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38 演出は大事です。





―――客間・テファ


 

 街周りも案外すぐに終わってしまった。って言っても、二か月かかってしまったが。
 皆喜んでくれていたので、うれしかった。
 もう少しすると、わたし達が出る式典があるらしい。なんの式典かは言われていないが、どうやら、民にわたし達をヴィットーリオ・セレヴァレの下のものと位置付けるための式典らしい。
 ナノマシン観測を、見ることしかできないと勘違いしているようで、会話しているのを聞きとったのだ。

「勝負は全て式典の最中かな」
「そうね。わたし達を利用しようとしているわけだし、こっちに利用されたって文句は言えないはずよ」

 ジョゼットちゃんは真剣な面持ちでそう語る。もし、わたし達を公式発表しなくても、下に付いているというふうに振舞えれば、ヴィットーリオ・セレヴァレの支持率は鰻登りだ。だが、そんなこと許すわけにはいかない。こんな国にしてしまうあの教皇を放置など出来ない。

「それで、ジョゼットちゃんはどうすればいいと思う?」
「そうね。まず、教皇がわたし達の敵と皆にわかってもらうのがいいわ。事前に、虚無としての演出を入れれば尚よし」

 わたし達の敵ねー……。

「どうすればいいかな?」
「なら、こんなのはどう?」

 ジョゼットちゃんがわたしの耳に口を近づけ、囁く。
 別に、この部屋は精霊に音の遮断してもらってるから堂々と言ってもいいんだけど……。

 それを聞き、わたしはくすくすと笑ってしまう。

「まるで、兄さんの様な計画ですね」
「だって、わたしお兄ちゃん大好きだもん。お兄ちゃんならどうするかなって思うと、こうなったの」

 確かに兄さんがやりそうな手です。きっと、相手は絶望しますね。味方には優しいけど、敵には残虐な方法。だけど、支持率を下げない方法。

「場所は、此処なんてどう? 一番人が見ていて、伝わりやすそうだし」

 ジョゼットちゃんがPDAを取り出し、わたしにも座標を送ってくれる。

「そうですね。兵士の数も多そうですからちょうどいいです。兵士はわたし達の味方をしてくれるのでしょうか?」
「この方法なら絶対に……」

 もう一度、ジョゼットちゃんがわたしに囁く。
 本当にジョゼットちゃんは悪知恵が働くようです。本当に兄さんみたいですね。

「くすっ、それならどんな兵士だって大丈夫そうね」
「ええ。ですから、わたし達はおもしろおかしく演出を考えましょう。演出で虚無の力を見せつけるのです」

 本当にジョゼットちゃんは面白そうに、ほほ笑みながら喋っています。
 でも、きっと奥底では怒っているのでしょう。この国の現状に。
 だからこそ、このような計画を考えついたんだと思います。ヴィットーリオ・セレヴァレを完全に失脚させ、国を併合出来るように。

「そう言えば、この国を治めるのはわたしらしいです。国と言うか地域でしょうか? 例えば、元アルビオンはテファさん。元ガリアはシャルロット姉様。元ゲルマニアはミラさん。元トリスティンと統括がお兄ちゃんらしいのです。別に住むわけではないのですが、案件などはその国の担当でやってほしいとか。最終的にお兄ちゃんが決定しますけどね。元ゲルマニアなんてミラさんが仕事しないから、お兄ちゃんがやってますね。リーンちゃんは全ての開発や指導だとか」

 そう言えば、最近ほとんどアルビオンの地域からしか案件が回ってきてないと思ったら、そうだったんですね。結局、兄さんが一番大変ですが。枢機卿とかいませんしね。案件以外はリーンちゃんが全部やってくれてますし。慣れればわたしたちも寝ないで出来るとか言ってました。ナノマシンを使ってマルチタスクで一気に作業出来るとか。自分の身体だけだと限界があるんですよね。前に聞いたら、リーンちゃんは常時数千から数万の作業を同時に並列処置してやってるとか。本当にすごい子です。

「さて、わたし達は演出でも考えましょうか?」

 わたしはジョゼットちゃんと、演出を考え始めることに集中する。







―――書室・ウィディス





「うーん」

 早く帰ってこないかな二人……。

「二人と離れて初めて大切さがわかった」
「ご主人様……」

 どうしよう……。

「ミラは仕事しないし。書類がめちゃくちゃ溜まる。帰ってこないとこの国は終わりだ。三ヶ月って言っといてよかった。半年とかだったらマジきつい。あ、ミラなら一年でも行ってていいぞ?」
「ひどすぎる差!」

 実際ミラの場合いないほうが仕事はかどるからな。

 そんな時、部屋のドアがノックされた。

「失礼します。お客様がお見えです。以前、ウィディス様が来たら通せとおっしゃった者です」

 ミルドが部屋に入ってきた。にしても……そろそろかもしれない。
 ミルドの年齢を見るとますます思う。ミルドは結婚してるからいいのだが……。

「なあミルド。元お前の屋敷で働いていた使用人の平均年齢はいくつだ」
「約30でございます」

 結婚の適性年齢はこの世界で23だ。それが30……。

「使用人に連絡回してくれ。やめたい奴はやめろと」
「失礼ですが、それはあまりにも……」
「違うんだミルド。お前は結婚しているから良いかもしれないが。使用人はこのままずっと此処に居た場合。結婚は出来ないだろう。ずっと働くのもいいかもしれないが、家庭の幸せをそろそろ味わってもいいんじゃないか? 男がいる部署に回して出会いをつくってやってもいいし、やめてもいい。ある程度の保証はするから。このまま此処で働かせ続けるのはあまりにもひどいだろう。抜けた使用人の人数はミルドが選んで雇えばいい。有能な使用人が一気に抜けるのは残念だが、一生働かせ続けるのもな……」

 人間は寿命が短い。エリクサー漬けでも150まで生きれたら良い方だ。150まで生きたとしても、老化は着実に訪れる。80歳以降、子供も旦那もいない状態で、介護施設で生きる。そんな生活誰が望むだろうか。うちの使用人は金もあるし、家庭に入れば専業主婦として幸せに生きられるだろう。

「別に、勤務日数減らすのでも構わない。だが、本当に此処には出会いがないんだ。警備は全部無人機だしな」
「わかりました。それならば、連絡をまわしましょう。希望者だけで?」
「それでいい。で、俺の客は客間にいるのか?」
「はい」

 俺はそこで席を立つ。

「お前らは休憩しててもいいからな」

 そういや、ギーシュの野郎全くこねーじゃん。死ねばいいよ。











―――客間




 俺が客間に着くと、既に彼女は座っていた。
 
「ようケティ。久々だな」

 彼女は慌てて立ち上がり、ぺこぺことおじぎをした。
 俺は彼女の前の席に座る。

「緊張しなくていいから座れ」
「あ、はいっ! でも、こう言うの慣れていませんので。い、いえいえ! そうじゃなくて初めてなので」

 随分混乱しているようだ。

「いいから。で、ギーシュからの伝言聞いて来たんだろ?」
「はい。開発部にわたしを推薦してくれると」
「まあ、そうだ」

 使用人に、紅茶をもらい、そのまま下がらせる。

「あの……一応ケーキを作ってきたのですが……。皇帝陛下のお口に合うかどうか」

 上目づかいで不安そうに、キレイな箱を取り出す。
 もう一度使用人を呼び、ケーキナイフと皿を頼む。

「慣れてないなら前と同じ呼び方でいい。俺はおいしいかおいしくないかと言うより、売れるか売れないかで客観的に判断するからな。今は売れなくても、先が見込めればいい」

 箱から取り出すと、メレンゲ生地の上に、輝くフルーツが多種乗っていた。
 使用人から受け取ったケーキナイフで半分に切ると、四層に分かれており。メレンゲ生地、イチゴが入った生クリーム。イチゴムース。メレンゲ生地。見た目は悪くない。

「使用人にも評価してもらうからお前らも食べろ」
「はい」

 切り分けてもらい、皿を受け取る。
 ケティはめちゃくちゃ不安そうだ。それを見ると軽く笑ってしまう。
 まず、いっそう一層食べ。最後に縦に全てを一回で食べる。

「ふむ……。見た目は合格。味は……少し甘すぎるな。紅茶と一緒に食べると、甘すぎるように感じる。食べ過ぎると胸やけ起こすかもしれない」

 ケティは甘い方が好きなのだろう。水と一緒ならいいかもしれないが、紅茶と一緒だときついな。コーヒーと一緒だったら死ぬかもしれん。

「お前たちはどうだ」
「そうですね……おいしいはおいしいですが。生クリームの層が厚いです。もう一段、クッキー生地がほしいかもしれません。フォークで縦に切り裂くと、一気に崩れてしまいますし。大量の生クリームのせいで、食べ過ぎると気持ち悪くなりそうです」

 ミルフィーユのようなものか。

「そうですか……」

 ケティが涙ぐむが。

「いや、合格だ。確かにまだまだだが、本来開発部でも、数人でだんだんといい出来にしていく。一人で此処まで出来たら大したものだ。後は、改良を加えて行くことだな。そうすれば、原案はお前として売り出せるだろう。売り出して売れれば、お前に発案者として一定のバックがあるから。若いうちにたくさん作っておけば。老後も、勝手に金が入ってくる」
「本当ですかっ!?」

 どこの部分……と聞きたいが、多分店にケーキを出せることがうれしいのだろう。

「そうだな。とりあえず、働いてもらうのは好きな時でいいから。職場見学に行くか?」
「はいっ! 是非!」

 顔を輝かせて身を乗り出す。
 まあ、食材がいくらでも支給されるし、最先端の技術も使えるから。うれしいのだろう。

「んじゃ、ついてこい」
「はいっ!」

 俺は窓際に近づいていく。

「あの……殺人?」
「アホか! 遠いんだよ。だから、馬車とかじゃ行く気が起きない」

 俺は窓を開け、エアライドを呼ぶ。
 その上に飛び乗り、ケティを風で手元に引き寄せる。
 俺達ナノマシンと違い、ケティは足場を固定出来ないから、俺につかまってないと堕ちるだろう。

「あ、あの。すごく怖いのですが……」
「あーそうだな。俺に抱きついとけ。じゃないと堕ちる。王族しか乗れないから、ケティにまで補助が行かないんだ」

 ギュっと抱きついて、顔を真っ赤にする。
 うむー……ギーシュに聞いていたが、多分ケティは俺が好きだ。でも、前と違い、今は王族と元貴族。手が届かないのだろう。告白されても断るけど。

「じゃーいくぞ?」
「はいっ! って、 え? ひゃぁぁぁぁああああああ!?」

 一応風は防いでいるが、速度的には音速。死ぬことはなくても怖いのだろう。普通だったら風圧で死ぬ。








―――開発部。



 俺達は建物の前で、着地する。

「はー、大きなお屋敷ですね」
「屋敷じゃない。ここが開発部、和洋菓子専門だ」
「え? ええ!? こんな立派なお屋敷が!?」

 見た目はそうなのだが。もくもくと煙が出てるし、大きな搬入口がある。
 ケティを連れて、中に入る。

 入って靴などを履き替える部屋を出ると、そこは真っ白な部屋。

「あ、あのっ? 何を? くすぐったいし、恥ずかしいのですか?」
「ああ。髪の中のゴミはとれないからな。まあ、普段は最初に風呂に入ってもらうんだが。めんどくさいから今日はとってる」

 俺は丁寧についたゴミをとってゆく。ふむ。フケもないし油もついてない。化粧もしてないようだし大丈夫か。
 ケティは気持ちよさそうにしてるが。

「で、まず部屋を順番に回ってくからついてこい」
「はいっ!」

 この部屋は除菌室でもある。スペースが区切られ、最初に順番に通らなくてはいけない。

「わふっ!?」
「ああ、最初は風でほこりを飛ばす。まあ、髪の間とかはとれないけどな」

 上下左右からかなりの風圧の風で吹き飛ばす部屋だ。
 そして、次の部屋。

「ひゃえっ!?」
「ミストって言うか、薬を散布してる部屋だ。ここで、身体の病気とか汚れを取る」

 まあ、設置されてる風呂が、万能薬を溶かした風呂だし。そのあとに、此処で万能薬のミスト。ちょっと臭いがきつい。

「んで、自分で手にそこの殺菌薬を付けて終了」

 ケティはキレイに手にそれをつけてもみ込む。爪は深く切られているようだから大丈夫だな。

「さて、部屋は終わり。此処は開発部だから、好きな大きさや柄のエプロンを申請すれば支給される。マスクは必要だがな。次の場所で販売が決まったものは量産するんだが、そこではかっぽう着だ。此処よりも厳重に殺菌しないといけない部署だ」
「ほふー……。すごいですね。いつもはエプロンだけでしたから」
「まあな。人に食べてもらうんだ。衛生面は自分用以上に大事だろ?」
「はいっ!」

 うむ。えらいな。
 俺とケティは予備でおいてあるエプロンをつけて、マスク装着。
 何故かケティはじっとこちらを見ていた。

「どうした?」
「……えっと。似合いますよ? 花柄……あふっ!?」

 俺は頭を軽くたたいてやる。
 痛そうに撫でているが、黙れ。

「そんな気遣いいらん。俺は開発部じゃないんだしな。お前は相変わらずケーキが乗ってる絵柄か」
「自分で使ってるのもこんな感じなので」

 前に見たから知ってるが。

 そのまま俺達は中に入る。

「あ、陛下ーーー! 発見! またかわいい女の子連れてるーー!」

 一人の女性がこちらに近づいてきた。緑色の髪の20代前半の女性だ。
 実は彼女。こんなでもかなり有能だ。

「黙れっつの。お前は相変わらずだな」
「あ、こんにちわ。わたしはルル・ド・セレスティ」
「無視かよ……」

 ケテイはあたふたとしているが、やがてペコリと腰を折った。

「ケティ・ド・ラ・ロッタです」

 よく出来た娘さんだーとか言ってるが、まじオヤジ臭い。

「あー、ケティ。こいつはこんなんでも此処の部長だ。三日に一回くらい新作作るからめちゃくちゃ有能ではある。性格は屑だが」
「照れるよ陛下ー」

 俺の脇腹を肘で突っつきやがるが、まあいい。

「性格は屑だって言ってんだろ」
「あ、ケティちゃんも此処で働くの?」
「都合の悪いところは無視かよ……」

 ケティは俺をじっと見つめるが。言いたいことはわかる。

「ウィディスさんって陛下?」
「まあ、気軽にって最初言ったら、コイツはこんなんになった。別に俺はこれでもいいと思う」
「はなしがわかるねー」
「黙れ屑!」
「あ、そう言えば新作あるからケティちゃん食べる? まだ販売してないよ?」
「また無視かよ」

 ケティは俺に視線を移すが、こんなことでいちいち聞かなくていい。

「此処はな、出来たらまず開発部全員で試食し、9割以上販売に賛成しないと売り出せない。だから、食べることも仕事なんだ。気使わなくていいからまずかったらまずいって言え。出来ればどうすればよくなるとか言ってやれればいい。そうやって、どんどん改良していいものにしていくんだ」

 ケティは感心したような顔をし、

「一つもらっていいですか?」
「どうぞどうぞー」

 ルルがケティに皿ごと一つわたし、食べる姿を見つめる。
 いつもはふざけてるが、このときだけは真剣そのものだ。ずっとふざけてたらとっくに解雇だ。

「あ……おいしい」
「でしょー! 自信作!」
「あ、でもグレープフルーツか何かほしいかも。盛りつけのフルーツが全部甘い方に偏ってて、少ししつこいです」
「ほー、なかなか有能な新人さんです!」

 ルルはさっそくメモを取り出し、書き始める。

「ふむ、ってことは、レモンでも……いやそれだと……あ、なら」
「あ、あの?」
「諦めろケティ。こいつはふざけてるが、開発になると自分の世界に入り込む。しばらく戻ってこないから先行くぞ」
「そうなんですか……すごいですね」

 憧れの様な眼でみつめているが、そんな大層な人物ではないぞこいつは?
 そのまま、ケティを配属するであろう場所に移動する。


『いらっしゃいませ陛下!』

 元気な女性達が一斉に頭を下げて挨拶してくれる。皆年は25歳くらいまでだ。

「お邪魔するよ。此処で新しく働く子を連れてきた。いじめるなよ?」

 俺はニヤリと言ってやる。

「わかってますよ。陛下が連れて来た子なんだから有能なんでしょ?」
「そうだな。ルルが有能だねーって言ってたぞ?」
「ルルさんがそう言うなら有能ですねーはじめまして」
「あ、あの。ケティ・ド・ラ・ロッタです」

 ぺこぺことおじぎするケティを見つめ、全員が固まる。

『か、かわいいいーーーーー!』

 どうやら問題なさそうだな。すぐに自己紹介はじめてるし。話題がお菓子のことばっかりだが。

「陛下陛下! もうケティちゃんに手出しちゃったんですか?」
「してねーよ! よし! お前一週間以内に新作出せなかったら減給な? ジャンルは和菓子」
「横暴っ! しかも和は苦手……」

 さめざめと泣き真似をする女は放っておこう。
 ケティは真っ赤になってるし……。

「んー、でケティこっちだ。此処が今日からお前が使う台かな。開発部は、10人で一室にしている。一人一室でもいいんだが、意見を出し合いながらのほうが進むからってことだ。今はこの部屋8人しかいないけどな。全部屋ベテラン、中堅、新人で構成されてるから。まあ、この部屋は新人はケティしか居ないんだけど。ベテランが多いから色々教えてもらうといいだろう」
「が、がんばりますっ!」

 新人ばっかりでまとめると、出来あがってもショボイものになってしまう。全部屋フレンドリーだが、上下関係は大事なのだ。生活での上下関係でなく、教える側と教えられる側ってことでだ。こうして、新人を育ててゆく。

 ケティは目を輝かせて包丁などを確認している。

「こ、これわたしが使っちゃってもいいんですか!? 見たこともないものがたくさんあります!」
「ああ。足りないものがあったら注文しておけ。食材だが、必要なものは一週間前に数などを注文する。次の週になると一気に来るから。この部屋の倉庫に一週間分を貯める。最初は数がわからないだろうから、多めに注文するといい。別に、給料から引き抜かれるわけじゃないからな」

 口を軽く開き、笑顔でコクコクとうなずく。

「一応この屋敷の上の階に全員住んでるんだが、家に毎日帰るのか? 馬じゃ大変だとおもうが……? てか、トリスティンじゃ帰れない」
「あ、それは大丈夫です。お父さんとお母さんは陛下の推薦だって言ったら、涙を流して喜んでました。だから、此処にすみます」
「そうか、話はとおしておこう。今は冬期休暇だろ? 卒業してから働くのか?」
「いえ、さすがにあと2年も待てないので、すぐにでも」
「ふむ。じゃあ、此処で働いている間は就職研修中ってことにしておこう。それなら卒業したことになるし。俺が連絡入れといてやるから」
「あ、ありがとうございますっ!」

 ぺこりとお辞儀をするが、実際他の場所でも就職研修はあるからな。

「給料は普通に払われるし、社員扱いだから。ちゃんと、ミラグループ系列店では割引も受けられる」
「陛下ー。そもそもミラグループ以外ってあるんですか?」
「んー。傭兵とか?」
「傭兵を雇うことなんてありませんよね……?」

 まあそうだな。希望があれば、警備用ロボットを護衛に着かせることもできるし。

「それはともかく。ケティは今週。他の人たちでも見学して、機材の使い方とか覚えておけ。受注の仕方も聞いて、来週使う材料も頼んでおくように。遠慮なく聞けよ? じゃないと覚えないから。部屋はルルにでも聞いてくれ。とりあえず俺は帰る。学院への連絡とかすることもあるし」
「あ、何から何まですみません」
「気にするな、じゃあな」

 さーて。帰って書類も嫌だしどっか寄っていくかな。












―――屋敷の庭





「おお、可愛いなこいつら。結構増えたなー」
『そうですねー、陛下。襲ってくる人間にも、食べ物に困ることも無くなったので、安心して作れます』

 俺の目の前に居るのは韻竜の子供たちがたくさん。
 じゃれて遊んだりしている。
 交代で成韻竜が子供たちを世話しているのだ。
 色が違うことから、違う韻竜の子供も見ているのだろう。

「まあ、その分働いてもらってるしな。トラックの輸送より早いからありがたい」
『ふふ、ありがとうございます』

 韻竜は400匹くらい成竜がいまいる。世界中探してこれだけだ。水韻竜なんて海の中で暮らしてたから伝説なのだろう。風韻竜は幻獣の森の様な場所。火韻竜は火山の火口の中。土韻竜は地下深く。そりゃ伝説にもなるわけだ。
 ってことで、仕事をさせる代わりに、俺が保護しているのだ。今では人間の姿になって町中で遊んでる韻竜もいる。
 竜の姿でなければ、食費もさほどかからないのだ。普通に社員扱いである。

『くぁー、くあっ』
「ん?」

 一メイルほどの水韻竜が俺の近くに寄ってきた。

『あら? お腹がすいたらしいわ。お魚が食べたいって』

 ふむ。リーンにマグロでも転送してもらうか。
 すぐに転送され、びちびちと跳ねる大きなマグロが韻竜の前に現れる。

『かうっ!』

 子供なのにするどい爪で、マグロの頭を切断した……。
 韻竜は子供でもすごいな……。

「食べ方は子供っぽくないな」
『赤ちゃんでも竜ですもの』

 すごい勢いでかぷかぷと食べてゆく。血が庭に……。あとで、親役の韻竜が精霊魔法で消してくれるだろうけど。

「あ、そういえば。韻竜と人間のハーフ作った奴いないか?」
『さすがにそこまではいませんね。わたし達は人間の区別が出来ませんので』

 俺が黒人の区別が難しいのと同じようなものか。

『最低でも、区別が出来るような人間でないと……その点なら陛下は大丈夫ですね』
「ん?」
『魔力の大きさも、周りにいる精霊も、身体も人間とは違いますし、すぐにわかります。韻竜よりも見わけがつきやすいですよ? 陛下とならって子もいますよ』

 竜にモテるってのもな……。

『わたしもまだ、子供いませんから大丈夫ですよ? くすっ』
「んー。気が向いたらな。俺ってそんな区別着くか?」
『ええ。陛下、シャルロット様、ミラ様、テファ様、ジョゼット様、リーン様はすぐにわかります。精霊や自然に好かれていますもの』

 ああ。ナノマシンだからだな。世界全ての様なものだ。多分、知能がある生物ならある程度わかるのだろう。人間は直感が悪すぎるから無理だけどな。

「そっか。だから韻竜は人に平等なんだな。好いてもいないし、嫌ってもいない」
『わかりませんからね。陛下達のことは皆好きですよ?』
「はは、ありがと。俺は行くわ。元気に育てよ? お前ら」

 俺は韻竜の子供の頭を撫でてやる。

『くあっくぅ!』

 嬉しそうに鳴く子供に背を向け、書類地獄に俺は舞い戻る。
最近夢で蛇に襲われまくってます。
毒蛇とか普通のとか禍々しいのとか。
すぐに目が覚めて最悪です。蛇怖すぎる。
縁起がいいって言う白い蛇が出てきたことなんてありませんよ。
二日に一回くらい蛇出てくるとか最悪です。


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