辻斬り。
それはまだ侍や幕府が存在していた頃、日の国・日本を流れ歩き、無惨に人を斬っていた残酷者達――。
江戸と明治の境目の時代、それらの辻斬りを退治する者達が存在した。
名を、辻斬り払い――
明治の初め、江戸からまた一つ年号が変わった頃。
「はっ!!!」
「ぐぇ……」
バタリと盛大な音を立て、大柄な男がその場に転げ落ちる。
周りの観衆からは、おおっと歓声の声が聞こえる。
男を素手で投げ倒した少女は、手を軽く払い小さく鼻で笑うと、地に伏せ気絶している男に、一言こう言った。
「これでもう、町中で年寄りから金をむしり取ろうなんざ考えないことね」
少女は後ろを振り向き、呆気に取られている白髪の老女に、小さく笑みを漏らした。
「さ、もう大丈夫だ。これからは気をつけるんだよ。行きな」
「あ、ああ……。ありがとよ…」
不意に辺りから、何人もの歓声と、絶えない拍手が聞こえてきた。
突然恥ずかしくなった少女は、足早にその場を立ち去ろうとした。
「ま、待っとくれ…」
老女が少女を呼び止める。
「ん?」
少女は日本人にしては珍しい、濃い蒼色の長髪を靡かせ、振り向いた。
「あんた、一体……」
老女がさも不思議そうに尋ねた。
少女は少し躊躇してから、再び笑う。
「辻斬り払い……。辻斬り払いの神崎 篠だよ」
昔、武士の名家の娘がいた。
彼女は実に大人しく、仲慎ましい両親や使用人に見守られ、元気に育っていった。
しかし、彼女が十三になったその夜、屋敷に辻斬りが現れた。
辻斬りは少女の両親や使用人を次々と斬り殺していった。
「ここに隠れてなさい」
「私達が来るまで、絶対に出てくるんじゃないわよ」 両親は少女を隠れ部屋に隠し、自分達は武家名家らしく勇敢に辻斬りに向かっていった。
そして――…
五年後、篠は辻斬りを一人でも除こうと、辻斬り払いになった。 五年の間、篠は引き取られた親族の道場で、厳しく鍛練された。 そこらの侍にはそうそう負けまい。
「で、本日の依頼は……」
ちなみに、辻斬り払いは裏会ではあるが、職業のため、依頼も受け付けている。
そのシステムこそ未だ明かされてないが…(たまに幕府や新撰組からも依頼がきていたり…)
それはさておき、篠は腰に刺した刀をチャキチャキならし、半眼でその依頼書を眺めた。
「え〜と、深夜江戸の民家に突然現れ、家の者を斬り殺す辻斬り……」
依頼書によると、今までの犠牲者が十人を越えたそうだ。
なかなか厄介そうな……。
その夜、篠はお目当ての辻斬りが集中している民家地を巡回していた。
辺りはしんとしていて、誰もいない。
犬や鳥の鳴き声さえしない。
死んだように冷たかった。
すると。
「キャ――――!!!!」
「!!??」
静寂だった民家地に、甲高い女の悲鳴が轟いた。
「しまった!!!」
篠は悲鳴の聞こえた場所へと急いだ。
女はぐったりと横たわり、失神している。
男は、持っていた刀を抜き、それを振り上げると――
キンッ―――…
「……!?」
辻斬りが闇の中で眉を潜める。
篠はにやりと笑い、相手の刀を薙ぎ払う。
「夜に民家を襲うなんて、いただけないね!!」
篠は刀を相手の腹目掛けて振り払う。
男は間一髪それを避けると、大きく後ろにのけぞった。
篠はそこをつき、高く跳躍し、刀を振り上げ―――
その後、男は通報を受けた新撰組からすぐにお縄となった。
しかし、その通報者は何故か発見されていない。
「さあて、次の依頼は何かな?」
少女は髪を結わい直し、江戸の町を歩き初めた――
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