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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第六の部 姿を現す異物

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第六十話 陰謀のかほり

10/2にアップしましたが、脱「話」の投稿です。
申し訳ありませんでした。
 
 野営地を襲った異常事態を乗り越えはしたが、全ては解決していない。

「なにが何だか、って感じですね」

「だな。唯一の証言者であるギョロ目は消し飛んじまったし」

 何の目的があってこんな場所に召喚術式を設置したのか、その理由は一切合切が不明だ。「お友達を作りたかった」などという和やかムードな動機でないのは確か。だったらオーガなどという「血祭り上等!」な魔獣を呼び出そうとしないだろう。

「そういえば、冒険者殿はどうしてここに召喚術式が敷かれているのに気が付いたのですか? あの召喚術士が構築した人払いの結界は完璧でした。恥ずかしながら、私を含む付近を巡回していた者も誰一人として、発生していた魔力の気配を見逃していましたし」

 そういって兵士のーーって、いい加減名前聞いておこう。どっちがどっちだか判断しにくい。

「話の腰を折って悪いが、いい加減あんたらの名前を教えてくれ。俺はカンナ。冒険者ランクはDだ」
「おっと、これは失礼しました。自分はディアガル帝国幻竜騎士団所属のアストと申します」

 こっちは落ち着いた方の兵士さんだ。

「同じく幻竜騎士団所属のフューズです」

 ノリのいい門番のアンちゃん。

 名乗りだけの簡単な自己紹介だ。ちなみに何度も「兵士さん」と呼んでいることから分かるとおり、彼らは騎士ではなく一兵卒である。

『騎士』とは封建領主から任命された武人を指す。そしてその騎士が率いる一部隊が『騎士団』だ。

 通常、『騎士団』とはその構成を『騎士』で固めたエリート部隊のイメージがある。幻想世界でも現実世界でもそれはさほど変わらない。

 だが、ディアガル帝国は少しだけ毛色が異なる。『騎士』が、その自らの采配を持って隊員を厳選し、それを『一戦力』として国が認められればそれは『騎士団』として扱われる。普段の身分階級はどうあれ、軍隊においてはディアガルは実力主義。有能とあればどんな人物でも起用するスタイルなのだ。

「恥ずかしながら、我々を含め、野営地に残っているのは幻竜騎士団に所属してまだ日が浅い者ばかりです。討伐の前線に向かっている者が数人残っていればオーガを討伐できたでしょうね」

 フューズが悔しげに言った。

「…………え? あれって単独討伐は冒険者ランクBは必要だぞ?」
「幻竜騎士団のほぼ全員は、元Aランクの冒険者だった団長が直々に鍛えていることもあり、ほぼ全員が冒険者Bランクと同等の戦闘力を有しています。副長に至ってはAに限りなく近いBランクの実力でしょうね」
「…………冒険者ギルドにレイド依頼出すまでもなかったんじゃねぇの、今回のゴブリン討伐にさ」

 レイド依頼に名乗りを上げたのは、一部を除きほぼ全てがCランク。その中でも最上位の実力は有しているだろうが、Bランクの実力者でほぼ全員を固めている幻竜騎士団に比べればかなり見劣りする。

「フューズの今言ったBランクというのは『人間』を相手にしたときの強さであり。魔獣の討伐を生業にしている冒険者達とは分野が異なる。同人数であれば魔獣討伐の効率はCランクの冒険者たちよりも随分と劣るだろうな」

 魔獣討伐に限るなら幻竜騎士団三人で冒険者ランクCと同等だとか。まぁ、魔獣の種類によってもこの人数対比は変わるだろうし、一概にそうとも言え無いだろうが。

 話が脇に逸れてしまったな。幻竜騎士団の実力はこれぐらいにして、目下の疑問に会話を戻す。

「ここは順序立てて考えていくか」
「と、言いますと?」

 俺は二人に見えるように、人差し指を一つ立てた。

「あのまま俺がギョロ目に気が付かず、人払いの結界が維持したままの場合を想定すると、どうなる?」
「完成した召喚術式に魔力が注がれ、オーガの永続召喚が発動していたでしょうね」
「となると、だ」

 フューズの言葉が終わってから、指の二本目を立てる。

「あんたらが気が付かない内に、野営地のど真ん中にオーガの大集団が発生したわけだ。で、十分な数が集まったとすると?」
「野営地の中で暴れ回っていたでしょうね。カンナ殿がいなければ、我々はオーガのニ体でさえ討伐できなかった。それが十体も二十体もいたと考えると、ぞっとする」

 顔を少し青くしたアスト。安易に『全滅させられた』とは言いたくなかったのだろうな。

「現実的に見れば、あのギョロ目の『最初の目的』はあんたらを含む野営地の破壊だろうな」

 俺は指の三つ目を立てた。

「野営地が破壊されて困るのは…………まぁ、妥当に考えりゃぁゴブリンの討伐に向かってる騎士団の主力と冒険者達だろうな」

 物事は順序立てて考えていくと、意外とシンプルに答えに行き着く。彩菜に教わった思考法だ。おかげであまり賢いとは言い難い俺でもここまでたどり着く。

「いや、ここが破壊されただけなら問題はない。幻竜騎士団の主力なら、オーガの集団であろうとも対処できるだろう。団員ならともかく、団長は相手が人であろうとも魔獣であろうとも一騎当千の実力者。オーガの十や二十は余裕で殲滅できる」

 アストの言葉に、俺はとある銀髪巨乳エルフを思い出した。やっこさんのパワーならオーガにも真っ正面から対抗できるしな。誇張でも無いだろう。

「それにあちらにはCランク冒険者もいる。物資が破壊されるのは確かに痛いが、オーガの集団は戦力的に考えてあまり脅威ではないな」

 一般市民や実力に劣る兵士ならオーガの集団は悪夢に他なら無いが、幻竜騎士団とCランク冒険者達の組み合わせにとっては『ちょっと強い魔獣』程度に留まる。

 と、ここに来てアストの言葉と俺の言葉の擦れ違いに気が付く。

「ん? 俺が言ったのはこの野営地が破壊されたときの状況だ。別にオーガと幻竜騎士団がぶつかったときの話はしてないぞ?」
「いえ、アストは野営地を破壊した後のオーガがどのような行動に出るかを予想した上での説明ですよ」
「あ、ああ、紛らわしい言い方になってすまない」

 フューズが補足するとアストがすまなそうに言った。

 整理すると、あのままギョロ目が召喚術を成功させれば、この野営地は物資ごと破壊され、オーガは作戦中の幻竜騎士団に…………。

「って、オーガが都合良く幻竜騎士団に突っ込んで行くか?」
「召喚術式には例外なく、召喚した対象の行動を縛る術式が組み込まれている。細かくは無理だが大ざっぱな命令は下せるはずだ。むしろ、それがないと魔術式としては欠陥だ」

 そりゃそうだ。召喚した対象が勝手気ままに動いたら、下手すりゃ召喚術士が殺されてしまう。

「野営地の真ん中に凶暴な魔獣を召喚したんだ。ここを拠点にしている幻竜騎士団を襲うのは自然か」

 結局、オーガが幻竜騎士団+冒険者達の相手になるには役者不足であったっぽいがな。ギョロ目の行動は結局、騎士団の手間を増やし、物資を破壊するだけに終わる。

 ーーーー果たしてそれだけで済む問題か?

 どうにもスッキリしないな。何かを見落としているような気がする。

 その時だ。

 脳裏に『バキンッ』と、硬質な物体が砕けるような音がした。

「ーーーーッ」

 痛みこそ無かったが、反射的に俺は耳元に手をやった。

「…………カンナ殿?」

 アストが声をかけ、フューズも首を傾げるがそれに言葉を返せるほどの余裕はなかった。

 何だ今のは。感触としては、防具の裏に仕込んである反応氷結界が砕けたときに近い。だが、先ほどのオーガ戦では一撃も食らっておらず、仕込んでいた氷結晶は全て無事だ。

 …………いや、違う。

 俺が今持っている氷結晶の他にもう一つ、あらかじめ作っておいた氷結晶があるではないか。

「クロエに渡した氷結晶かッ」

 あの感触はおそらく、彼女に渡した氷結晶が反応氷結界の効果を経て砕けたのだ。これほどの遠距離でも発動の有無が伝わってきたのは予想外だが、それどころではない。

 偶然にも致命傷を受けた可能性もあるが、考えにくい。

 クロエは純粋な技量で言えば俺が足下にも及ばない手練れだ。格下のゴブリンといえでも油断はないはず。それが百を越える集団なら尚更だ。加えて推定Bランクとされているゴブリンの上位個体も確認されている。隙を見せるなどありえない。

「…………『ゴブリン』が相手なら?」

 とてつもなく嫌な予感がこみ上げてきた。

 そもそもの前提が間違っているのではないだろうか。

 この場で俺たちは、オーガは作戦中の騎士団、冒険者の合同部隊の相手にはなりえないと結論を出した。だがそれは『合同部隊の相手がゴブリンの大集団』というのが前提。数を揃えたところでゴブリンは雑魚中の雑魚だ。手練れならゴブリンの軍勢を相手に背後から襲いかかるオーガも相手にできる。

 けれども、

「…………もし万が一、前方の主力部隊が苦戦していた場合に、オーガが奇襲を仕掛けたとしたら」

 俺が出した結論に、アストとフューズが驚愕した。

「ま、まさか。幻竜騎士団と冒険者達の合同部隊がゴブリンを相手に苦戦するとでもおっしゃるのですかッ」
「いや、違う。カンナ殿が言いたいことはつまり、相手が『ゴブリン』だけとは限らない、という意味だッ」

 ようやく答えが揃ってきたな。

 今回発生したゴブリンの大発生。上位個体が生まれた為の希有な自然現象だとばかり思っていたが、人為的に発生した疑いが出てきたな。

 ゴブリン以上の戦闘力を持った『何か』と、オーガの集団による前後からの挟撃。ギョロ目がやりたかった目的はおそらくこれだ。

「くそッ、なんで行く先々で面倒が発生するのかね!」

 運命の神様に悪態をつきつつ、俺はクロエが今まさに戦っているだろう方面を睨みつけた。
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