挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

234/992

234 誘われて

「……えーと、お前らって、オレも入ってんのかい?」

 なんかオレを見て言ってるようだが、気のせいだよね……。

「なにすっ惚けてやがる! テメーに言ってんだよ!」

 気のせいじゃなかった。

「ガルマっとこに飽きたらずうちのもんまで手出しやがって、ナメてんじゃねぇぞ!」

 凄んでくるオヤジにため息が漏れてしまう。

 ……本当にアホしかいねーんだな、この港にはよ……。

「聞いてんのか! このガキ!」

「まったく聞いてねーよ、このアホ」

 つーか、聞きたくもねーわ。

「こっちに用はねーし、テメーらに構ってる暇ねー。消えろ、アホが」

「──────」

 顔を真っ赤にさせて蹴りを入れてくるオヤジ。だが、五トンを持っても平気なオレの体には痛くも痒くもねー。だが、相手は相当痛いだろうて。ほら、悶絶してるよ。

「おいおい、ガキ一人蹴って痛がるなんてどんだけ貧弱なんだよ? 大丈夫か?」

 蹲るオヤジの腕をつかみ、優しく立たせてやる。

「いだだだだだっ!」

 オレの手を払い除けて後退りするもバランスを崩して海にドボン。あっぷあっぷと必死に浮かび上がろうとしていた。

「なんだい、貧弱な上に泳ぎもできねーのかい、マフィアってのは?」

 オヤジの手下に嘲りを送ってやるが、手下はそれどころじゃないようで、オヤジを助けるために二人が飛び込んだ。

 しかし、オヤジを助けることなく、オヤジ同様あっぷあっぷと必死に浮かび上がろうとしている。

 更に二人が飛び込んで同じ結果に。んでまた二人が……もうなんでもイイわ……。

「……行くか……」

 ねーちゃんらに促すと、なにやら青い顔をしていた。

「どーしたん?」

「あ、あんた、なにやってんだい!」

「なんもやってねーが?」

 赤毛のねーちゃんの叫びにオレはニッコリ笑ってやった。

「だっ、いや、あんた───」

「あのアホが勝手に怒って暴力ふるって勝手に痛がって、勝手に海に落ちて、勝手に溺れて、勝手に飛び込んで、また勝手に溺れてる。なあ、そこにオレの入る余地あんのか? オレがなにをしたって言うんだ? なんもしてねーよ」

 いや、してんだが、それをわかるヤツはいねーし、わからさねーようにしてんだがな。ケッケッケッ。

「アホ野郎は勝手に自滅してろだ。行くぞ」

 再度ねーちゃんらを促して港を出───ようとしたら、杖をついた、一見どこにでもいそうな凡庸な顔立ちと気配をしていたが、目だけが異様に強いじーちゃんが道端に立ってこちらを見ていた。

 ……バケモンだな……。

 そう思った、いや、そう感じた。このじーちゃん、この港の王だと……。

「どうしたんだい?」

 自然と立ち止まり、好好爺然としたじーちゃんを見詰めていたようで、ねーちゃんの声で我に返った。

「オッサン。あのじーちゃん、知っているかい?」

 多分、赤毛のねーちゃんは知らねーだろうと思い、オッサンに尋ねた。

「いや、知らんが。あのじぃさんがどうしたんだ?」

 オッサンが知らねーどこか、あの目にも気が付かねーとは、どんだけなんだよ、いったい……。

 このまましててもしょうがねーと、地に根を張りそうな足を無理矢理動かした。

 じーちゃんの二メートル手前で立ち止まり、ありったけの根性総動員してじーちゃんと目を合わせた。

 こちらの意図を見抜いたんだろう、身が凍えるような笑みを浮かべた。

「……オレは、ヴィベルファクフィニーただの村人だ。なんかようかい?」

「なるほど。こりゃ坊どもでは太刀打ちできんさね」

 多分、マフィアのボスらのことを言ってんだろう。見た目で判断したら痛い目にあうレベルだな……。

「おっと、こりゃ失礼した。わしは、ダゼル。ただの隠居じじぃさね」

 まさに突っ込んだら負けな返しだぜ、畜生が。

「なに、とって食いやしないさ。ちょっとあんたと、ヴィベルファクフィニーさんと茶をしたいだけさね」

 有無を言わせねー目だが、こちらにも譲れねー意地がある。挑発的な笑みを浮かべてじーちゃんを牽制する。

「不味い茶ならいらねーぞ」

「もちろん、旨い茶を出すとも。こっちさ」

 背中を向け、歩き出した。

「ねーちゃんらは先に帰ってな。ちょっとあのじーちゃんにお呼ばれされてくるわ」

「ちょっと、いったいなんなんだよ! あのじぃさんがなんだって言うのさ!」

「さーな。わからん。だが、わざわざ誘いにきてくれたんだ、断るのもワリーだろう」

「だから全然わからないっての!」

「まだわからなくてイイよ。ねーちゃんにはまだ毒だ。オッサン。頼むわ」

 あのじーちゃんの目には気が付かなかったが、空気は読めるようで、なにも聞かずわかったと頷いた。

 ねーちゃんがなんか叫んでるが、今は構っている暇はねー。こっちはじーちゃんから放たれる気迫に対抗するので精一杯なんだよ。

 着い行った先は、なにやらちょっとこじゃれた住宅地だった。

 多分、マフィアどもの屋敷街なんだろう、そこはかとなく品がねー。

「趣味ワリーな」

「まったくさね。昔は質素ながらも品のある街だったんだがな」

「古き良き時代か。 老人には黄金の時だったろうさ」

 オレも子供のとき(前世の話ね)は黄金色に輝いていた。だが、年をとるごとに色褪せて行き、妄想に近い昔を見るようになって行ったものだ。

「クックック。まるで百年生きたじじぃみたいなこと言いおる」

「生憎、まだ十一年しか生きてねーよ。そう言うじーちゃんは何年生きてんだよ」

「さてな。九十を越えた頃で忘れたよ。まったく、なかなか死ねんもんだわ……」

「そりゃお気の毒さま。精々長生きして若者に煙たがられろ」

「クク。そうじゃな。こうしておもしろいもんと出会えるんじゃからな。ほれ、ここじゃよ。旨い茶を出すところは」

 そこはまるで魔女でも住んでそうな蔦に絡まれた家だった。

「魔女の老婆がでっかい竃で怪しいもの煮込んでそうだな」

「当たらずとも遠からずじゃな。まあ、旨い茶を出すのは本当さ」

 どうぞとばかりに誘われ、その魔女の家───『グレン婆さんの心地好い一時』と言う、なんだかよくわからんところへと入った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ