ帰ってきたの?」

「ああ。昨日な。詳しいことは本人に聞いてくれ」

 女子トークに巻き込まれる前に予防線を張っておく。

 あとでなと、速やかに退避。置き場へと向かった。

 いつもと変わりなく、薪の置き場にはバルじぃがいて、いつものように居眠りをしていた。

「おう、バルじぃ。薪下ろしにきたぞ」

「ふはぁ? あ、ああ、ベーか。どうした?」

「どうしたかじゃねーよ。薪下ろしにきたに決まってんだろうが。朝から寝惚けてんじゃねーぞ」

「ああ、そうだったな。じゃあ、これな」

 と、割り札を渡された。

「ったく。暇ならなんかやれよ。仕事はいっぱいあんだからよ」

 老人とは言え、動ければ立派な働き手。置き場の管理をしながらする仕事は沢山ある。藁縄作ったり藁籠作ったりと、小遣いぶんの稼ぎには充分になるぞ。

「わしはこうして置き場の管理をしながら居眠りしてるのが幸せなのさ。仕事などしておれんよ」

 怠け者の弁だが、スローライフをしている者にしたら手本のような弁。オレもそんなこと言ってみてーよ。

「そうかい。なら思う存分楽しんでくれや」

「おう、任せろ」

 力強い返事とともに居眠りを再開させるバルじぃに肩を竦め、薪下ろしに掛かる。

 まあ、下ろすのも結界を使用するので五秒で終了。さて、冒険者ギルド(支部)に行きますかと思ったら、集落の方からバンやシバダたちがこちらに向かってくるのが見えた。

「おう、珍しいな。二組が一緒なんて」

 専属と次世代が一緒にできる仕事はねーし、どちらにも適した仕事を依頼している。こうして二組が一緒にいるのは冒険者ギルド(支部)の前くらいだ。

「ああ。渡りの冒険者パーティーがいっぱいきててな、姉御に今日は休みにしなさいって言われたんだよ」

 肩を竦めるバンやシバダたち。

 まあ、休みができてラッキーな世ではない。仕事があってラッキーと思うのがこの時代。ましてや冒険者は働いてなんぼだからな、休みなんて嬉しくもねーさ。

「まあ、休むのも冒険者の仕事。英気を養い明日に備えろだ」

「姉御にも言われたよ。けど、なにもしてねーのに休めねーよ」

 休みを知らない子供たち。って言うかは知らねーが、ド田舎で無邪気に遊んでられるのは五才くらいまで。働けるようになったら毎日が仕事。休みとは体を休ませる意味であり、遊ぶための休みではねーのだ。

 ここで前世の遊びを教えるのもイイが、仕事をするのが生きることとインプットされたこいつらに野球やサッカーを教えても楽しいとか思えるかどうか。だったら剣や弓を訓練がしたいと言うに決まってる。それが遊びを知らない子供たちなんだからよ。

「なら、ちょっと頼みてーことあんだが、イイか? そう難しい頼みじゃねーからよ」

「依頼か?」

「いや、これは冒険者ギルドを通さないオレの頼みだ。だから報酬なしだ」

 これと言った明確なルールはねーが、冒険者を使いたければギルドを通せ、ってなくらいには暗黙の了解はある。だから罰則もねー代わりに制裁がある。だから依頼じゃなく無報酬の頼みとして、冒険者ギルドに文句を言わせないようにする必要があるのだ。まあ、心の中では言ってそうだがな。

「……まあ、ベーの頼みならしょうがねーか。いつも仕事もらってるしな」

「だな。こんなときじゃないと恩返しもできんし」

「うん。ベーの頼みだし、断れないよ」

 心良く引き受けてくれる若者たち。健やかに育ってくれておっちゃん……ではねーが、嬉しいよぉ。

「で、なにしたらイイんだ?」

「まあ、説明はうちにきてからするよ。今から大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。暇だからブラブラしてただけだしな」

 そうだとばかりに全員が頷いた。

 ならと、皆を荷車へと乗せてうちへと戻った。

 うちに戻ると、なにやら見覚えのある馬車が停まっていた。つーか、禍々しいデザイン、エリナの馬車以外なにものでもねーな。

 オレに気が付いたのか、御者席にいたバンベル(執事バージョン)がこちらを振り向き一礼した。

 珍しいなと思いながらエリナの馬車に近付き、よっとばかりにバンベルに挨拶した。

「どーしたい。引きこもりが出てくるなんて?」

「申し訳ありません。突然お邪魔しまして。主がどうしてもベーさまに会いたいと申しまして……」

 なにやら厄介事の臭いがプンプンすっけど、エリナとは一蓮托生。持ちつ持たれつの間柄だ。嫌だからと逃げる訳にはいかねーか。

「わかった。話を聞くよ。だが、ちょっと待ってくれや。こちを済ませるからよ」

「はい。畏まりました」

 バンベルに背を向け、バンたちを牧草地に連れて行く。

「カモーン!」

 なんて呼んだらマジできてくれるお馬さんたち。さすがエリナから生まれたファンタジーだけはある。ノリイイぜい。

「バンたちにはこの馬の散歩に連れてって欲しいんだわ」

「あ、いや、おれたち馬なんか乗れねーよ!」

 まあ、馬は荷車を引くもの。乗るもんじゃねーが、ド田舎の常識。叫ぶのは当然だ。

「そこら辺は大丈夫だ。こいつらは賢いから上手く乗せてくれるよ。お前たちな頼みてーのは野良じゃねーと知らしめるために乗って欲しいんだよ」

 これはうちの馬だと所有権を確かにできる法(手段はある)がない上に、囲いから出たらそれは野良。捕まえた者勝ちになってしまう。それを防ぐためにバンたちに乗ってもらいてーのだ。建前として、な。

 言ったようにこれはねーちゃんらがいなくなった後の村防衛の一環。パトロールをしてもらうためにバンたちに乗馬を覚えさせるのだ。

「まあ、人が乗っていてもバカをするヤツはいるが、そんときは一目散に逃げろ。この馬たちなら捕まることはないからよ」

 ちゃんと結界も纏わせてあるから竜がきても大丈夫だ──とは言えんので、責任はオレにありことを説明して納得させた。

「なら、馬たちと親睦を深めたら散歩を頼むわ。あ、夕方までには戻れな。それまではバンたちの好きにしてイイからよ」

 バンたちに任せ、エリナのところへと戻った。

 やれやれ。期待を裏切らないと言うか、期待通りと言うか、横道に反れるよな、オレの人生ってよ……。

「まあ、期待されてないのが救いだな」

 理解ある幼なじみに感謝である。

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