28 第二計画の土台作り。
―――自領の屋敷・庭
あの後、アンリエッタ王女が女王に即位した。
強大なアルビオン軍を破った強き王ってことで担ぎあげられたのだ。
良い意味では国の希望。悪い意味では操り人形。
才人はシュバリエの爵位をもらったっぽい。
原作だとかなり後のはずだが……名乗ったおかげなのか知らないが、才人の戦果が周知の事実となり、国の英雄となった。
ついでに、この時期に新しく水精霊騎士隊ってのが出来て、才人はそこの副隊長になった。
隊長はギーシュに譲ったとか。
とりあえず才人は、死亡フラグが立ったことに気付くべきだ。
才人は一人であの戦艦を落とすことが出来るってことでなったのだ。
つまり、厄介事が舞い込んでくる。
十中八九このままだと戦死する。
かわいそうだが、仕方ない。さようなら才人。また会う日まで。
で、今は夏季休暇なので屋敷に帰省している。
久々なのでうれしい。
だってさ――
「あー、コラトレンタくん! 服の中にもぐろうとするなって!」
癒されるー。なんてかわいいんだよコイツ!
こいつが人間だったら結婚してるね!
いや、人間じゃだめだ! だからこそいいのだ!
「ご主人様ー、このピンクブルーのがかわいいですよー」
ミラはペンギンと遊んでいるが、ピンクブルーってどんな色だ。
適当に色を組み合わせて名前にしたんだろ。
「最近生まれた白クマのあかちゃんかわいいー」
テファはちいさな白クマをもふもふしている。
タバサはシルフィードを背にして本を読んでいるようだ。
そう言えば、才人は貴族となったが、夏休みはシエスタの村に行っているようだ。
まあ、学院時からシエスタとはやりまくってたから、自宅でも厭らしい過ごし方をするだろう。
キュルケが付いて行ったのが不安だが。
「ウィディス様。お客様がお見えになっております」
背後からミルドの声が聞こえた。
「あー? 今日は誰とも予定入ってないぞ? ゲルマニア皇帝は俺から行くってことになってるし、ミック取り仕切ってるセバスチャンとの会議だってもうちょい先のはずだが? ってことで帰ってもらえ」
俺の幸せは誰にも邪魔させない!
「しかし、学院の――」
「今度こそ俺の知り合いなんていない! ギーシュと才人以外は知り合いなんていない!」
仲いい奴なんて誰もいないしなー。寂しくはないぞ? わずらわしいし。
「ご学友の親御さんが……」
親御さんかよ!
俺が振り返ると、二人の夫婦が土下座していた。
なにこのデジャビュー?
「誰……?」
俺は失礼になりそうなので、トレンタくんを置き、代わりに隣に居たジョゼットを引き寄せた。
胡坐をかいていたので、その上にジョゼットを乗せる。
不思議そうにこちらを見ていたが、頭をなでてやると気持ちよさそうにしている。
「この度、我が娘がしたこと。本当に申し訳ございませんでした」
む? 誰この口髭と鼻下の髭がご立派な金髪は。
モノクルまで掛けてるし。
隣のピンク髪の女。目きっつ! こわっ! 絶対にお近づきになりたくない!
「いえいえ、全然許しますので。もうホント許すんで帰ってください! もう迅速に早急に!」
ホント帰ってほしい。絶対厄介なことになる!
「いえ! これで許してもらおうなど考えておりません! 是非あなたの父君にも謝らなくては!」
ガバっと二人が顔を上げた。
「いえ、もうホント帰ってください! てか父親が出てくる意味がわかりません!」
何故か敬語になるが仕方ない、威圧感半端ない! てかマジカエレ!
「……」
無言になったよ! 絶対何か考えてるこの人ーー!
てか名前言え!
「で、あんたら誰さ?」
「私はラ・ヴァリエール公爵でございます」
「わたくしはカリーヌ・デジレ」
いやーーー! マジお帰り下さい!
「わたくしはエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール」
「わたしはカトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ」
顔を上げると、車いすに乗せられた女性と、それを押してる女性。エレオノールって方目きっつ!
後から来たのは、車椅子手配してもらったからか。うちの領にしかないし。
カトレアって方は、どうやったらこの家族から生まれるんだってくらい温和そうだが。
てか、家名違うやん! 領地与えられてるってことか。
そもそも、何で家族全員そろってるんだよ!
「えーっと、とりあえずラ・ヴァリエール家全員そろって何?」
「ですから弁解を」
「弁解はいいっての。つまり、あそこに居た全員に弁解して回ってるの?」
「……」
ぜってー、俺のとこだけだコイツ!
「そもそもですね。もう三女とは縁を切ったのですから関係ないはずですが?」
「……」
もうカエレ!
「で、俺の父親に会いたいと? てか、弁解じゃなくてそっち理由ですよね?」
「……おっしゃる通りで」
これ、タバサと同じじゃね?
「まあ、なんとなくわかるけどさ」
俺はジョゼットを横に移動し、立ち上がる。そしてカトレアに近づく。
「何を……?」
「ちょっとエレオノールさんだっけ? 退いてくれ。別に変な事しねーから」
素直に頷いてくれるが、変なことしたらマジ切られそう。
カトレアの背中に触ってみる。一部の水の流れがおかしいから多分。
ふむ。脊髄に空洞が出来て、水がたまってるな。運動神経細胞も少し侵されてるか。
俺はナノマシンと水の精霊を使って調べる。
「カトレアさんだっけ? 熱いとか、冷たいとかだんだん感じなくなったりしてきたか?」
「あ、はい。昔に比べると鈍くなっているかも知れないわ」
もしかしたら……。
「何っ!? カトレア本当なのか!?」
「ちょっと黙れ! 診察中だ」
うるさくて集中できないっつの。
「指の感覚は? あと、足が不自由になったり」
「指の先の感覚はあまり……足はあまり歩かないので」
「何故言わなかったカトレア!?」
「黙れっての! あんたらに心配かけねーようにするためだろうが! 少しは娘の気持ち考えとけ! そしてうるさいっつの!」
マジでうるせーんだよコイツら。そんなの家でやれ。追い出すぞ屑が。
「ま、とりあえず病名はわかった。『脊髄空洞症』だな。今はまだ狭い範囲の感触がなくなってるだけ。多分、針とか刺しても全く感じない。服とかの感触は残ってるから気付かないが、熱とか寒さが感じなくなってるから確実だ。んで、指先の神経が腐りかけてる。このままいけば徐々に感覚は消える。ついで、神経が圧迫されて運動障害。歩行が不自由になり、いずれ動かなくなる。これが症状だな」
これは間違っていない。治療するかはわからないが、一応正しい。
普通菌が入ってなるのだが、これは先天的かもしれないので、万能薬では治すことは不可能。健康な状態を知らない身体では無理なのだ。万能薬を使うには、一度健康な状態に戻さないといけない。
まあ、うちの屋敷の医療施設なら癌だって治せる。なんせ三万年も先の技術が使われてるわけだしな。その分機密性が高いので、治すか迷う。
「な、なぜ君はそれがわかるのだ?」
「わかるさ。ミラグループ代表嘗めるなっつの。診断と調合は俺の仕事だろうが」
「「「は?」」」
カトレア以外はぽかんとした。
やっぱコイツらもかよ……。
俺はタバサの方を見る、こちらを向いていたが、フイっと顔をそむける。
「失礼ですが……それは父君では?」
「俺には父親なんていない。俺自身がウィディス・ラ・リバルスティン・ヴィ・リヤスティ侯爵だ。ミラグループ代表でもある。ハァ……コレ前に誰かにも言ったよな」
チラリとタバサを見るが、サッと視線をずらされた。
「あとな。言っておくがこの病気が進行したのお前たちのせいでもあるんだぞ?」
「それはどういう……」
わかってねーなコイツら……。
「まず、脊髄空洞症。これは此処の」
俺はカトレアの背中の骨を下からすくい上げるように指で撫で上げる。
「ひゃっ!?」
やめてくれこの場にいるミラヤテファ、ミルドまでじとっとした目を向けてくるだろうが。
「今俺が触ったところの骨あるだろ? 背骨って言うんだが。これの中に脊髄ってのがある。その空洞がだんだんと広がっていくものだ。これが病気なのだが、これだけなら症状は出ない。ただ、この中に水が入って神経を圧迫するんだ。それで症状が大きくなってゆく。わかるか?」
俺は公爵を見つめる。
「つまり?」
「水の魔法で身体いじくったろ? それで水がかなり入りこんじまってる。広がって水を一杯まで入れる。それでまた広がって更に水を入れる。それをやったのはあんたらじゃないのか? かなり広がってるから、下手したら死ぬぞ?」
全員が息を飲むが事実だ。
普通だったらありえない現象。魔法――それか無理に注入して悪化させないとこうはならない。こんなこと続けてたら死期を早めるってか作ってるだけだ。
ヴァリエール公爵は膝をついて茫然とした。
「そんな……ワシが娘を治そうと思って高価な水の秘薬や、高名な水メイジにやらせていたことが……逆に娘を苦しめていた……と」
「その通りだ。確かに。空洞が水で満たされれば一瞬楽になるだろう。だが、空洞が広がったあとさらなる症状が出る。それでまた埋めれば楽になって更につらく。それで最終的に死に至る」
はぁ……広がっちまったから水抜いたって意味ないし。完全な治療しないと行けないな。
やるかわからんが。
「お父様、別に私は気にしてないわ。だって、お父様は良かれと思ってやったことですもの。それに、私も納得して治療を受けていたわ。だからいいの」
そう言ってカトレアはほほ笑む。
「カトレア……すまない。私が早くに気付かなかったばっかりに」
「んー。気付かないのも仕方ない。本人だって気付かないって言うかだな。気付いたって治せる奴がいないんだよコレは」
医療って分野が水メイジしかないからな。怪我は治せるが病気は治せないんだよこの世界。魔法が便利すぎて文明が屑すぎる。
「で、ではカトレアは……」
ヴァリエール公爵はカトレアを見つめる。
カトレアはさびしそうに笑うだけだ。
「ん? 別に俺なら治せるぞ? ただ、お前の近くに治せる奴が居なかったってだけだ。近くって言うか俺以外に? この屋敷の中の医療技術でしか治せないな」
「「「「へ?」」」」
おお、今度はカトレアも変な声上げた。
「んー、そうだな。時間はかかるが治せないこともない。ただ、此処までなってると手術かな……、何もしなかったら薬だけで大丈夫だったんだが」
てか、何もしなかったら死ぬなんてこと絶対なかった病気だ。変な事するから病気がおかしなものになったのだ。
たいしたことないはずなのだ。
発病したのだって本当に先天的だがはわからん。傷を負ってそこから菌が入るのが普通だし。普通20歳くらいからかかる病気なのだ。運が良ければ万能薬でも治療可能。幼少の頃にかかったのならばだが。手っ取り早いのがナノマシンにしてしまえば勝手に治るのだが、するつもりなんてないしな。
「頼む! 金ならいくらでも払う! ワシはこれ以上娘を失いたくないのだ!」
俺の前に公爵は土下座してきた。
やっぱ平気なふりしてるけどルイズを失ったのは痛いか。
「うーん。金はいらないんだよな……。どんな条件にするかなー……ヴァリエール公爵に出来ることって言われても何があるか……」
「アナタ随分とした言いようね! たかが侯爵が偉そうに――つッ!?」
エレオノールが杖を持った瞬間、俺はアルテマウェポンを首に突き付けた。
更に、ミラとテファが左右から首にピタリとブレードを押し付ける。
動いた瞬間バッサリだ。
「カトレアさんは温和な方ですが、貴方は随分とルイズと似た性格をしているのですねエレオノールさん。言っておくが、俺達は『冥府の番人』の師でもあるのですよ? どのクラスだか知らないが、スクエア程度の実力で脅せるなんて思わないでほしい。冥府の番人5万人、俺達一人で殲滅出来ると言うことをお忘れなく」
そして、俺達は剣やブレードを離す。
「まあ、治さないわけじゃないんですよ。ただ、俺は王族だろうとなんだろうとお金以外の条件を突き付けているんで、何にしようかなと……。あとエレオノールさんは杖をしまったほうがいいですよ次はありません。ヴァリエール公爵が娘をもう一人失って悲しみますから」
やばい、実際何も思いつかない。ブレード突き付けたのは条件反射だしなー……。
ん、待てよ? こいつは娘のことかなり考えてたはずだな。それを利用すれば
「テファ、ミラ。二人はリーン呼んできてカトレアさんの精密検査。んで、治療する場合どのようなことするか俺に連絡。まだ治療するつもりはないけどさ。エレオノールさんも付いていっていいよ。妹さんが心配だと思うし」
エレオノールさんの目がキラリと光った気がする。
「あ、エレオノールさん。うちの物をやたら分解とかしない方がいいよ。壊れたら貴女が一生働いても返せない負積負うことになるから。うちのはマジックアイテムじゃないから魔力なんて通ってないし。此処はトリスティンじゃないから、王立魔法研究所の命令なんて聞けないからね?」
はっきりいってエレオノールって人と、カリーヌってのには帰ってほしい。マジ苦手。
「でも、ご主人様。護衛は?」
「護衛ってこの二人なら危なくならないし。簡単に殺せるし。俺達の動きを視認すら出来ないんじゃないか? さっきのだって気付きもしなかったし」
そもそも、通常移動だって俺達はオートヘイストがかかっている。更に、やろうと思えば何回だって転移出来るのだ。
で、カトレアさんが連れられて移動してるんだが……。
「後ろのソレなにさ?」
カトレアさんが俺の言葉に後ろを振り向き、気付く。
「ええ、これはわたしのお友達ですの。皆付いてきたいって言ったので」
まあ、別にいいけどさ。うちの動物に比べれば少ないし。
「まあ、いいけど。医療――病気治すところに入るわけだから、動物は外で待っててもらえ。うちの動物達と遊ばせとけ」
コクリとうなずき、動物に何か言い聞かせている。
スゲー……話せるのかコイツ?
「じゃ、ヴァリエール公爵と公爵夫人は話があるので、応接室に来てくれ」
さーて。いっそ裏をかいてみるか。
―――応接室
二人を応接室に案内し、対面に座らせる。
何やらキョロキョロしているが……。
「屋敷もそうだが、立派な部屋だな」
「ああ、一応ミラグループ代表の屋敷だしな」
さてさて。
「飲み物は紅茶で?」
「ええ」
「それでいい」
一通りは用意しておいてもらったので、すぐさま使用人が注いでくれる。
ケーキとお茶菓子もだ。
「で、カトレアさんの病気の為に、弁明ってことを使って来たんですよね?」
「ああ。それはすまない」
「いえいえ、此処まで普通通さないようにしてますからね。前にも一度そうやってきた人がいましたし」
学友ってことを使ってタバサがね。
「んー。で、率直に言いますが、トリスティンがゲルマニアを悪く思っているのと同じように、私自信トリスティンを良く思っていません」
トリスティンは金だけで貴族が買えるゲルマニアを疎んでいる。ルイズが成りあがりとか言ってたのもその為だ。トリスティンは伝統を大事にするので、貴族としてのプライドも高い。だから、トリスティンの平民と貴族の差が激しくなり、平民は貴族を嫌う。
「それは心得ております。しかし、そこを何とか」
「私の領では貴族と平民が平等です。と、言うか貴族は潰しました。はっきり言って平民をおろそかにする貴族など邪魔なのです。働いているのが平民なのですから、あたりまえのことですが。と、言うわけで」
俺は使用人に、手を差し出す。
その上に書類の束が乗せられた。
「それは……?」
「先ほど貴方達が来てから調べ上げたヴァリエール領のデータ。収入や貴族と平民の扱いなど全て。輸入や輸出はもちろん。作物の栽培状況とかもね」
俺はニヤリと笑ってやる。
「い、一時間程で、ですか? そのようなこと……」
「なら、これを見ればいい」
俺は一番上以外の紙をテーブルの上に投げ出す。
数分後、俺は手元に残った重要な部分――俺の必要な情報を読み終わる。
「た、確かにうちのラ・ヴァリエール領の物でした。うちの記述より詳しい……」
「そうですね。機密なんて、ざるです。各王宮のデータだって簡単に手に入るんです。情報は武器。覚えておいた方がいいですよ」
「は、はぁ……」
もう公爵さん冷や汗だらだらだ。
「まずは、トリスティンの状況。一年間で平民が貴族に処刑された件数をご存じですか?」
俺は用紙からチラリと視線を公爵にずらす。
「50人程でしょうか……?」
「2574名。理由――街でぶつかった。使用人がお茶をこぼした。足を踏まれた。目ざわり。服装が汚い。税収が少ないetc…。わかりますか? 私が一番嫌いな貴族がトリスティンに固まっているのです」
「「……」」
まあ、わかるはずないだろう。平民など貴族にとってはゴミだ。
「ですが、これは他の貴族なのでそこまで問題ではありません。重要なのはラ・ヴァリエール領」
もう一度まとめた書類に目を通す。
「ヴァリエール公爵とカトレアさんは非常に好かれていますね。平民の為に努力をしてきたとのこと。これはかなり、理想的です。こうゆう方は私的には好きですね。ただ――」
カリーヌの方に視線を移す。
「ルイズさん、エレオノールさん、カリーヌさんは貴族絶対主義。平民を何だと思っているんですかって感じです。私はルイズさんと学院が同じでしたが、彼女は召喚した平民の使い魔に首輪をつけて犬と呼んでましたね。乗馬用の鞭で叩いたり、失敗魔法で爆発させたり。見ていて非道な者でした。多分、これはカリーヌさんやエレオノールさんの貴族は貴族らしくと言う教育。言いかえれば、貴族は平民をコキ使え。って教えのせいなのでしょう。知っていましたか? 確かにヴァリエール家は領内で人気がありますが、と言うか公爵とカトレアさんが人気がありますが、後は恐怖で従順になっていたことを?」
「わたくしはそんなこと――」
「平民暗黙の了解1――ヴァリエール公爵様の家族にたいしては笑顔で挨拶をする。但し、出来るだけ早く切り上げる。2――機嫌を取るために獲れた物を手渡し勧める。3――会ったらまず地面に頭をつく。まだありますが、このような事が幼子にまで知れ渡っています」
貴族貴族って何さまのつもりだろうか。これで帰ったら平民は粛清か?
そんな時、一つの大型テレビが俺の前に飛んできた。
これは、両端に筒が付いており、上からのナノマシンを下に噴出させて浮いているのだ。
テレビ自体が紙のように薄いので、風圧でも軽々浮くのだ。
パっと画面にリーンが映る。
二人が驚いているがどうでもいい。
『お兄様。屋敷の中をうろついている人が居ます。殺しますか?』
「あー、映せ」
『わかりましたー』
リーンから画像が変わり、なにやら色々屋敷の中を調べている女性が……。
俺はこめかみを押さえる。あー、もうやだ。
「えーっと。公爵。あの不審人物は?」
「すまない……。エレオノールだろう」
公爵も頭が痛いようだ。
「屋敷の中は機密情報が多いから、最悪記憶を消すか殺さないといけなくなる。ただ、使用人じゃ敵わないだろうし、カリーヌさん行ってあげてください……」
「……わかりました」
娘の不始末なので素直に了承してくれる。
「本当にすまない……娘は珍しいものを見るとすぐ調べたくなるのだ……」
「あー、はい。わかりますよ」
リーンがそれだし。リーンの場合は作り始めるけど。
「あ、話戻りますが、うちの技術って機密なんですよ。王族だろうとなんだろうと。で、うちの治療受けられる対象なのですが……1、兵士になること――でも、うちは兵士いすぎるくらいだからいらない。2、うちの家系にはいる――無駄に多いから政治能力ないならいらない。3、トリスティンを裏切る――これがオススメ」
まあ、この内容は話してほしいな。王室に。うちに刃向ってくれれば楽っちゃ楽。
「トリスティン……を?」
「ええ。あの国の貴族が気に入らないんです。と言うかですね? あなたはそこまでトリスティンに恩が在るのですか?」
俺は目を細める。
「だが、始祖ブリミルから続く伝統的な血筋。絶やすわけには……」
「ええ。で、あなた自信は? ワルドに裏切られてルイズと縁を切られ、幽閉されましたよね。そもそも、ワルドは何故あそこに居たのですか? 現女王アンリエッタがつかせたのですよね?そんなことしなければルイズが裏切ることもなかったし、ワルドが王族を殺すこともなかった。で、なぜヴァリエール公爵のことが表にでなかったか。何故ルイズが幽閉されたことも秘匿されたか。簡単です。ヴァリエール公爵は王族の血筋が入っています。王族にしても、それは立場があやうくなりますからね。下手したら、アルビオンのように貴族派などで内部分裂しかねない。それを恐れて秘匿した。実際は処刑だったでしょう。王族ですら我が身かわいさに身内を売ったわけです。公爵が愛娘かわいさに、王族を売ったとしてもなんらおかしくはありませんよね?」
まあ、多分コイツはトリスティンを売らないだろう。
「だが……わたしは」
「別に、こちら側についてほしいわけではありません。ある情報がありましてね」
俺はニヤリと笑う。
「まず、もうすぐトリスティンはレコンキスタの最後の残党5万と艦隊全てと戦うことになるでしょう。レコンキスタからの情報です。今はアルビオンでしたっけ」
「なっ!?」
先ほどの公爵家の正確な情報から、信用に値すると認知するだろう。
「で、トリスティンはゲルマニアと同盟を組み、コチラで調べた最大戦力7万で迎え撃ちます。ただし――」
俺は紅茶を一口飲み、目を細める。
「ゲルマニア皇帝の思考は私がよく知っています。ゲルマニアは必ず寝返る。トリスティンがかき集められる最大戦力が三万。艦隊なし。しかも、信用が出来ない傭兵も含めてです。対して、アルビオンは自国の兵だけで5万+艦隊。ゲルマニア皇帝なら有利な方に確実に寝返ります。ただ、これは確実な情報ではない。ですから、もし途中までこの通りになったら、情報を流してもらいたい。ゲルマニアは裏切ると。そして、ゲルマニアを攻撃してもらいたい」
「だが、もしそれが本当だとして。それをすると貴殿の兵までもが――」
「そんなのわかっています。だが、攻撃してもらいたい。策はあるのです。全てが上手くいくような」
カップに口を隠してニヤリと笑う。
全てが俺の思い通りにゆく策が……ね。
「どうでしょう? どっちにしろ避けられない戦争でしょう? あなたにもトリスティンにも被害はない。むしろ、ゲルマニアが裏切ったことでの被害が最小限になる。どうですか?」
「貴殿はゲルマニア。貴殿も我々を裏切るのでしょうか?」
「一言言いますと。此処はゲルマニアであってゲルマニアではない。招兵されたら参加はしないといけませんが、うちの兵士への命令権は私にある。私は裏切るとがあまりすぎじゃなくてね、その時はゲルマニアが裏切ったと言うことで、私はゲルマニアを裏切る。そしてゲルマニアを潰す」
そして、トリスティンに攻撃されたことを口実に、トリスティンも潰す。
カトレアはヴァリエール公爵への人質。
「それくらいならば可能です。我々に有利なのですから……」
「しかし、ゲルマニアとの同盟はするしかがない。うちが手を貸すならばまずゲルマニアを同盟にしなければいけないのだから。うちの兵士5万。それでこちらに有利になるでしょう。では、契約成立でしょうか?」
「それは構いませんが……それでカトレアは?」
「ええ。ちゃんと治療しておきます。ただ、少し時間がかかるかもしれませんが。ですから、治すことが出来るこの屋敷に滞在してもらうことになりますが?」
「治るならそれで構わない。本当になんと礼を言っていいか……ありがとう」
公爵が深く頭を下げる。
それはこっちのセリフだ。トリスティンをくれてありがとう。
「経過はそちらに臨時、文で送ります、遅くても半年以内には完治するでしょう。公爵が経過を見に来る分にはいつでもいらしてください。しかし、エレオノールさんとカリーヌさんはご遠慮を。私の領では貴族がいません。此処には此処の法律があります。街で好き勝手にやられたら、最悪処刑です。貴族だろうと平民だろうと人殺しは此処では処刑です。例え、ぶつかったとか理由が在ってもです」
「え、ええ。では近々私が来させていただきます」
「はい。ヴァリエール公爵がお帰りだ。送って差し上げろ」
使用人が部屋に入ってくる。
「かしこまりました」
「では、失礼させていたがくとしよう」
「ええ」
俺はヴァリエール公爵が出て行ったのを確認すし、リーンに話しかける。
「リーン」
『はい、お兄様』
「カトレアの検査結果を映せ」
先ほどの浮遊テレビに結果が映る。
上から目を通していく。やはり、後天的な病気か。生まれた瞬間に背中が傷ついたのね。
「ふむ。これなら万能薬でも治るな。手術だって一回で簡単に治る」
それでは意味が無いか……。
「リーン。万能薬を半年で治る程度に薄めて飲ませろ。完治するまでで半年だ。同時にエリクサーは原液で飲ませ、体長は良くなってると思いこませろ」
『はいー。やっておきます』
映像が消え去る。
これでいいな。あとは……戦争が始まるのを待つだけ。兵士を一度招集して説明したほうがいいかもな。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。