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児童文学、短編集

お誕生日の、筈なのに

作者:糸香
 今日は朝早くに目が覚めた。朝から何をしていても、心がふわふわしてるみたいで。

 そわそわ。そわそわ。

 だって。今日は、私の誕生日。

 台所に居るお母さんに「おはよう」って声を掛けたら

「あら。今日は、早いのね」

 と言われた。おめでとうって言って欲しかったのに…

 リビングのソファーに座るお父さんに「おはよう」と声を掛けたら

「…おはよう」

 と、新聞から顔を上げずに聞き取れ無い声で言われた。

 ……おめでとうって言って欲しかったのに……

 奥の部屋に居るお婆ちゃんなら、おめでとうと言ってくれるはず!

 廊下をドタドタと走って、一番奥の畳の部屋のふすまをバンと開ける。


「…………」

 いない。お婆ちゃん…こんな朝早くから、どこに行っちゃったんだろう……

 ふすまをスッと閉じ、トボトボとリビングに戻る。リビングのドアを開けると

「何やってるの? 早くご飯を食べて、準備をしなさい。お友達が、迎えに来るわよ!」

 怒られてしまった。今日は誕生日だと言うのに……。せっかく良い気持ちで目を覚ましたと言うのに、誰もおめでとうと言ってくれない。

 悲しい気持ちでトーストにイチゴのジャムを塗り付け一口かじる。スクランブルエッグを食べ、ココアを飲み干す。ごちそうさまもそこそこに自分の部屋に引っ込んだ。

 ランドセルの中に昨日怒られながら仕上げた宿題を入れ。音楽で使うリコーダーも入れ。筆箱。折り畳み傘。国語の本とノート。算数の本とノート。理科の本とノートも入れる。よし。忘れ物は無いはず!

「お友達が迎えに来たわよ~。早くしなさ~い」

 お母さんの呼ぶ声がする。

「は~い」

 私は返事をして、ランドセルを背負いカタカタ鳴らしながら玄関に向かった。

 楽しくお喋りして学校に着くと、昨日の放課後に誰かが窓ガラスを割ったらしくて、朝っぱらから先生の雷が落ちた。何もこんな日に雷落とす事無いのに……

 算数と国語は実力テストだった。リコーダーのテストもあった。給食は嫌いな物ばかりだった。

 「は~」

 学校に来てからため息ばかり……。今日は、楽しい‥誕生日の‥筈なのに……

 これを考えるのは、何度目だろう……

 落ち込んだ気持ちで家に帰る。結局、友達も忘れていたのか、誰もおめでとうとは言ってくれなかった…。

 ……悲しい……

 は~とため息を吐きながら、ただいまーと玄関扉を開ける。

「お帰り、遅かったわね。まあ良いわ。今からお使いに行って来てくれる? おばちゃんの家にぼた餅届けて欲しいのよ」

 私の帰りを待ち構えていたお母さんは、そんな事を言い放った。

「えぇぇ~~~?」

 母親が言い終わらない内に、抗議する。

「お婆ちゃん一人で行かせるのは心配だから、着いて行ってちょうだい。良いわね!!」

「………」

 は~~~~

 お母さんにランドセルを渡すと、代わりに紫色の風呂敷に包まれた重箱を持たされる。

 家の中から、ちょこちょこと腰を曲げたお婆ちゃんが出て来る。ゆっくりと靴を履くお婆ちゃんを、玄関の外で待つ。

「気を付けて行ってらっしゃい!」

 ハツラツとした母親の声を聞きながら、行って来ますと重い気持ちで家を出た。

 バスに乗って隣町のおばちゃんの家に向かう。おばちゃんは、お父さんのお姉ちゃんで、お婆ちゃんの子ども。

 お婆ちゃんとバスのシートに座る。

「そう言えば、誕生日だったね。おめでとねぇ」

「……有難う……」

 今日、初めて“おめでとう”と言われたのに、何だか嬉しくない。どうして“そう言えば”なの? 今、思い出したような、何かのついでのような言い方。あんなに“おめでとう”と言って欲しかったのに、何で素直に喜べ無いんだろう。モヤモヤする。

「朝、お婆ちゃんいなかったね。どこ行ってたの?」

「うん。今日は、ゲートボールにおいでって誘われてね」

 ゲートボールって…、お婆ちゃんは腰が悪いから出来ないじゃん!

「出来ないって言ったんだけど、見るだけでもって言われて」

「ふ~ん。そうなんだ…」

「何か、用事でもあったんね?」

「……別に……」

 それから暫くバスに揺られ、おばちゃんの住む近くのバス停で降りた。バス停からは十分位で着く。筈なんだけど、お婆ちゃんは、足腰が悪いから早く歩けない。私は、少しイライラしながら、お婆ちゃんを振り向き振り向き進んだ。

「こんにちは」

「あらいらっしゃい。お母さん、腰大丈夫だった? 言ってくれれば取りに行ったのに」

 ……本当だよ……

「あれ、一緒に来てくれたの? 有難ね。今日は誕生日だね。おめでとう」

「有難う」

 私は、ムッツリした顔で返事を返した。私のそんな態度も気に止めずにおばちゃんとお婆ちゃんは話を始めた。

 ……あぁあ~~、私一人でぼた餅を持って来たら、もっと早く着いて、サッサと渡して、サッサと帰れたのにな~~。後、どれ位かかるんだろう。通された居間で、出して貰ったジュースをストローで啜りながらそんな事を考えた。

 あ~。つまんないな~。せっかくの誕生日なのに、お使いだなんて、本当に今日は付いて無い。

「は~~」

 事の他大きかった溜め息は、おばちゃんにも聞こえていたらしくて

「あら、あら、つい話し込んじゃったわね。退屈だったでしょう?」

「……いいえ……」

「ほんじゃあ、ボチボチ帰ろうかね」

 お婆ちゃんは、ドッコイショと立ち上がった。

 帰りの道は、会社から帰って来たおじちゃんの運転で送ってもらう事に成った。

「お母さんは身体が弱くてね、子どもはのぞめないって言われてたんだけどねぇ。あんたがお腹にいるって分かった時に、自分が死んでも産むんだってきかなくてねぇ…。でも、無事に産まれてくれて、良かったぁ」

 お婆ちゃんは目を細め、私の頭を撫でてくれる。

「でも、あなたを妊娠している間、本当に大変だったのよ。ずっと入院してたもの。産まれた後も、大変だったわね。私も良く手伝いに行ったわ。でも、こんなに大きくなって」

 前の座席から手を伸ばして、おばちゃんも私の頭を撫でてくれた。

 そんな話、初めて聞いた。……そうだったんだ……。お母さんは、命懸けで私を生んでくれたんだ。誰も“おめでとう”と言ってくれないと拗ねていたけど、今日は、私がお母さんに「生んでくれて有難う」って言う日なんだ。

 なんだか、早く家に帰りたくなって、車の座席でソワソワと身体を揺らした。

 早くお母さんに会いたい。早く、生んでくれて有難うって言いたい。まだかまだかと、車の外の景色を眺める。

 やっと家に着いたけど、家の灯りが点いていない。早く会いたいのに、どこに行ってしまったのだろう。逸る気持ちを抑えて、玄関に向かう。ドアを開け、廊下を走り、リビングのドアを開けた。

 パン、パン、パン!

 何かが破裂する音。部屋の中が突然明るく成った。綺麗に飾り付けられた部屋。沢山のご馳走。お父さんとお母さんだけじゃ無くて、友達もいる。

「ハッピー、バースデー!!」

 皆の声が重なる。

「有難う皆。お母さん、私を生んでくれて有難う!」

 私は、今日一番の笑顔でそう言った。









読んで頂き有難うございます!


小学校で、自分が生まれた時の事を調べて来る。と言う授業があります。

出生時の 伸長、体重、お腹にいる時の様子や、産まれた時の様子。産まれた時の親の気持ち。どんな病気に掛かったか? とか、名前の由来など。

訊かれるのも大変ですよね…四人もいると…
忘れていたり…どうだったっけ? みたいな……




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