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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第六の部 姿を現す異物

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第六十四話 クロエの発言が微妙にジョ◯ョネタなのが気になる

先月末に東京ザ◯ドゥ。今月中盤にセブン◯ドラ◯ン。やりたいゲームテンコ盛り。メタル◯ア5もプレイ中
 
 嫌な予感に俺はいてもたってもいられず、オーガの死体の処理やドラクニルへの緊急連絡は野営地の兵士に任せ、クロエら冒険者・騎士団等が向かった鉱山へとアイスボードを走らせた。出せる範囲の限界速度を発揮すれば、現実世界の車にも匹敵する速度が出た。野営地には物資運搬用の馬もあったが、俺に乗れるはずもない。アイスボードは個人用の高速移動手段としては間違いなく今後も重宝するだろう。

 おかげで一時間は掛かる道程を僅か十分足らずで走破する。前方にゴブリンの大集落がある鉱山を捉える。

「…………ん?」

 鉱山は三日月状をしており、入り口はそのちょうど隙間だ。それを見つけて機首を向けたのだが、入り口の付近に人間に近いシルエットが大量に蠢いているのを発見。最初はゴブリンだと思っていたが、接近するにつれてそれらの顔が『蜥蜴』なのが分かった。

「初めて見るが、アレがリザードマンか」

 どうやら俺の予想は的外れではなかったらしい。確かリザードマンの単独討伐はCランク相当。集団戦ともなればそれ以上の能力を持っている魔獣だ。なるほど、アレとオーガの挟撃を食らえば優秀な冒険者や騎士団の面々でも苦戦を強いられるだろう。オーガの知能はゴブリン並だが、パワーや耐久力は比べものにならないほどに驚異的だ。不意打ちにその攻撃力を浴びせられれば、防御を整えた人間とて危うい。ある意味、考え無しに暴力を振りまくオーガは不確定要素の多い『乱戦』では非常に恐ろしい相手だな。

 入り口で陣取っているのは内外からの侵入、脱出を阻止する為か。ゴブリンとは違った知能的な行動がリザードマンの特徴だ。このまま直進すればそれらの集団と激突は避けられない。

「素直に戦ってやると思うなよ」

 接近する俺の姿にリザードマンが気がつく。「ゲキャァッ」と何ともらしい鳴き声を挙げると、手に持つ武器や盾を構えて俺を待ち構える。内の数体は弓矢を装備し、弦に矢をつがえている。

 いつもなら氷の盾を全面に作り防御を固めるところだが今回は別の手段をとる。俺の進行方向上に、氷の『踏切台』を作る。そして、思考のほぼすべてを速度と姿勢制御に割り当てると、その『踏切台』に一気に乗り上げた。

「あいきゃんふらぁぁぁぁぁいッッッッッ!!!」

 猛スピードそのまま、アイスボードで宙を走るように飛び上がる。リザードマンが放った矢は俺の下方を通り過ぎていった。リザードマン達は慌てて空を駆ける俺に矢の先端を向けるが、その速度に追いつかずに見過ごすほか無かった。斜め四十五度で宙を直進する俺は無事に鉱山の入り口から、中心である広い空間への侵入を果たした。

 既に戦場となっているそこには、二つの集団が戦っていた。騎士団と冒険者達が混合し、一塊になっている人間勢。そして、それを囲う様に布陣しているリザードマン達魔獣勢だ。何というか、見事に『ハメられた』感が、上空から見ると尚更に伝わってくる。

 しかも、魔獣はリザードマンだけではなかった。一際強い気配に目を向けると、ゴブリンはおろかオーガすら越えていそうな巨体が、これまた巨大な二足歩行の蜥蜴の背に乗って洞窟から現れる瞬間だった。気配の『質』からするに、アレがゴブリンの上位個体だろう。下の蜥蜴はリザードマンのそれか。その背後から、大蜥蜴に乗っていない巨大ゴブリンが続けて現れる。確か、ゴブリンの上位個体は推定Bランク。それを大量に相手するとなれば苦戦は必至だ。なるほど、リザードマンだけではなくアレを相手にしながら、更にオーガが背後から襲ってきたらそれこそ悪夢だ。

 複数の上位個体の出現に、人間勢に動揺が走るのが分かった。リザードマンの追加に、上位個体の数も想定より遙かに多いのだから。

 と、そうこうしている内に大蜥蜴に乗ったゴブリンの上位個体が一騎駆けの様に走り出した。狙うのは…………出現した洞窟にもっとも近い位置にいる騎士団の人間だ。他の人間よりも一際巨大な武器を持つ全身甲冑。アレが幻竜騎士団団長のレグルスか。なるほど、動揺の為に生じた隙を逃さずに、大将首を挙げる算段か。

「そうは問屋が出版社停止ってな」

 俺は足裏を凍り付かせて固定したアイスボードを切り離し、平べったい楕円形から、円柱上の片方の先端が丸まった形態ーー砲弾へと変形させる。同時並行で、お馴染みの氷槌を具現し、両手で握って振りかぶる。

 俺は、不意打ちには全力を込めるタイプです。

「どっせいッッ!」

 ーーーーバゴォォォォォォンッッッ!!!

 氷塊同士の激突音が発する。槌からの衝撃に加えて俺のイメージが加わった氷の砲弾は、まさに大砲から発射されたかのような速度で飛来する。

 ーーーーゴガァァァァンッッ!!

 巨大なゴブリンは残り数秒で騎士団団長に届く所で、氷の砲弾の直撃を食らい、弾かれたように大蜥蜴の上から吹き飛ばされた。蜥蜴は主が吹き飛ばされたことに気がつくと、進行方向を反転し地面をごろごろと転がっていくゴブリンの元へと走っていった。

 とりあえず、これで相手の出鼻は挫いたか。魔獣勢の大将格が前触れ無く吹き飛ばされたことに、今度は敵側に大きな動揺が走った。騎竜(便宜上そう呼んでおく)ゴブリンの後に続こうとした他の巨大ゴブリンも、冒険者達を包囲していたリザードマンも動きを止めた。

 そして、俺は気がついた。 

「やっべ、着地考えてなかったッ」

 翼もなにもない俺が直ぐに重力に引かれて落下しなかったのは、アイスボードに精霊の力を働かせていたからだ。が、それを砲弾に変形させて打ち出した今、俺の手元には『浮力』を得た氷はない。そして、新しく作り出して精霊の力を働かせる頃には、俺の身体は地面に叩きつけられる。

 言い訳をさせてくれ。先ほどは時間が無かった。新しく氷の砲弾と大槌を具現させていると時間が掛かる。一秒二秒を争う状況で、どちらか片方は既存の氷を変形させるしかなかったのだ。

 なんて事を考えている内に既に地面にまで残り僅か。仕方がない。仕込んでいた反応氷結界でどうにか衝撃を防ぐしかない。俺は覚悟を決め、結晶にイメージを込めて激突の衝撃に備えた。

「ぐはぁぁッッッ」

 だが、襲ってきたのは想像していた激痛を伴う衝撃よりも遙かに軽いそれだった。や、堅い感触が『ゴリ』と来たが、十分に我慢できる程度だ。

 ーーーーん? 俺以外の悲鳴があがった気がする?

 一瞬、なにが起こったのか不明だったが、混乱する俺の視界に飛び込んできたのは、フルフェイスの鎧兜だった。

「…………な、ないすきゃっち」

 なんと、俺は全身甲冑の騎士様に『お姫様抱っこ』の体勢で受け止められていた。っておい、野郎の姫さん抱っこは誰得だよ。もし俺が見目麗しい美女であればさぞかし絵になる光景だったろうに。などと、こんな状況であっても俺のお馬鹿な思考は平常運転だった。

 鎧騎士さんーー多分、『彼』が幻竜騎士団の団長であるレグルスであろう。

 ………………………………『彼』?

 失礼とは思いつつも、俺は『彼』の顔を凝視した。鎧兜によって隠された表情は伺えないが。隙間から覗く『瞳』は俺と目が合うと僅かに揺らめく。必死に押し止めてはいるが、伝わってくる気配は『安堵』と『戸惑い』だ。

「ちょ、ちょっと通して欲しいでござるッ。今知り合いが空から降ってきた様に見えたでござるッ。え、拙者の見間違いでござるかって? 我が身の正気を疑っているのはむしろ拙者の方でござるよッ!」

 クロエが騎士団達をかき分け、こちらに走り寄ってくる。よかった、どうやら無事らしい。目立った傷はなかったが、胸元の服が破けているのが気になるが。

「よぉクロエ。どうやら俺の渡した結晶が役に立ったらしいな」
「か、かかかかカンナ氏ッ!? 先ほど空から飛んできたのは拙者の見間違いではなかったのでござるかッ。さすがはカンナ氏ッ、人にできないことを平気でなさるッ。拙者、痺れて憧れて感動するでござるッ!」

 こいつはジ○ジョ好きなのか? や、メタ発言は控えておこう。

「団長さんよ、ちょっと降ろしてくれ」

 ぺしぺしと肩を抱く腕を叩くと、『彼』は無言で頷き俺を降ろした。今し方のパラシュート無しプチスカイダイビングの後だと、二本の足で地面を踏める安定感にホッとするな。

「ところでカンナ氏、一体全体どうしてこのような場所に?」
「ああ、ちょいとお届け物があってな」

 俺は辺りを見渡す。アイスボードを砲弾に変形させた時、実はそれに『お届け物』を括り付けていたのだ。流石に砲弾に固定したまま打ち込む訳にもいかないのでそれは解除したが、おかげで宙に放り出す形になってしまった。一応、落下の軌道は俺と一緒だったので近くに落ちていると思うのだが。

「…………貴様の言う届け物とは『コレ』の事か?」

 地獄の底から純度百パーセントの怨嗟を抽出したような声が背後から掛けられた。そちらを見れば団長さんと同じく全身鎧の、だがどうしてか妙にヨレヨレの男だ。彼はお届け物である『長物』を杖の様にして立っていた。

「あ、もしかしてさっきの悲鳴って…………」

 多分、それなりの勢いで落下した『長物』が運悪く彼に直撃したのだろう。

「や、メンゴ♪」
「…………コロス」

 おっと、場を和ませようとした茶目っ気は逆効果だったか。彼は右手に持つ細剣の切っ先を揺らめかせた。

「えっと『レグルス』さんだっけ?」

 今は『この呼び方』で通しておくか。状況的に、余計な詮索をしている暇もないだろうし。

「リーディアルの婆さんからあんたにお届け物だ。何でも、あんた専用に拵えた『戦道具』って話だ」
「ッ、リーディアル様からだとッ」

 レグルスは急いでヨレヨレの鎧騎士に詰め寄ると毟り取るように『長物』を受け取った。勢いがありすぎて鎧騎士が吹き飛ばされた。ちょっとだけ不憫だな。

「ありがたい。コレがあれば状況は少しはマシになるはずだ」

 長物を握る『彼』の声は活力に溢れていた。婆さん、どうやらあんたのサプライズは無駄にならないようだぞ。

 荷物の受け渡しが終わった時点で俺の『仕事』は終わりだ。後は団長さんに受け取りのサインを貰えればこの場にいる意味はない。だが、さすがの俺もこの状況を無視して帰れるほどに人間冷たくはない。というか、帰りたくても鉱山の入り口付近をリザードマンが封鎖している。またジャンプ台を作って上を飛び越えようにも、リザードマンが大量にいるこの空間では真っ直ぐな助走距離は稼げそうにない。

「さて、ここからは白猫カンナの運送屋、アフターケアだ。助太刀するぜ」
「カンナ氏も一緒に戦ってくれるのでござるかっ!?」
「魔獣を全滅させなきゃぁ帰るに帰れないしな」
「やったでござるッ! 竜剣殿ッ、カンナ氏が居ればもはや百人、いや千人力でござる! 大船に乗ったも同然でござるよ!」

 ちょっとクロエさん。持ち上げすぎですよッ!? 俺はちょっと氷が操れるだけの男子高校生ですからね?

「そうだな。君がいれば心強い。悪いが力を貸してくれ」

 え、あんたまで乗るのか団長さん。アンタはいろいろと『知ってる』だろうがッ!

「はッ、たかが冒険者の若造一人が加わった程度で何ができるのだッ。このような下賤な輩、むしろ足手まといですよ団長っ!」

 一番もっともな意見を言ってるのがこの全身鎧なのが非常に腹が立つな。鎧の中に氷詰め込んでやろうか?

「…………ダインよ。お前はどうにも懲りない奴だな」

「ひぃッ! だ、団長?」
「……………………帰ったら入念に『訓練』につきあって貰おうか?」

 この一幕、つい最近にも見た覚えがあるな。

「…………状況があんまり飲み込めねぇんだが、あまり悠長にしてる暇はねぇぞ」

 いつの間にやら登場したガタいの良い槍を担いだオッサンが言った。忘れていたが、現在俺たち人間勢は魔獣に包囲されている最中。しかも前方にはゴブリンの上位個体が複数。今は、大将格の騎竜巨大ゴブリンが吹き飛ばされた影響で魔獣達に動揺が走って動きが止まっているだけだ。

 吹き飛ばされた巨大ゴブリンーージェネラルゴブリンはいつの間にか立ち上がり、大蜥蜴の上に騎乗しようとしていた。よく見ると、鎧の腹部が大きく陥没していた。砲弾が貫通しなかった時点で予想はついていたが、どうやら身に付けている重装甲の鎧を貫くまでは至らなかった様だ。

 ジェネラルゴブリンが動き出すと、それまで惑っていたリザードマン達が一斉に動き出した。どうやら仕切り直しのようだな。

「さて、どうするレグルスさんよ。今の俺に、あれ以上の攻撃力は出せねぇぞ。ヤルには後何発か叩き込まないと駄目だ」
「安心しろ。大蜥蜴に乗っているジェネラルゴブリンの相手は私がする」

「彼」は長物を覆っていた布を引き千切った。姿を現したのは、細長い棒状の代物。最初は「棍」かと思ったのだが、片側の先端が二股に分かれていた。

「少し離れていろ」

 小さく呟くと、彼は傍らに突き刺していた巨剣を地面から引き抜くと、その柄を長物の先端ーー二股の部分に『連結』させた。すると、巨大な剣はその瞬間から巨大な『矛』に変貌していた。

 俺が運んできたのは、矛の『柄』だったらしい。

 言うとおりに俺を含む近くの者が離れると、レグルスは手にした『矛』を試すように一閃した。たったそれだけで空気が悲鳴を上げたような疾風が『彼』を中心に巻き起こった。

 こりゃ確かに『安心』だわな。

「…………先陣は私が切る。君には援護を頼みたい」
「援護必要なのかね? ま、いいさ。引き受けたよ」

 他ならない『彼』に頼まれたのだ。喜んで手を貸そう。鎧姿の男ーー副官は言葉を発しようとしたが、結局は噤んでしまう。レグルスの言葉の『重み』に何ら口を挟むことができなかった。

「クロエ、俺は団長さんの援護に回る。悪いが近づくリザードマンは任せていいか?」
「了解したでござる。不肖このクロエ、我が身を賭してでもカンナ氏に傷一つ負わせないでござるよッ」

 耳と尻尾をピンッと立てると、クロエは力強く頷いた。

「ダイン。お前は他の者の指揮を頼む。ジェネラルゴブリンは足止めさえできれば良い。槍使いの冒険者殿も頼んだ」
「…………分かりました。御武運を」
「ったく、いまいちよくわかってねぇんだがな。クロエの嬢ちゃん、気をつけろよ」

 騎士団員と冒険者はそう言い残し、俺たちの側から離れていった。すぐに後方からダインとやらの大声が響き、騎士団と冒険者達が動き出した。

「我々は、大将格のジェネラルゴブリンを相手にしつつ、リザードマンの殲滅に務める。準備は良いか、二人とも」

 俺は両の手甲を打ち合わせ、クロエは鞘から剣を引き抜いた。

「いつでも良いぞ」
「拙者も同じくでござるッ」

 俺たちの同意に、レグルスは頷き。

「ではーーーーいくぞッ!!」
「「応ッッ!!」」

 さぁ、第二ラウンド、開幕だッ。
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