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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第八の部 歪む天命

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第九十話 久しぶりに会う知り合いに中二ネームを知られていると凄まじいほどのスピリチュアアタックを食らう件について 

なんか最近週刊連載になっています
 初っ端から諜報員おっさんを捕獲してしまうというハプニングは、その結果を良しと見るべきか悪しと見るべきかは微妙なところであった。

 良い点を上げれば、早期に諜報員を発見する事で情報の漏洩を防げた事。悪い点を上げれば、ファイマに対して諜報員を動員して探りを入れようとする『何かしら』が存在している事実。前向きに考えれば諜報員の背後に居るであろうその『何かしら』の存在も察知できたのもまた良かった点と言えるかもしれない。

 俺は全神経を集中し室内に『違和感』の有無を読みとろうとしたが、結果は白。照明器具や水を温めるための道具を除けば怪しい魔術具の存在もない。諜報員おっさんを除いてこの部屋に他者が干渉した痕跡は見つけられなかった。

「君の能力は隠密にとっては天敵にも近いな。やはり、この任務に協力者として招いたのは正解だったよ。私は屯所に戻って拘束した諜報員の尋問に参加する」

 縄で拘束されたオッサン(下半身には布が巻かれました)が屯所から急行した騎士団員に運び出される中、ポンッと団長さんに肩を叩かれる……俺?

「成果があれば報告するが、以降は『君』に緊急時の現場指揮を一任する。よろしく頼むぞ」
「って俺ッ!?」

 何言ってやがるんだ、この全身甲冑隠れ爆乳女騎士はッ!?

「や、ちょっと待とうぜおい。冒険者で外部協力者の俺に現場の指揮を任せるとかおかしいだろ」
「人の話を良く聞け。あくまで『緊急時』に限った話だ。常時の指揮は団員に任せる。ただ、君の対処能力は破格だ。あれほど躊躇い無く動ける人間は、我が騎士団にはおそらく居ないだろう」

 躊躇いがなさ過ぎる気がしますが、とはこの場にいる誰かの呟き。

「確かに、常識的に考えれば些か『やりすぎ』なのは否めない。しかし、それらを取っ払い結果を重視すれば彼の行動は一つたりとも間違ってはいない。むしろ最良の選択と言ってもいいだろう。少なくとも、現場に『常識に囚われないそのような』人材が最低一人は居合わせるべきだと私は考えている。それに−−−−」

 レグルスは甲冑の奥にある目をランドへ向けた。顎に手を当てていた彼は騎士団長の目配せを受けるとゆっくりと頷いた。

「……レグルス殿の仰る通りかもしれんな。拘束した諜報員にファイマ様を害する意図があったかどうかは不明だ。だが、その意志を確認してから対処するのでは確実に後手に回る。状況や常識に囚われずに最速で動ける人員が仲間にいるのは心強い」

 護衛頭の言葉にキスカは腕を組んでうんうんと頷き、アガットはうぅぅんッ!?と仰天していた。奇遇だなアガット君。割と俺も同じ気持ちだ。

「−−−−と、言うわけだ二人とも。万が一の時にはカンナ殿の指示に従え。それ以外の場合でも、彼は何かと貴族の常識に疎い。手数を掛けると思うがフォローを頼む」
「「はッ、了解しました!」」

 あるぅぇえ(巻き舌風味)? 団長さんの無茶な指示に団員さんは割とすんなり受け入れちゃったぞ? 我が事であるはずなのに状況を飲み込めていない俺に、団員二人は一歩踏み出すと握手を求めて手を伸ばしてきた。

「自己紹介が遅れました。私はカクルド。一応・・、この任務の現場責任を任されていました・・・・
「スケリアです。この任務にはカクルドの補佐として配属されていました・・・・

 どちらも「〜されていました・・・・」と過去形なのがスゴい気になる。

「我々は『あの戦場』でカンナ殿が団長とともにご活躍された場面を目撃しております。アレほどの武力を持ちながら団長からの信頼も厚いお方ともなれば、我々とて信頼しないわけにはいかないのです」
「昨日の時点で自分とカクルドはカンナ殿がこの任務に参加すると伝えられていました。万が一には非常に頼りになるお方であると団長からのお墨付きです。先ほどの事でそれが真実であると確信できました」

 止めて! そんな尊敬のまなざしを俺に向けないで! 俺は巨乳が大好きなだけの男子高校生だよ! ……や、精霊術とかあるけどさ。
「緊急時におけるカンナ殿の指示に従えという団長からの命令は、素直に頷けるのですよ。むしろ、団長が認めた方と任務をともに出来て光栄です」
「ご安心ください。自分たちが平時のフォローはいたしますので」

 おいレグルスレアル、部下に何を吹き込んだんだ? 俺の株が知らないところで鰻登りなんですが。あげるだけあげて最後は蒲焼きにされて食べられるのかもしれない。

「安心しろ。万が一の時がこなければ君は周囲に気を配る程度で問題ない。ただ、もし万が一の時があれば躊躇わずに動け。その責任の全ては幻竜騎士団団長の私が受け持つ」
「……それはそれで『重圧プレッシャー』があるな」
「君に『重圧プレッシャー』を感じる神経があるのは意外だな」

 やかましいわッ。



 レグルスと、騎士団員に拘束された諜報員が屯所に引き上げ、さらにはアガットからの説教からも解放されてから、俺はようやくファイマと落ち着いて話の出来る時間を得ることが出来た。

「改めて。無事で良かったわ。あの時は何も出来なくて本当にごめんなさい」

 ファイマの申し訳なさそうな言葉に俺は軽い身振りをしながら答えた。

「あの状況じゃぁ仕方がないだろうさ。それにファイマなりに手を回そうとしてくれたんだろ? 結果的には無駄足を踏ませちまったが」
「あなたが被った迷惑を考えればどうって事無いわよ。それに、たいして役にも立てなかったしね」

 本来なら、護衛と護衛対象がこんなに気軽な言葉を交わすのは御法度だろうが、ファイマと俺が個人的な知り合いなのは全員の知るところだ。公式の場でもないので普通に会話が出来た。

「それにしても、カンナ君が既にCランクに昇格していたとは驚きだ。通常は登録してから最低でも一年近くの時間が必要だと聞くが?」
「俺ぁ元々Eランクのままでも良かったんだが……」

 Dランクへの昇格は自らの意志でなったとはいえ、Cに関しては半ば脅迫だ。おかげでファイマの護衛任務に関われたので結果的には良かったとも言えるか。

「それに、あの竜剣とも個人的な知り合いのようだし、本当にあなたこの一ヶ月で何を仕出かしたの?」
「おい、俺が騒動ハプニング大好き人間みたいに言うのはよしてくれ。割と事なかれ主義なんだ」
「本当に事なかれ主義の人間は、街のど真ん中で貴族ひと様を後ろ投げなんかしないわよ」

 ………………………………。

 ああ、そういえばそんなことあったな。

「……もしかして今の今まで忘れてたの?」
「やっはっは、そんなことあるわけないじゃないかあっはっは」
「忘れてたのね……」

 直後に起こった出来事が濃すぎてチャラ男貴族の存在など忘却の彼方に追いやられていた。チャラ男よりも濃い鎧姿の野郎どもに囲まれて牢屋にボッシュートだし。

「ギルドから荷物の配達を依頼されてね。そのお届け先が竜剣さんだったって話だ。そのときにちょいとごたごたがあって縁が出来たのさ」

 嘘は一つもなく事実しか口にしていない。少なくとも、この縁が無ければレアルがこの国でどのような立ち位置なのかを知るのはずっと先の話だっただろう。

 途中、キスカが口を開いた。
「もしかして、そのゴタゴタってドラクニルから少し離れた鉱山で起こったゴブリンの大発生?」
「なんだキスカ。知ってたのか」

 俺が肯定すると、キスカはポンッと手を叩いた。
「噂になってる『白夜叉』ってカンナ君か」
「げはぁッッ!?」

 俺は胸を押さえ、その場に崩れ落ちた。予想外の精神的攻撃スピリチュアアタックにゴッソリとMPが削られる。

集団依頼レイドに参加した冒険者と個人的な繋がりのある侍女が話してくれたわ。戦場に乱入した白髪の冒険者が大暴れしたって」

 あの中二病ネームがこんな場所にまで届いていたなんて。

 キスカの話に、ランドは納得したように頷いた。

「Aランクに届かずとも、将来を有望視された冒険者に『二つ名』がつく事があるのはたまに聞く話だ」
「確かに、あの竜剣レグルス殿も低ランクの時からその実力の片鱗を発揮しており、当時は既に『重剣のレグルス』という異名を持っていたと言う話を聞いたことがあります。……こいつカンナがそれと同列に扱われているのは少々腑に落ちませんが」

 安心してくれアガット。割と心境はおまえさんに近いから。

「ただまぁ、礼儀の面では非常に心配にはなりますが、腕前の方はそこそこに信頼してやってもいい奴だとは思いますけどね」

 アガット君が微妙にデレてきたな。ランドは「仕方がない奴だ」とアガットの顔を見て苦笑していた。初対面の時と比べて随分と態度が軟化しているのは好ましい事なのだろう。

「だがな、身分を隠していらした時はまだいいとして、今のお嬢様は伯爵ご令嬢としての立場があるのを忘れて貰っては困るのだ。そこだけは肝に銘じておけ」

 アガットの正論に俺は頭を掻いた。今はいいが締めるところはきっちりとしておかないとおおやけの場で不都合が出てくるかもしれない。談笑もいいがその辺りも話し合っておかないと駄目だな。

「アガットの言うことももっともだ。話に花を咲かせるのはここまでにして、まじめな話をしておこうか」

 ランドの言葉に、和やかだった室内の雰囲気が引き締まった。

「最初に確認しておきたいが、ファイマはユルフィリアの伯爵家ご令嬢って事で間違いないんだな?」
「……ええ。アルナベスはユルフィリアに古くからある伯爵家の一つ。私はそこの長女よ」

 言葉に淀みを殆ど・・含ませずに答えたファイマ。

「なんで伯爵の身分を隠して学業の旅になんか出たんだ? や、お忍び旅行ってぇのは前にも聞いてたが、よくよく考えれば伯爵ご令嬢としての立場を利用すれば、国から便宜を上手に引き出せたんじゃないのか?」

 彼女がディアガル帝国--ドラクニルを訪れたのは、帝国に伝わっている『魔獣との契約』という特殊な魔術式を学ぶためだ。だが、俺が牢屋に入れられた日に交わした会話の内容で、その進捗状況が芳しくないと愚痴をこぼしていたのは記憶に新しい。

「アルナベス家のご当主は権力争いにはまるで興味を持たないお方だが、国家の内政に携わる人間の中であのお方を慕う者の数は決して少なくない。そのご令嬢であるファイマ様と面識を持つことで、ユルフィリアとの強い繋がりを得られると考える者が必ず出てくる。それを避けるために身分を隠しての旅だ」

「それらの相手をいちいち相手にしながら調べ物をするよりは、コネも無いけど面倒事も少ない一般人として動いた方が効率がいいと判断したのよ。もっとも、結果的にはある程度身分の力を使わなければどうしようもないって事が分かったけどね」

 そう言ってファイマは肩を落としたが、

「どうせバレてしまったのだから、ここからは国賓としての立場を利用して調べ物をさせて貰うわ」
「前向きだな」

 権力とは使うためにある。素晴らしい言葉だな。

 ここでカクルドが発言した。

「調べ物でしたら、皇居内に書庫がありますが、ご利用になられますか?」
「え? 大丈夫なのですか?」
「閲覧に権限が必要な書籍は無理ですが、それを除けばおそらく問題ないかと思われます。もちろん、付近に我々が同行するというのが前提条件になりますが」
「是非お願いします!」
「でしたら諸々の手続きはこちらでやってしまいましょう。スケリア」
「了解です。後ほど自分が書庫の管理人に許可を貰ってきましょう。ただ少々時間をいただきたいので、調べ物は明日からになってしまいますがよろしいですか?」
「まったく問題ありません。ありがとうございます!」

 出だしは好調だな。書庫とやらでファイマの調べ物が捗れば言うことなしだが、そこまで求めるのは贅沢か。気長にやっていこう。

 ファイマは引き続き調べ物をしていくが、今日の話し合いでそこに必ずカクルドとスケリア、そして俺が同行する流れになった。当然といえば当然だが、ファイマからしてみれば彼女の行動を雁字搦めに制限するよりも、彼女の動きにあわせて護衛の仕方を考えてくれる事に好感を持てたようだ。お陰でファイマも騎士団員やランド達に負担にならない範囲で動くと言ってくれた。互いに譲歩して最良の結果を得られた典型だな。

 ここから先、しばらく俺と騎士団員二人はファイマが泊まっている部屋の隣室に寝泊まりすることになる。食事の時も一緒だ。いざという時のために迅速に動くためだ。

 やったね、高級ベッドと美味いご馳走にありつける。
 
テスト勉強やら課題やら就活やらで忙しいです。
次回もおそらく更新は一週間後になってしまうと思いますが気長に待ってください。

ストレス解消+勢いでこんな連載を始めました
『アブソリュート・ストライク 〜防御魔法で天下取り〜』
http://ncode.syosetu.com/n2159dd/
『カンナ』よりコメディ色の強い不定期更新な作品となります。
活動報告にも軽い紹介があるのでどうぞ。

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『カンナのカンナ 間違いで召喚された俺の偽勇者伝説』七月十日より発売中です!
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