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村人転生~最強のスローライフ 作者:タカハシあん
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165 将来有望な冒険者

「───兄貴!」

 と、食堂に体のガッチリした少年が怒鳴り込んできた。
「カラエル! べーさまがお越しになっているのですよ、静かにしなさい!」

 孤児たちの育ての母だけあってなかなか貫禄のある叱咤である。

「兄貴がきたって言うのに静かにしてられっかよ! 兄貴、久しぶりだな!」

 まるで重戦車のごとく突っ込んできた。

 ……変わんねーな、こいつも……。

「久しぶりだな。つーか、年下に兄貴はねーだろう。べーって呼べよ」

 孤児院きっての悪ガキカラエルは、十……五才だっけ? まあ、オレより年上なのは間違いねー。それで兄貴とか意味わからんわ。

「兄貴は兄貴さ、年齢なんて関係ねーよ」

 いやあるよと突っ込みてーが、三年前に突っ込んでいるので今更だ。

「まあ、なんでもイイわ。好きに呼べや」

 なにか勘違いしたここの奴らになにを言ったところで聞く耳などねー。もう説明すんのもメンドーだわ。

「おう!」

 なにがそんなに嬉しいのかわからんが、愛嬌ある笑顔を見せた。

 ……オレにカツアゲしてきた悪ガキが変われば変わるもんだな……。

「そー言やぁ、カラエルはまだここにいんのか? 確か十五になんだろう?」

 この時代、十五が成人とされるが、実情は働き始めたら子供卒業とされ、税金も責任も求められるのだ。

「ああ。やっと本格的に冒険できるぜ!」

 学のねーヤツはだいたい冒険者を選ぶ。それが生きるための近道であり、生きる希望であるからな。

「一人でやるのか?」

「まさか! 兄貴に仲間の大切さを教えられたからな、ちゃんと仲間を募ったぜ。ってまあ、いつものメンバーなんだけどな」

 孤児院の悪ガキ五人か。まあ、妥当だな。

「冒険者には正式に登録したのか?」

 冒険者ギルドの仮登録は子供のバイトとしての側面もある。十五になってから正式に登録しないと自動的に解約されるのだ。

「ああ。正式に登録したぜ。まあ、装備費稼ぐので手伝い稼ぎしねーとなんねーけどな」

 冒険者ギルドにはタダで登録はできるが、装備は自分持ち。まあ、そんなの当たり前と言えば当たり前なんだが、冒険者やろうとしたら武器や防具、いろんな道具を揃えなくちゃなんねー。

 親が金持ってたり、親のお古なんてものがあればイイが、だいたいの者は一から揃えなくちゃなんねー。ましてや孤児院出身のカラエルらは、その日生きるだけで精一杯だ。手伝いをさせてもらえるだけで幸運であり、安い賃金しかもらえない。

 それで冒険者になるなんて無謀もイイところ。半日もしないで死ぬことだろう。ファンタジー世界、マジ怖ぇとこだぜ。

「お前ら、ちゃんと修行はしてんのか?」

「してるさ! 兄貴に教えてもらった格闘や武器の扱い、体力作りや物の見方、文字や計算だって毎日やってる。仲間たちとの連係や役割分担と、まだまだ足りてねーけど、以前のような無駄には生きてねーぜ!」

「フフ。イイ漢になったじゃねーか」

 輝かんばかりのカラエルの笑顔に、自然と笑みが浮かぶ。

 男が(おとこ)になる姿は見てて気持ちイイもんだな。

「よし! ならオレが装備をくれてやる」

「───マジかよ!?」

「とは言っても初心者用のものだ。イイもんじゃねーぞ」

「それでもありがてーよ! 薬草採取なら受けられるしな!」

 そこで討伐と言わないところが成長したってことだな。

「いや、お前らには野宿を徹底的に覚えてもらう」

「野宿?」

 意味わからんと言った顔になるカラエル。

「そうだ。まずは安全な近場で野宿して見ろ。準備金に銀貨一枚やる。五人で考え、五人でやり抜け。そして、四日連続野宿できたら褒美として銀貨十枚やる。やるか?」

「やるに決まってるじゃねーか!」

 収納鞄から剣や槍、弓矢、通常の投げナイフ、革鎧、小盾、背負い鞄、ポーチ付きベルト、道具一式、薬、解体用のナイフを五本を取り出した。

「それを仲間たちで分けろ。納得行くように、な」

 それも修行だと付け足す。

「それと準備金だ」

 ポケットから銀貨一枚取り出してカラエルに放り投げた。

「イイか。取り返せる失敗ならいくらでも失敗してもイイんだ。ワリーのはその失敗を糧にしねーことだ。勇気を持つ前に知恵を身に付けろ。逃げることを恥と思うな。甘い言葉に惑わされず、厳しい現実に目を向けろ。常に考え、そして、備えろだ」

「ああ! 兄貴の言葉、絶対に忘れねーよ!」

 力強く頷くカラエル。

「じゃあ、行け。時間は金より貴重だぞ」

「おう! またな、兄貴!」

 きたときと同じように出て行った。

 そっと出されたお茶に手を伸ばし、一口飲んで気を静めた。

 落ち着いたところで副院長さんに目を向けた。

「ワリーな、前途有望な若者を焚き付けっちまって」

「カラエルたちが望んだ道です。お気になさらず。いえ、彼らに道を示してくださりありがとうございます」

「それこそ気にすんな。オレの都合でやってることだしな」

 将来有望な冒険者に貸しをつくるのも将来への備え。そして、優秀な人材を運んでくれる護衛には頑張ってもらわんとならんからな。


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