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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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189 乾杯

 じいさんんの料理ができるまで船長さんに、船のことや役割を聞かせてもらった。

 前も言ったが、船にロマンを感じる性格じゃなかったので詳しくなかったが、聞くとなかなか高度な技術があったり感心することがあった。

「船、侮ってたわ」

 最新技術が水車かと思ってたが、なかなかどうして船の技術もスゲーわ。しかも、魔道船じゃなくても魔道具が使われており、帆や船体を強化させたり品物を軽くしたりとファンタジーな技術がそこかしこにあるみてーだ。

 まあ、全てが全てスゲーって訳じゃねーが、関心を持てるくらいには見直したぜ。

「船の歴史って長いのか?」

「そうだな。長いって言えば長いな。五百年前には帆船が走ってたらしいからな」

 五百年とはスゲーが、それだけあってまだ帆船なのもスゲーな。まあ、魔道船も発明されたが、今の感じからして大航海時代って感じはしねー。ファンタジーな世界は進化すんのがスゲー遅いんだな……。

「航海ってなにを頼りにしてんだ? やっぱ、太陽の位置や星の位置か?」

「んー。別の大陸に行くなら太陽や星を道しるべにするが、だいたいの船は陸を見て航海してるな。沖に出すぎると海竜やら魚人に襲われたりするからな」

「やっぱ、そーなんだ」

 ファンタジーな海の混沌(デタラメ)は知っていたが、実際に海を仕事場にしている者に聞くと相当な苦労があるよーだ。この辺りも大航海にならねー理由なんだろうな~。

「───おう、待たせたな」

 ドン! とカウンターに湯気立つ料理が置かれた。

「うちの自慢料理、ブラッシナだ」

「…………」

 目の前に出されたブラッシナとやらに言葉が詰まった。

 ブラッシナ。前世の料理に例えるならこれは、パエリアだ。

 この世界にも似たようなもんがあんだなと驚きはしたが、それ以上に驚きなのは米 (のようなもの)があったことだ。

 あんちゃんや冒険者らから聞いたが、米のことは誰も知らなかった。

 まあ、前世から米にそれほど執着や愛着はなかったし、今世は愛情たっぷり味満点の料理を食っていたので米を求めることはなかった。

 なかったのに、こうして目の前にすると、胸を震わせるものがあった。

「……なあ、じいさん。この穀物、なんて言うんだい?」

「ブラッグってんだよ。つーか、これが穀物って知ってんのか?」

「実物を見たのはこれが初めてだが、似たようなものは見たときがあんでな。どこで採れんだい? この大陸ではねーはずだが」

「随分と物知りだな。ああ、これは東の大陸にあるナブリアルって国から流れてきたものさ」

 東の大陸、ね。まあ、この時代風に翻訳すると"東の方"ってことだ。

「これはそのナブリアルってところの料理かい?」

「そこまでわかんのかい。ああ、ナブリアルの、わしの故郷の味さ。冷めねぇうちに食いな」

 そうだな。まずは食うのが礼儀だな。

 前世でパエリアなんて食ったことねーんで同じもんかはわかんねーが、悪くはねー。いや、旨いと言ってイイだろう。

 もちろん、サプルの料理の方がこの何倍も旨いが、なにか心を揺さぶられるものがあった。

「なんつーんだろうな。ナブリアルなんて国、まったく知らねーのに、どうしてだか故郷の味って思えて仕方がねーよ……」

 こんな感覚、今世に生まれて初めてだぜ。やっぱ、米を食ったからそんな感覚に捕らわれたんかね……?

「ふふ。なによりの褒め言葉だな、そりゃ。作り手としちゃあ報われた思いだぜ」

 パエリア───じゃなく、ブラッシナにスプーンを入れ、黙々と口に運び、あっと言う間に完食した。

「ごちそうさまでした」

 旨かった。そう素直に思えるものを久しぶりに食ったぜ。

「ありがとな、じいさん。旨いもん食わしてくれてよ」

「なに、礼を言うのはこっちさ。久しぶりにいい食いっぷりを見せてもらったぜ」

 フフ。じいさんの味に浮気しちまいそーだぜ。

「船長さんもありがとな。こんな旨いもんを出してくれるところに連れてきてくれてよ」

「なんて言っていいかわかんねぇが、まあ、連れてきた甲斐があるってもんさ」

 自分で出会い運とか冗談て言ってたが、マジでオレの出会い運は良さそうだな。

「まあ、ここで酒も出して乾杯したいところだが、まさか十才のガキに出す訳にもしな。残念だよ」

 船長さんのセリフにイイことを思い付き、収納鞄から小樽を出した。

「じいさん。旨いもんを食わしてもらった代金だ、受け取ってくれや」

「……酒、か?」

 酒場の主だけあって小樽がなんであるかわかるらしい。

「ああ。元はエールでな、それを蒸留って方法で違う酒にしたもんだ。味は会長───バーボンド・バジバドルが認めてくれたもんだからな、悪いもんじゃねーと思うぜ。まあ、試しに飲んで見てくれや」

 コップをもらい、そこに魔術で氷を生み出し、蒸留酒を少し注いで水を足す。かき混ぜ棒がないので何度かコップを回し、イイ感じに混ざったらじーちゃんに差し出した。

 不思議そうに蒸留酒を眺めていたが、意を決して口に含んだ。

「──────」

 目をカッと開き、その味に驚いているようだ。

「どんなもんだい?」

「……悪くはねぇ……」

 とだけ口にし、また蒸留酒を見詰めた。

「船長さんも飲んで見るかい?」

 ああと頷いたので同じく作ってやり差し出した。

「……強いくせに、ちゃんと風味がありやがるぜ……」

 まあ、ゲコなオレに酒の味はわからんし、飲んだこともねーが、作り手としては嬉しい言葉だぜ。

「お代わり、もらえるか?」

 いつの間に飲んだのか、じいさんがコップを差し出した。

「あいよ」

 代金に出したもの。オレに否はねーんでお代わりを作ってやる。もちろん、船長さんにもな。

「あ、ちょっと待ってくれや」

 と、ポケットからコーヒー牛(羊)乳を出した。

「オレは酒は呑めねーが、まあ、形だけでも付き合わせてくれ」

 コーヒー牛(羊)乳を掲げた意味を理解してくれた二人はニヤリと笑い、同じくコップを掲げてくれた。

「いい酒に」

 と、じいさん。

「いい料理に」

 と、オレ。

「いい出会いに」

 そして、船長さん。

「「「乾杯!」」」

 これぞまさしくわかり合えた男同士の乾杯である。

 

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