6.N
俺は自分を責めた。 自分の感情を御し切れずに閑散とした部屋を暴れ回ったが、疲れが余計に嫌悪感を重くした。
初めて手にした温もりは静かに、それもいとも簡単に滑り落ちた。
悪魔の使者と呼ばれた俺が温もりを欲した報いがこれかよ。俺はただ初めての友達といるのが嬉しくて…。
もう、いいや…。疲れたよ…。もう何も失いたくはない。
あと何回眠れば奴に会えるだろうか。そう思いながら、俺は奴の傍で眠ることにした。
再び奴の身体に近付き、今もうっすらと残る頬の傷跡をそっと舐める。
あのときはすまなかった。
俺は怖かった。温もりに触れたいと望みながら、その温もりを失うことを。 だから近付く者を傷つけることで自分を守っていたんだ。
それをお前は「似た者同士」と言って名前を呼んでくれた。こんな気持ちにさせてくれたのはお前だったからだ。
恩返しどころか、恩を仇で返してしまうなんて。本当にすまなかった。
俺は奴の傷を癒そうと、もう一度奴の頬を舐めようとして舌を止めた。
……待て。そうだ…。まだだ!
俺の中の何かが沸き立つ。
奴が俺にした唯一の頼み事。俺にはやらなきゃならないことがある。
あの大通りのように目の前が開けるのを感じると俺は立ち上がり、奴の最期の手紙をしっかりと咥えた。
わかった。お前の願いは確かに受け取った。任せてくれ。必ず守るから。
窓を見ると外は既に暗くなり、雪が木を叩いていた。これから外に出ようなんてやつはいないだろう。
だが、一刻も早くこの手紙を届ける。俺はこれを届けなきゃならないんだ。
俺は奴の身体に、俺のためにと奴がくれた毛布をかけると、静かにドアを出た。
空にはこれから来るであろう深い闇と強い寒さが渦巻いているのが見えた。 |