鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・5〜『シャマイ・マーメイド2』(1/6)縦書き表示RDF


鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・5〜『シャマイ・マーメイド2』
作:亜玲



第1話


‡第1話‡


痛いほどの視線に含まれる意味などおそらく、本人はまったくわかっていないだろう。



「イーナ……あ、あのさ……」



「ん? なんだ?」



小首を傾げる少年を、ワコジーは視線からかばうように隣に引き寄せた。



「わわっ! どうしたんだ?」



「や、なんつーか……」






黒派討伐を終えたその足で、ワコジーとイーナはジンにつれられシャマイ村へと戻ってきていた。



族長暗殺未遂事件への警戒から一転、黒派の滅亡と言う喜びのニュースに沸き立つ村は、夜だと言うのにモランたちがざわめき、楽しげに会話したり踊ったりしている。



だが、そのざわめきが、自分達が歩く道にそって次々と止んでいく。



その原因は一つ。



「だ、だれ……?」



「わぁ……」



「かわい……」






あちこちからあがる夢見心地な感嘆の声。



老若男女、イーナを見た全ての者は、頬を染め、ため息をつき、その神がかった美貌に魂を抜き取られたようになっていた。





「なぁ、やっぱり皆、俺のこと怖がってるのか? 族長を殺そうとしたんだし……」



しかしイーナは周りの反応を違う意味に解釈していたらしい。以前表情に乏しい顔に、わずかな不安をよぎらせる。



「そ、それはないと思うけど……」



「そうかそんなに心配かワコジー。ならおじさんがイーナを抱っこしていってやろう」



返答に迷うワコジーに、すかさず前を歩くジンが口を出す。



「だぁーっ!! 何考えてんだ変態オヤジっ!!」



「ワコジー! 恩人にむかって怒鳴ったりしたらだめ!!」



くつくつと笑うジンに今にも飛び掛かろうとしていたワコジーを止めようとしたのだろう、イーナの細い体がワコジーに抱きついてくる。





「―――っ!!」



とたん、沿道からあがる声にならない叫び。



「なんだ彼氏もちかよ!!」



「あんなガキにっ……!!」



「つかあのたらこ唇誰だよっ!!」



「〜〜っ……」



不思議そうな顔をするイーナとついに爆笑しはじめたジンに、ワコジーはいたたまれない気分になった。









「おや、お帰りなさいジン。ご苦労様でしたね」



夕方には惨劇の舞台となっていた族長の屋敷も、いまはきちんと元どおりに片付いている。



その玄関口にたたずむ、全身を赤チェックの布で覆った女が、ジンたち三人を見て労いの声をかけた。





「ああ、マヤン。ほれ、こっちがワコジーで、このカワイ子ちゃんがイーナだ」



「マヤン?!」



どこかで聞いたことのある名前に、ワコジーはマヤンと呼ばれた女を凝視した。なんか見覚えが……



「ぐああっ!」



「ワコジー?!」



しかし、思い出そうとすると腹が痛くなる。足とおしりをぴくぴくさせながら、ワコジーは
「だいじょぶだ」と答えた。



「ふむ。君たち、色々と苦労をかけてすみませんでしたね。さぁ、中にお入りなさい。ヴィータくんがお兄ちゃんの帰りを待ちわびてますよ」



『お、男?!』



野次馬たちの悲痛な叫びを背中に、マヤンに続いてジンたち三人も族長の屋敷へと足を踏み入れた。






「あ! 兄ちゃん!! にいちゃーん!!!」



応接間に入るとすぐ、兄の姿を確認したヴィータが駆け寄ってきて、思いっきりイーナに抱きついた。



「ヴィータ! よかった……怪我してないか?!」



「うん、へーきだよ! さびしかったよぉ……ふぇ……」



甲高い声で泣きだすヴィータの背を、イーナの薄い手が優しくなぜる。



「大丈夫……もう、怖い想いしなくていいからな……」



「よかったなヴィータ!」



ワコジーもヴィータの頭を撫でる。



「ワコジーさんも、いっしょに、いて、くれるの?」



「おぅ! ずっとトモダチだぜ!!」



ニカッと笑うワコジーの肩を、マヤンがつつく。





「君、ちょっとその件で相談があるんですけど」



「へ?」





[続く]












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