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01 生まれ落ちて






―――どこかの平民




「おぎゃーーーー!」
(こんにちわ。てかね、マジでありえないだろ?」

「おぎゃぎゃーー!」
(マジ劣等種だわー、どうしろってんだよ!?)

 起きたらいきなりこれだよ。
 目の前には多分俺を産んだ母親だろうか? 結構な美人さん。親父もなかなか。
 でもさ、でもさ。
 めちゃくちゃボロボロの服来てるし、絶対貧乏だろ?
 あー、マックの月見バーガー食いたい。

「ごめんね赤ちゃん」
「すまんな」

 あーなんかもうわかるよ? この展開。いきなり謝られたからね。
 滅ぼしてやろうか人間! 名前つけない時点であれだよね?

 はぁ……。



















―――森の中。




 結果で言えば捨てられました。

「おぎゃーーーーーーーー!」
(捨てるなら避妊しろボケがーーーーー!)

 あー、どうしようマジで。神も人間も信じられないわ。神に殺されて人間に捨てられる。劣等種の分際でふざけるなよって感じだ。

「ぎゃ、おぎゃっ」
(そだ、ライブラ)

 さっそく自分にライブラをかける。

“名無し(平民の捨て子A) 0歳
 HP44/44
 MP3456242/3456243

 スキル・使用不可
 魔法・全種類使用可
 GF・使用可
 召喚獣・使用可
 創造、時間、破壊・使用不可”

 ふむ。
 なめとんのかっ!?
 MPとか1000分の1以下になってるし!
 神としての能力消えてるし! 創造出来ないとか、はは。絶対此処で死ぬわ。
 HPなんて、HP80パーセントアップ使ってこれかよ。
 そもそも名前ありえん。捨て子Aってモブキャラやん。
 ここがFFだったら一時間以内に食われて死ぬな。てか、どこの世界よ此処。
 
 とりあえず、リレイズかけとくか?
 死ぬ→復活→死ぬ→復活→死ぬend…
 嫌だな。いっそひと思いに殺してくれって感じだ。
 そもそも、この世界でアレイズとか使えるのか?
 まあ、劣等種が死んだところでどうでもいいけど。
 俺が死ぬのは嫌だ。って言っても今の俺は劣等種だがな。

ガサッ

 ……終わった俺。
 近くの草を誰かが踏んだ音がした。
 人間、又はモンスター。ここで、いきなりオメガウェポンとか出たら面白いな。
 まあ、一撃も喰らわなきゃ殺せるけど、無理だし、もう好きにしてくれ。死ぬわ。

 木々の間から出てきたのは老人だった。かなりの年齢って感じだけど。
 なにコイツ? ダンブルドア先生? ハリーポッター? 

「赤子?」
「おぎゃーーー」
(こっちみんな劣等種! キモイわ!)

 ジットこっちをみてくるじーちゃんがうざい。

「お主、捨てられたのかの?」
「おぎゃぎゃおぎゃー」
(そうだよボケ! ライブラ)

“ウィディス・ラ・リバルスティン(賢者) 742歳
 系統魔法・火、水、風、土
 精霊魔法・火、水、風、土
 クラス・スクエア
 擬似クラス・オクタゴン

 虚無を除く全てを収めた魔法使い。全ての精霊と契約済み。水の精霊との契約により、延命処置。”

 コイツ化け物か……。
 人間で俺の神の人生より長生きしてるぞ?
 劣等種なんて言って悪かったな人間。コイツはスゲーな。マジで食われるかも。

「お主ワシと一緒に来るか?」

 はぁ? 何言ってんだコイツ。

「おぎゃっぎゃー」
(Go to hell!《くだばっちまえ》)

 親指を立てて下に向けながら言ってやる。

「そうかそうか、一緒に来るか」
「おぎゃーーー!」
(言ってねーーーーーー!」
「そんな感謝するでないわい」

 ダメだコイツは……。
 俺は抱きあげられた。うへー、気持ちいいな。
 じゃねーよ! ふざけんな! でも、多分初めてだな抱きあげられるのって。
 神の時は最初から歩けたし、さっきの両親は隠すように袋の中に入れてたからな。
 まあ、わ、悪くはないな。殺さないでやろう。

 


















――――7年後





 あれからどうなったか教えてやるぜ?
 何もなかった、以上。
 実際何もなかった。普通にミルク買ってきて呑ませてもらったり。
 言葉や文字を教えてもらったり、魔法を教えてもらったりした。
 精霊との契約ってのも教えてもらったかな。
 あとわかったのはここが『ゼロの使い魔』の世界だってことかな? 糞親父の世界宝玉で見た世界だな。どうしよう。マックもコンビニもないよちくしょう。

 はぁ……、ってことで実は結構あったのかもしれない。全部初めてのことだったから新鮮って言うか……。
 
 結構迷惑かけたと思う。文字も言葉も5歳まで覚えられなかったし。俺の天才的な頭脳をもってしても無理だった。まったく違う体系の言葉しか覚えてなかったから仕方ない。
 聞く→既存の言葉に戻す→返事を既存の言葉で考える→此処の言葉に直すって感じだった。
 いまでは、普通に話せるけどな。神のときは星神魔法で言葉なんてすぐわかったのに。
 劣等種はコレだから……。

「ミラ~新しい依頼持って来てやったぞい」

 ふう、やっと帰ってきたか。ちなみに、俺達の住処は森の中の洞窟だ。
 精霊に頼んで、幻術みたいのかけて見えなくしているらしい。
 ミラとは俺の名前だ。喋りはじめてすぐに『ミラバケッソ』って言ったらそうなったのだ。女みたいな名前であまり好きじゃないけどな。

「おうー、今回はどんなのだ?」
「今回のはいい感じのじゃ、ホレ」

 じーさんが俺の座ってる岩の目の前に来て、羊紙を広げる。

「へぇ、森の中の成竜討伐か。7匹ならお手頃って感じだな。グループ討伐だけどこれくらいなら一人で出来るな。一万エキューならいいんじゃないか?」
「じゃろ? ほれ、さっさと行って来い」
「ああ、てか大丈夫か? 町まで飛ぶくらいで息切れして。そろそろ死ぬんじゃねーの?」
「まだまだおぬしには負けんよ! 風邪ひいただけじゃ。じゃ、行って来い」
「だな、じーちゃんが死ぬとは思わねーよ! 夕飯までには帰ってくるからな!」
「おう、“さよなら”ミラ」
「ああ」

 ったく、風邪ひいてんなら無理すんなっての。帰ったら俺が夕飯作ってやるかな。
 俺はそのまま討伐場所を目指して飛翔する。



















―――森



「っと、これで終了かな」

 依頼の7匹を討伐し、証拠の角を折り、影の中に収納する。

「弱い癖に暴れるな……てな」

 そのまま浮き上がり、洞窟へ飛翔する。

「ん?」

 精霊がざわついてるのか?

「おい、どうした?」

『消えちゃった』
『いなくなっちゃったの』
『終わり』
『さよなら』

 周りの精霊達が口々に言う。

「は?」

 消えた? まあ、精霊が言うことなんて今まで理解出来たことないけどな。いいや、とりあえず戻るか。



















―――洞窟



「おーい、じーちゃん終わったぞ?」

 着地し、すぐにじーちゃんの元に行く。さすがに動き回るとお腹がすくな。今日は熊鍋でもするかな。

 じーちゃんはベットで横になっていた。今までもよくあった光景だ。はぁ……。

「ったく、起きろじーちゃん。真昼から寝てどーすんだよ?」

 軽くゆすってみるが、中々起きない。

「はぁ…熟睡か?」

『消えちゃった』
『いなくなっちゃった』
『死んじゃった』
『亡くなった』

 あー、そう言う事ね。死んだのか。世話のやける。

《レイズ》

 じーちゃんの体が光、やがて納まる。

「どうだ? 元気になったか?」

 聞いてみるが、全く返事がない。

「じーちゃん?」

《アレイズ》

 レイズの時よりも更にピンク色に輝き、やがて納まる。
 なんでだ? 蘇生魔法はちゃんと効いてる。病気なのか?

《エスナ》

 体が緑色に輝く。だが結果は変わらず。

「おい、じーちゃん!」

《アレイズ、レイズ、レイズ、エスナ、エスナ、リレイズ、リジェネ、デスペル》

 次々に光輝くが、じーちゃんは起きない。
 は? なんでだ!?
 あ、焦りすぎたな。ライブラで見て魔法掛ければいいんじゃん。フェニックスの羽根もあるし、フェニックス召喚出来るしな。

《ライブラ》

“死者(賢者の亡骸)

 寿命によって死亡。
 あらゆる魔法・アイテム使用不能”

「ははは……」

 ああ、蘇生じゃ寿命までは無理だ。つまり死んだのかじーちゃん……。

『大丈夫』
『泣かないで』
『私たちがいるよ』
『元気出して』

「ああ、大丈夫だ。泣いてないだろ?」

 また一人か。恨むぞじーちゃん。一度暖かさをしった人間はどうすればいいんだよ。じーちゃん。だから……だから――

「――人間は嫌いだよ全く。短すぎるだろ。たかが、700年ちょっとしか生きられないなんて。なあ、じーちゃん」

 声をかけてみるが、やはり目を覚まさない。今にも目を覚ましそうな風で覚まさない。外見は何一つ変わってないのに、魂が消えている。

「7年しか一緒にいなかったけどさ。結構感謝してたんだぜ? じーちゃんは劣等種何かじゃなかった。ちゃんとした“人間”だったよ。俺が神のままだったら神界に連れて行ってやれたのにな。ごめんなじーちゃん」

 ああ、この体が憎いな。ただの人間となってしまったこの脆弱な体が。

『これ読んで』
『読んでほしいって』
『他の私が言われたって』
『私が私に聞いたの』

 精霊が一か所に集まっている、そこには一つの便せん。
 精霊に運ばれて、俺の手元に便箋が乗る。
 封を破り、中の羊紙を取り出す。

「読むぞ?」

 精霊も聞きたいのだろう、俺の周りで静かにしている。

「ミラへ。この手紙をお前が読むころにはワシはもう死んでいるじゃろ。幼いお前を残していくことを許してほしい。ワシはな知っておったのじゃ。もうすぐ自分が死ぬことを。子供も残さず、ワシは昔からひたすら魔法の研究をしておった。じゃが、最後の最後にお主を見つけたのじゃ。あのときワシは死に場所を探しておった。そこでお主を見つけてのう、それからは自分の生きた証を残したかったのじゃ。結局自分のためにワシはお主を利用したようなもんじゃ。すまなかったの。平民の子供に魔法は使えん。それならば、精霊魔法だけでも残そうと思って拾ったのじゃ。そしたらお主は系統魔法や精霊魔法を使う適正があった、そして、それを使える精神があった。ワシはうれしかった。これで、ワシが生きてきた意味を残せると思った。ひどい修行だったじゃろ? 一歳になる前からひたすら魔法を教え、体を酷使させた。すべてワシの我がままじゃったんじゃ。そして、お主は5歳でワシの教えを全て受け継いだ。本当の鬼才の持ち主じゃったのじゃ。ワシの生きてる意味はお主に託された。安心して逝ける。お主と過ごした7年は700年以上の生で一番幸せじゃった。お主はワシの自慢の息子じゃ。じゃがな、ワシと同じ道をたどってはほしくないのじゃ。お主はお主の幸せを求めてくれればいいのじゃ。幸せをありがとう。
 最愛の息子へ

 追伸・一緒に入っていた鍵は奥の扉の鍵じゃ。きっとお主の役に立つだろう」

 俺は手紙を読み終わり、丁寧に畳んで便せんに戻した。

「……」

『泣かないで』
『大丈夫』

「泣いてな――」

『泣いてる』
『泣いてるよ?』

 頬に手をやると、うっすらと涙が手についた。
 俺は泣いていたのか……多分初めて泣いた。自分には涙なんて出ないのだと思っていた。
 違ったんだな……。

 便せんの中から一つの古い鍵を取り出す。

『ここ』
『ここだよ?』

 精霊が教えてくれた扉に鍵を差し込み。ゆっくりと開ける。

「はは……なんだよじーちゃん……」

 思わず声が漏れる。
 中にはきらびやかな金貨が山のように積まれていた。
 一体どれほどあるか、金がない金がないと言っていつも高額の依頼を受け、ずっと此処に貯めていたのだろう。
 700年の間ずっと貯めていたエキュー金貨。下手したら億を超えてるかも知れない量だ。

『これね、ミラにって』
『言ってた』
『あげてって』

 俺のこれからのためってことかよじーちゃん……。
 ありがとうな。

「ディアボロス。収納しろ」

 俺の足元の影が広がり、金貨を覆い隠す、金貨は次の瞬間には消え去っていた。
 最後に、便箋を影の中に投げ込む。

 そして、洞窟の外に歩きだす。
 外に出、最後に洞窟を振り返る。

「じーちゃん。ありがとうな。俺も幸せだったよ。じーちゃん教えてもらった魔法。ここまで使えるようになったよ。精霊も頼む。最後のお別れだ」

『うん』
『最後』
『ありがとう』
『バイバイ』

 俺は詠唱してゆく、じーちゃんに教えられた魔法。
 左手で火・火・風・風、そして停滞させる。
 右手で水 水 土 土、停滞のスクエアスペル。
 四つを合成させるここまでが、一流魔法使いの限界。
 だが、じーちゃんは賢者だった。この相性の悪い4つを更に合成させるオクタゴンスペル。
 普通は杖がなければ使えない魔法を、精霊の力を借りて放出する。
 二つの魔法が同時に放たれ、洞窟の中で混じりあう。
 融合し、拒絶する。

《エレメンタルラース》

 洞窟の中で大きな爆発を起こし、洞窟が崩れ落ちる。
 そして、俺は洞窟を背にする。

「じーちゃん。じーちゃんの想い受け継ぐよ。今から俺は――ウィディス・ラ・リバルスティンと名乗ろう」

『ウィディス』
『名前』
『変った』
『ウィディス』

 精霊の声を聞きながら、俺は飛翔する、もう此処には何もない。
 此処に戻ることもないだろう。

 さよなら、じーちゃん。
ライブラ――対象の生物の情報を閲覧。
リレイズ――一回限り、死んでも復活。
アレイズ――HP全回で蘇生。
レイズ――蘇生
エスナ――ステータス異常回復。
デスペル――魔法効果打ち消し。
1エキュー=1万くらい
エレメンタルラース――4つの属性が拒絶して生まれる爆発。MPの練り込み次第ではアルテマに匹敵する。


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