挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

276/990

276 幸せな日々

 港は今日も静かだった。

 船も数隻しか見て取れず、荷物の積み込みや積み降ろしは一隻もない。会長さんの船は修理で造船所(港の中にある)に入っているので姿はない。親父さんの船はまだあったが。

「赤毛のねーちゃんもいねーか」

 いたら頼もうかと思ったが、いねーなら諦めるか。

 ご隠居さんの指示がよろしいようでアホが寄ってくることはない。ならと腰抜けくんちに行ってみたらなぜか筋肉さんたちに頭を下げられた。

 まあ、だからと言って仲良くする気はないので一瞥しただけで通り過ぎたがな。

 以前、ご隠居さんの後をついてたときの道順で『グレン婆さんの心地好い一時』にやってきた。

「……ちゃんと現実にある店だったんだな……」

 オレはてっきり異次元の狭間にあるか、特定の人にしかわからないものかと思ってたよ。

「しかも繁盛してるとは。人外パネーぜ」

 見た目は蔦に覆われた魔女の家なのだが、意外や意外、オープンテラスがあったり花壇があったりと、なかなかどうしてオシャレであった。

 前回きたときは、緊張してて周りに目を向けられなかったが、こうやって落ち着いて見ると、この『グレン婆さんの心地好い一時』の店の造り、どっかで見たよーな気がするな。

 いやまあ、前世なんだろうし、シャレた店などテレビや雑誌で何度も見てるからそんな感じがするんだろうが、なにかが胸をモヤモヤさせるものがあった。

 答えの出ないことにモンモンしてもしょうがないと、気持ちを切り替えた。

 店の中に入ると、小洒落たマダムやおしゃべり大好きなレディたちで賑わっていた。

 男一人で入るには勇気がいるところだが、悠久の魔女さんに迎えられたら逃げる訳にもいかんだろう。が、なにやってんの、この人外さんは?

「居候の身としては家主にご機嫌を売っておかないとね」

 給仕。またはウェイトレスと言うのだろうか、なぜかメイド姿をする悠久の魔女さん。まったくもって意味がわからんわ!

「ふふ。可愛いでしょう?」

 くるんと、スカートの裾を広げながら一回転した。

 確かに見た目だけなら悠久の魔女さんはキレイだ。年も二十前半に見える。思考の八割を止めたら似合うんじゃね? とも言えなくはないが、相手が人外なだけに下手なことは言えない。思ってもいけない。ここは人生の岐路。生きるか死ぬかの瀬戸際。正しいも正しくもないもありゃしない。女は褒めろ。褒め称えろ。それが真理なのだからな。

「なかなかイイじゃんか」

 強く思えば例え嘘でも真実になる。これもまた真理だ。

「ふふ。ありがとう」

 勝利のカタチはいろいろ。生きている。それが大事なのだ。

「繁盛してんだな。前きたときはガラガラだったのによ」

「そのくらい簡単よ。次元の狭間に招待したんだからね」

 はい。人外パネーですね。わかってますって。

「今日はお茶を飲みに?」

「いや、ご隠居さんに用があってな。いるかい?」

 執事服でウェイターしてたら全力で逃げるがな。

「今は買い物に出てるわ。しばらくすれば帰ってくるから席で待ってて。今、例のものを持ってくるから」

 人外の生活ってどーなってんの? とか思わなくはないが、頭が痛くなりそうだからスルーしておこう。ブライベートは守られるべきだしな、うん。

 などと結論付けして案内された席へと座る───と、世界が静かになった。

 なんでもありが人外だし、ここはグレンばーちゃんの領域。なにが起こっても不思議じゃねーよ。

 人外ならなんでもあり。否定から入るな、だ。

 コトンと音がして、見ればテーブルの上にはカップがあり、中にはイイ薫りのするコーヒーが入っていた。

「お上がり」

 いつの間にかグレンのばーちゃんが目の前にいたが、なんでもありが人外だ。いちいち驚いてはいらんねーよ。

 ここは素直に感謝して頂きます、だ。

「……旨い……」

 多分、幸せを味覚にしたらこうなるんだろうなと思うくらい身にも心にも染み渡った。

「それは良かった」

 今日は消えることなく、開いてるんだか閉じてるんだかわからないら状態でオレを見ていた。

 なぜそこまでオレを贔屓するかはわからないが、グレンばーちゃんの存在は嫌いじゃねー。それどころか心地好さを与えてくれている。

 そこに会話はないが、穏やかで優しい空気は満ちていた。

 ……この懐かしい感じ、久しぶりだな……。

 思い出すは前世。愛した人との幸せな日々だった。




+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ