鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・5〜『シャマイ・マーメイド2』(4/6)縦書き表示RDF


鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・5〜『シャマイ・マーメイド2』
作:亜玲



第4話


‡第四話‡



「お、お、おはようございます!!」



遠慮がちにノックした扉が、誰も触れていないのに勢いよく開いた。



「あ、ワコジーさん! おはよう!!」



中で興味津々に何かを見ていたヴィータが、恐々とミラキ家の玄関に立つワコジーに気付き、満面の笑顔で手をふり駆け寄ってくる。



「おっすヴィータ! 元気か?」



とりあえずマヤンがいないようなので安心したワコジーは、足にしがみつくヴィータの頭を撫でながらニカッと笑う。



「うん、元気!! にいちゃーん!! ワコジーさんきたよ!!!」



「わかった」



奥の方から澄んだ声が聞こえ、イーナが姿をあらわし、



「お、おまっ……どうしたんだよそのかっこ……?!」



「ん? ああ、これか?」



わずかに不思議そうな顔で、イーナは身に纏う純白のフリルエプロンの裾をひっぱった。



「マ……えと、母さんが、料理できないって言うから、俺がかわりにやることになって……んで、今朝早くジンさんが来てな、料理をする時はちゃんとこれ着なきゃだめ、って置いてってくれたんだ」



「んの変態オヤジっ!!!」



神妙な顔で説明するイーナに、ワコジーは顔を真っ赤にしながらジンへの悪態をついた。



人魚だって、ちょっとした衣服は着る。その感覚は、人間のものと大差ないはずだ。



そしてその感覚が間違っていなければ、普通男はフリルのエプロンなどしない。



「なぁワコジー、顔が赤いぞ? 熱でもあるんじゃないのか?」



「え?」



イーナのあまりにも可愛らしい姿に気をとられるあまり、その顔が接近してきていることにワコジーは気が付かなかった。



「ん……微熱?」



「っ……!!」



イーナのひんやりとした額がワコジーのほてった額に押しあてられ、ワコジーは声にならない叫びをあげた。



「おまえ、い、い、いつもそうやって……?!」



「え? あ、あぁ、ヴィータたまに熱出したりするから」



何でもないように言うイーナに、ワコジーはとりあえず気持ちを落ち着けようと深呼吸した。



「あー……えとさ! 今日は、シャマイ村を色々見て回ろうぜ!! この前来たときんじゃ足りねーからさ!」



「うん、そうだな」



「わーい!! おさんぽ!!」



はしゃぐヴィータとさっそくエプロンをとって支度するイーナを眺め、ふと、まだイーナの笑顔を見ていないことに思い当たる。



「(笑ったら、きっと、もっとかわいい……かわいい?!)」



「なにしてるのさワコジーさん! はやくいこう!!」



「あ、おぅ!!」



ヴィータに手をひっぱられ、ワコジーたち三人は、朝のシャマイ村へと繰り出した。












「おい! あの子だぜあの子!!」



「マヤン様の養子になったって聞いた……」



「かわいいなぁ……男でもあんだけかわいけりゃ……」



「あんなかわいい兄弟初めて見たわ!」



「なぁ結局あのたらこ唇は誰なんだ?」





昨晩からの興奮冷めやらぬ様子の村人たちの間を、三人はゆっくりと歩いていた。





「誰がたらこだっ……!!」



イーナとヴィータの神がかった美貌に比べれば、自分などたいしたことはないだろう。



「そんなにまずくはねーはずなのに……」



確かにワコジーも、美形の部類に十分入る。だが本人的にはチャームポイントだと思っている厚めの唇が、美の神と並んではあだとなっているようだ。



「ねーねー、あそこにこーえんあるよ! あそこであそぼー!!」



「いいか、ワコジー?」



ヴィータの指差す先には、
「シャマイ公園」とかかれた札が入り口にたてられた広場がある。



「おぅ、いいぜ! あそこなら、友達できるかもしんねーし」



「わーい!!」



「あ、こらヴィータ! 走っちゃだめ!!」



「はやくはやくーはぶぁっ!!!」



「わっ!」



はしゃいで駆け出したヴィータが、兄たちの方に目を向けた瞬間、公園の入り口に立っていた幼い女の子に激突してしまった。



「いたーい!」



「ご、ご、ごめん!!」



転んで泣きだす女の子に、ヴィータが焦って手を差し伸べようとすると……



「おーいア・ヤカーだいじょーぶー?」



「こらくそガキ! 謝れ!!」



公園の奥から、ワコジーやイーナと同じ年くらいの少年と少女が駆け寄ってきた。



[続く]












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