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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第六の部 姿を現す異物

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第五十四話 四つの次元的なポケットはありません

大変お待たせしました。
けれどもいつもの文章量の半分です。
 

 早朝にクロエを含むレイド依頼を受注した冒険者たちを乗せた列車を見送り、俺はギルドへ向かった。Dランクの依頼を受けるためだ。

 一つ上のランクに昇格したため、ギルドカードの色は緑色に変化。施されていた柄もEよりは幾分か凝った物になっている。現実世界にあった電車の定期券と同じで、カードそのものは同一の物で色と柄だけを特殊な魔術具で変化させているのだ。

 Dランクの物となったカードは四日前の時点で受け取っていたが、Dランクの依頼を受けるのは実は今日が初めてだ。一つ上のランクになった為、これを機に『新技』を開発していたのである。ただし、この技は個人で習得する事ができず誰かの協力が不可欠だ。

 幸いにも、レイドの依頼を受けたクロエはその出発の日まで依頼は受けずに買い出しや装備の準備を中心に動き依頼をうけていなかった。なので暇な時間を作ってもらい新技を開発する手助けをしてもらった。

 おかげで、昨日のうちに形にする事ができたのだ。

 そのお礼、という訳でもないが、新技の『成果』は彼女に預けてある。理論的…………とは言い難いが、俺の想像が正しければ今回の技は距離が離れていても条件さえ満たせれば発動する類。しかし、大幅に距離を離しての実験をする暇は流石になかったので、一種の御守り代わりぐらいの気持ちだ。それでもクロエにはいたく感謝された。

 そんなこんなで、気を新たにした俺はギルドを訪れ、Dランクの依頼が張られている掲示板の前に来る。

 EとDの大きな差は、掲示板に『パーティー』の募集が追加されている所だ。無論、祝い事の方ではなく『徒党』の方である。一時的、継続的に数人の冒険者がチームを結成し、依頼に望むのだ。もちろん、Eランクであっても冒険者が複数人組んで依頼に望むことはできるが、そもそもEランクに回される依頼はそのランクの人間が単独でこなせる物に限られている。対してDランクの依頼からは、ギルドのほうから依頼をこなす推奨人数が提示されるのだ。

 これは単純な依頼の難易度の話ではない。Dランクからは弱個体とはいえ人よりも大きな体格を持つ魔獣も狩猟対象になってくる。特定部位だけをはぎ取る類なら良いが、一頭まるまるを欲する依頼となれば、それを単独で持ち帰らなければならない。となると、獲物を運搬する役割と周囲を警戒する役割と、最低二人はほしい。

 この世界はリアルなファンタジーだ。青い耳無し猫型ロボットが持つ超便利ポケットは存在しないのだ。

 かといって、それに近しいアイテムや別の方向性で物資の運搬に役立つアイテムは実は存在するが、珍しい魔術具らしくすこぶる高価なので今は割愛しよう。

 いつもの様に、誰に向けたかは謎の設定説明を脳裏でしながら、俺はDランクの依頼状に目を通していく。判断基準はDランクの魔獣たちをいかに美味しく頂くかの順番だ。もちろん、依頼の詳細内容を考え、単独で問題なく行えるかに限られてくるが。

 …………と、依頼状と睨めっこ続けていると不意に、背筋がゾワリとした。危機を、あるいは恐怖を抱くほどではないが、何ともいえない気持ち悪さが這い寄った。

 気配の元に視線を送ると、見覚えのある整った顔立ちの青年。名前は忘れたが、俺とクロエに決闘を挑んでボロクソに負けたあの貴族の坊ちゃんだった。

 しかし、はて? 彼は俺と同じ登録試験でEランクの冒険者になったはずだ。どうしてDランクの依頼が張られている掲示板の場所にいるのだろうか。

 や、俺だって短期間でDランクに昇格した特例がある。もしかしたら坊ちゃんも優秀な実績を積んで昇格したのかもしれない。坊ちゃんは『イワトサカトカゲ』の狩猟で、尻拭いが必要なほどの最低評価を得ていたはずだが、その後に改善されたのか。

 そんなことを考えていると、彼はこちらの視線に気がついたのか、俺の方に目を向けた。俺の顔を確認するなり、一目で感じ取れるほどの激しい憎悪の感情を向け、しかしそれをぶちまけることもなく踵を返して掲示板から離れていった。

 俺はどうにも気になり、受付にいるシナディさんの元へ向かった。

「シナディさん、ちょっと良いですか?」
「あ、こんにちはカンナさん、依頼の受注ですか?」
「や、そうではないんですがね」

 俺はDランクの掲示板の前にいた坊ちゃんの事を伝えた。話を聞いたシナディさんは少し眉をひそめた。

「それはおかしいですね。最近は積極的に依頼を受けていたようですが、短期間でDランクになれるほどではなかったはずですね」

 シナディさんは机の下から書類の束を取り出した。

「…………ええ、間違いありませんね。彼は未だにEランクです」
「平均から考えると、Dランクに上がるのってどのくらいの時間がかかるんですか?」
「だいたいの冒険者は無難に実績を重ねれば半年ほどでDに昇格できます。そこから先は実績の判定が厳しくなるので簡単には昇格できませんが」

 つまり、どんな冒険者でも最低でDランクには昇格できるのだ。もっとも、冒険者稼業が肌に合わなかったり、雑魚相手に油断して致命傷を負ってしまう者も必ず出てくるので『確実に』とまでは届かないが。

「…………質問しといてあれですが、これって個人情報の漏洩とか大丈夫ですか?」
「本当は駄目ですが、この短い期間ながらカンナさんの人柄は理解できていると思います。私は問題ないと判断しました」
「あ、左様で」

 や、この程度の情報を悪用できるほど俺の頭は出来が良くないから問題はないのだが。

「カンナさんのお話はわかりました。ですが、彼は別に上位ランクの依頼を受けたのではなく、ただ依頼を見ていただけなのでこれといった処罰はできませんね。低ランクの冒険者が上のランクの依頼を見てやる気を奮い立たせる、という行動も珍しくはありませんから」

 名のある魔獣の依頼状の前で『こいつを狩って名を上げてやる』と意気込むということか。ゲームでも将来的に強いボスを倒すシーンを想像してレベルアップに勤しむしな。 

 ただ、あの坊ちゃんがそんな青春熱血真っ盛りな思考に行き着くだろうか。どうにも下手な事を考えている様な気がしてならない。

「…………や、ぶっちゃけ俺とは関係ないか」

 あの坊ちゃんが知らないところで野垂れ死にしても俺の預かり知らぬ所だ。特に思い入れのある相手でもないし、こちらに被害がでない限りは関係ないか。

 結論に至った俺は再度依頼状の物色に勤しむ。すると、今度は不思議と一発で気になる依頼を発見したのだ。

 ーーーーベニハネ鳥の卵狩猟。

「魔獣の卵料理はまだ食べたことないな」

 俺は依頼状を掲示板から剥がしたのだった。
愛用道具の不調は解消されたのですが、物語の進行に悩み中です。
おおまかな骨組みは出来上がっているのですが、細かい部分が非常に難産です。

感想や評価点、レビューは随時募集中です。
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