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Garden of Clockwork 作者:ぬいばり

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CoC&SCP布教用。
『ちゃんとサービス開始前にキャラメイクは終えておくんだぞ』

「ああ」

『ログインのときはちゃんと寝てな』

「うん」

『あと、兄貴にはできれば戦闘をしてほしいんだけど……』

「はいはい」

『あ、私も武器とか作りたいから接近戦できるような感じで頼みたいんだよな』

「だからわかったって」

 ……魔法には興味があったんだけどなぁ。
 けれど、通話端末の向こう側でゲームスタートを心待ちにしている無邪気な声を聞いてしまうと、なんとなく、従わないとなぁ、と思ってしまう。
 そんなふうに、兄妹仲に関しては自信があった。

 ぷつり、と妹が通話を切断したらしい。

 サービス開始前にキャラメイクを終えておけ、という妹の助言に従い、ベッドの横に置いておいたハードウェアを起動する。
 身体を横たえ、頭にギアを取り付ける。
 取り扱い説明書の通りの手順を踏む。

「接近戦……できる気しないなぁ」

 格闘技や武道を習ったような体験は皆無だ。
 自分が剣を振るう姿もまるで想像ができなくって、さて、どうしたものだろう。
 戦えるのかな、俺は。

 ……まぁ、いいか。
 ガチ勢になるつもりも、廃人になるつもりもない。
 こんなのはただの暇つぶしで、妹の遊びに渋々付き合うようなものなのだ。
 というか、ほとんど押し付けられたようなものである。
 もちろん、貰ったからには、楽しむけれど。

「……じゃあ、行きましょうか」

 マイナス思考は打ち止めて、さあ、ポジティブに行こう。

 電子の向こう側へ。
 世界がはじめて経験する新世界へ。



 ……Garden of Clockwork。
 最近では"GoC"あるいは"時計"という通称で世間を騒がすそのゲームが、今から三時間後にサービスを開始する。
 世界で初、バーチャルリアリティの技術を搭載したオンラインゲーム。
 50年先の未来を先取りしたなどと謳うその技術は、たしかに他の国を見ても、あるいは日本の別の企業を観察しても、このゲーム以外にないものだ。

 ファンタジー世界の完全再現。

 詳しいことはよく知らないが、βテストに参加していたらしい妹の語りを聞く限りではそのクオリティはたしかに完全再現と言ってふさわしい、ような気がする。
 50年先の技術というのも、案外間違った表現ではないのかもしれない。

 そして、俺は今、それを実感していた。

「……わぁ。すごいね」

 ——目の前には、俺がいた。

 初期アバターだ。
 すなわち、機械によるスキャンで俺の姿をそっくりそのまま写し取った状態である。
 鏡越しに見るよりもリアルに見えるその鮮明さは感動を通り越して不気味という領域に食いこんでいる。
 焦点の合わない無表情がさらにそれを駆り立てる。

 これが俺のアバター。
 ここから容姿をいじり自分好みのキャラクターに組み立てていくのだろうが、初期状態がここまでリアルだとは聞いていなかったから少々戸惑ってしまう。

 変えすぎても勿体ないな、とも思った。

「身バレとかを考えたら、ちょっとは変えた方が良いんだろうかね……」

 ……さて、どうしたものか。

 とりあえず、青白く細長い、骨に皮をつけたようなこの肉体は客観的にも主観的にも不気味すぎる。
 肉、というか最低限の筋肉をつけ、あとは髪型や髪の色、目の色なんかを変えれば良いだろうか。

 それで良い気がする。
 というか、あと三時間しかない。
 夕食のことを考えたら、時間は結構ギリギリだ。

『キャラクターアバター編集を終了します。キャラクターシート作成へ移ります』

「はい」

 アナウンスに従って編集を進めていく。

 決めることは主に4つだ。
 名前、種族、職業、スキル。
 こうやって見てみるとシンプルに見えるが、初期選択の段階で100を越えるという大量のスキルの中から好みのものを探すというのはなかなか骨の折れる作業らしい。

「……なるほどね」

 ——たしかに、その通りだと思った。
 目の前のウィンドウにずらりと並んだ文字列を見て、妹に言われた「メイキングに時間をかけた方が良い」という言葉に納得をした。
 これはこれは、時間がかかりそうだ。

 ……間に合うかなぁ。
 まぁ、そうだな。
 諦めて、選び取る作業を始めるとしよう。
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