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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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228 男の友情に言葉はいらない

書いてたらそんな名言を思い出した。ただ、それだけの話です。
 愚民どものあれやこれやが一段落したのは午後四時を過ぎた頃だった。

 まあ、働いたらのは親父さんらやカラエ、院長さんらで、オレはアドバイスや寺院の広場に穴を掘って連結結界を施しただけ。楽なもんだ。

「ご苦労さん」

 木の下でマン〇ムタイムをしてたオレのところにきた親父さんに労いの言葉を掛けた。

「それは?」

 オレが飲んでいるものに興味があるようで、半分になったカップを覗き込んだ。

「南の大陸で採れるコーヒーってもんさ。飲んで見るかい?」

「ああ。頂こう」

 カップを出してやりポットを傾けて注いでやる。

「苦いなら砂糖と羊乳を加えるとイイぜ」

 小瓶に入った砂糖と羊乳を出してやる。

「……砂糖まで持っているのか……」

「そりゃ砂糖も南の大陸で採れっからな」

 代替え品もなくはないが、集めて加工するよりラーシュからもらった方が量が多いからな、やろうとは思わんのだよ。

「……軽く言うなよ。おれらの苦労が台無しだぜ……」

「まあ、人生なんてそんなもんさ」

 自分の苦労が他人にしたら簡単なことだったなんてこと、よくある話だ。恨んでも仕方がねーよ。って言えんのは今のオレが恵まれているからなんだがな。

「……そう、だな。つまらんことを言った。忘れてくれ」

「聖人君子なんてこの世にいる訳ねーんだ、愚痴や不満を言うのは人として当然のこと。気にすんなだ。ほれ、飲みな」

 カップを差し出し、コーヒーを勧めた。

 苦笑しながらカップを手に取り、香りを嗅いだ。

「……興味をそそられる香りだな……」

 そう言うと、カップを口につけた。

「……苦いが、悪くないないな……」

 どうやら口にあったようだ。ダメなら渋い顔すっからな。

 土魔法で椅子を創ってやり、目で座るように促した。

 オレもカップに手を伸ばし、親父さんにコーヒーを堪能する時間を作ってやる。

「クセになる味だ」

「そりゃ良かった。コーヒーをわかってくれるヤツが少ねーからな」

 コーヒーの粉が詰まった瓶を二つ、くれてやる。ついでに砂糖も。

「体は大丈夫かい?」

 見た目的には元気ハツラツだが、三日やそこらで完全完治するほどオレの薬は優秀じゃねー。結構負担を感じてるはずだ。

「さすが薬師どの。痩せ我慢はお見通しか」

 深いため息を吐くと、疲労が顔に現れた。

「なに、疲れたのは疲れたが、心地よい疲れだ。大丈夫だよ」

 疲労しているだろうに満足気な笑みを浮かべた。

「……腕を無くしたとき、もう終わったと思った。ベーに助けられて仕事を頼まれるだろうとわかっていてもどんな仕事かまではわからない。それでも生きなきゃ娘や仲間が不安がる。意地と義務で笑っていたさ」

 遠い目で語り出した親父さんの声に黙って頷く。自分にも身に覚えがあったから。

「船乗りはもうダメだが、こうしてやり甲斐のある仕事をもらった。心地良い疲労を与えてくれた。礼を言っても言い切れねぇが、ありがとうと頭を下げさてくれ」

「それで気持ち良く働いてくれんなら幾らでも頭を下げたらイイさ。親父さんと知り合え、こうしてオレの代わりに働いてくれてんだ、オレは十二分に大儲けさ」

 正直、金なんてどうにでもできる。オレには土魔法があり、人魚からただ当然で真珠を手に入れているからな。だが、時間や苦労だけはどうにもできねー。

 幾ら友達の頼みだろうが、やりたくねーことはやりたくねー。その苦労もしたくねー。時間だって割きたくねー。オレはオレのために生きてんだからな。

 だから代わりにやってくれる者がいるんなら金なんて幾らでも出すし、気持ち良く働いてくれんならその足にキスだってしてやるさ。

 ましてやこんな優秀でカリスマな親父さんを手に入れていることができたんだ、大儲けと言わずなんて言うんだよ、だ。

「……まったく、嫉妬しっちまうくらい、懐が深い野郎だぜ……」

「そうかい? ただたんにお人好しなだけかもよ」

 まあ、オレはどっちでも構わねーがな。

「だとしたらどれだけ楽なことか。そうじゃねぇから敵わねぇぜ」

 子供っぼく拗ねる親父さんに吹き出してしまう。

「敵わねーのはこっちだぜ。ほんと、親父さんはスゲーな」

 強くて賢くて愛嬌があって、まるで物語に出てくる英雄じゃねーか。自分のモブさを痛感しっちまうぜ。

 ああ、そうか。これは憧れか。こんな英雄になりてーって言う、オレの願望。だが、そんなものにはなれねー嫉妬。つくづく自分は凡人だと認めっちまう。

「だがまあ、そんな人生も悪くねーさ。オレはオレだと言える人生を送っているんだからな」

 強がりじゃねー。心の底からそう思えるんだからよ。

「そうだな。これも悪く───いや、こんな面白いヤツと出会えたんだ、最高の人生だわ」

「フフ。お互いイイ人生でなによりだな」

 カップを掲げると、理解してくれた親父さんもカップを掲げた。

「まったくだ」

 お互いニヤリと笑い、乾杯する。

 男の友情に言葉はいらねー、か。まさしくその通りだな。 
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