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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第十の部 真実の一端

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第百八十一話 火種を全て吹き飛ばせば騒ぎは消滅する。被害が凄いけど


 お披露目パーティーが行われる会場はフォースリン家の屋敷だ。馬車の客席に乗った俺たちは敷地内に入るとすぐさま客間の一つに通された。

「あー、やだやだ。なんかもう帰りたくなってきたわぁ」

 似たよなことを言った覚えがあるな。つい最近。

「落ち着きなさいカンナ。……気持ちは分からなく無いけどね」

 客間に入るなりソファーに腰を下ろした俺に、ファイマが苦笑した。クロエも曖昧な表情を浮かべていたが、おそらく気持ち的には俺に近いだろう。

 馬車を降りた時点で屋敷で働く使用人に案内されたのだが、その時の態度がいや鼻についた。表面上は取り繕ってはいただろうが、所々にこちらを嘲っているような気配が滲んでいた。 それに、一足早くに訪れていた招待客に至っては隠す気はほとんど無い。こちらを見るなり視線が侮蔑のそれになり、近くにいた他の招待客とひそひそ話をしていた。あれ、絶対陰口言ってるよ。

 本番が開始される前からこんな状況だ。始まりが近づけば更に招待客は増える。いざパーティーが開始されれば、俺たちはそんなエルフ達の渦中に飛び込まなければならないのだ。嫌でも気が滅入ってくる。

「でも、それがこの国にとっては当たり前の反応なんでしょう。街を歩いてると、周囲の反応は似たようなものだったもの」
「先ほどよりかは幾分か控えめだったでござるが……」

 肩を竦めるファイマに、クロエも嘆息しながら同意する。

 ファイマはここ数日間はエルダフォスの魔術体系を学ぼうと街に出て書店回りをしている。もちろん本命は俺が元の世界へ帰るための手掛かりだ。クロエとキスカも一緒だ。

 その間に街全体の雰囲気を聞いたところ。

 ──とにかく外様アウェー感が半端ではなかったらしい。

 誰も彼もが彼女たちが妙な真似をしないか監視しているようにさえ思えるほど視線を浴びせられとか。だからといって直接手出しをしてくるような輩はいなかったが、おかげさまで気疲れが凄かったようだ。

 確実に向けられる視線のウチの幾つかは、間違いなくクロエとファイマのおっぱいに向けられていたとおもう。豊かな胸への羨望は、他種族への忌避感を更に上回るはずだ。

「拙者、ずっと見張られているような気がして落ち着かなかったでござるよ」

 獣人族であるクロエは人族に比べて気配に敏感だ。他の面子よりも色々と肌で感じているのだろう。

「ところでカンナ氏。今日はまだレアル殿とは?」
「まだ顔を合わせてねぇな」

 王弟の血族を最高級とはいえ街の宿に泊めるわけにもいかなかった。そのため、レアルは王と対面した日から、フォースリン家の屋敷に泊まっている。

 王家の公務補佐を担っている要人の住まいだけあって、その広さはとんでもなくデカかった。俺が通っていた高校がまるまる収まってしまうくらいだ。あれだけ広いと迷ってしまいそうだというのが俺の素直な感想だ。

 本来ならば(面目は)護衛である俺も一緒にフォースリンの屋敷に泊まるべきなのだが、こちらは先方が断固拒否してきた。『いくら護衛とはいえ、年頃の男女が同じ屋根の下で寝泊まりするなど言語道断だ!!』と、出会って早々に孫馬鹿を炸裂したフォースリンによって、俺は屋敷を閉め出されたのだ。代わりに、幻竜騎士団から何人かが身辺の警護に就いている。こちらはレグルスレアルの部下と言うことで許可が下りた。

 因みに、レアルの血筋に関しては、レアル直々に頼まれ俺の口からディアガルから来た面々に説明してある。俺の口からだけでは信じ切れないだろうと彼女直筆の手紙も書いて貰った。皆、目玉が飛び出るほど驚いていたな。

 だが、驚きはしたものの幻竜騎士達の動揺は長続きしなかった。

 幻竜騎士団はレアルが個人的にスカウトした者が大半であり、己達の団長がどこの血筋でどこの出身であれ、レアル本人への忠誠心に揺らぎはないようだ。

 天竜騎士の方に関しては、こちらはレアルの要請では無く皇帝の勅命で任務に同行している。レアルがやんごとなき相手だろうがすることは変わらない。こちらはこちらで安定してるな。

 話を戻すが、泊まり込むのが駄目であって、俺は毎日フォースリの屋敷には足を運んでいた。フォースリンに渋い顔はされたが、この辺りはやはり〝レアルの護衛〟を〝皇帝直々に指名された〟という事実を盾にごり押しさせて貰った。身辺を幻竜騎士が固めているとはいえ、俺自身も彼女の様子を確認しておく必要があったし、純粋に彼女が心配だった

 生まれて初めて訪れる祖父の家で、レアルは中々に居心地の悪そうな様子だった。

 そりゃそうだ。つい先日までは軍属として飾りっ気のない屯所で生活を送っていたのだ。それが一時的とはいえ豪邸住まいになったのだから無理もない。

 己がエルダフォス王家の血筋であることに関しては、当初は驚いていたがすぐさま冷静さを取り戻したようだ。元々、もう片方の血筋はディアガル皇家であるし、その辺りの受け入れ方は心得ていたのかも知れないな。

 だが、顔を合わせたのは一昨日の晩が最後。それから今日まではお披露目の準備と言うことで屋敷に入ることが出来なかったのだ。

 そしてようやく、お披露目の当日である今晩に、数日ぶりに顔を合わせることが出来る。

 この部屋に入る直前に、身辺警護を頼まれた幻竜騎士と少し言葉を交わしたが、レアルの様子やその身辺に特別な変化は無かったようだ。相変わらず居心地が悪そうな感じはしていたようだが。

 安心すると同時に、同じくらい不安もあった。

「こんな中でお披露目なんぞして本当に大丈夫なのかね」
「レアルさんが王族の血筋であるのはもう知れ渡っているのでしょう?」
「といっても、血筋の半分は竜人族だからなぁ。どこまで効果があるかは疑問だ」

 この場にいる二人にも、レアルの出生の事実を簡単に説明してある。もちろん、両親にまつわる話は抜きにして、フォースリンが広めた噂を認めるような形でだ。

「……王の血縁であることを嫌々ながらも受け入れるのが半分。むしろ外部の血が混ざったことに強い忌避感を抱くのがもう半分、といったところでしょうね」
「喜んで受け入れるって選択肢は……」
「無いでしょうね。今の時点では。いたとしても一握りのごく少数に限られるでしょう」

 特に問題なのは、やはりレアルの父親が竜人族である事だろう。王が如何に将来の友好関係を考えてと説明しても、竜人族と聞いて反射的に嫌悪感を抱く者は多いはず。頭で理屈は分かっていても、年月を経て染みついた怒りや憎しみがそれで薄まるはずもない。

「……お披露目なんてやって本当に大丈夫なのかねこれ。どこかの誰かがとち狂って騒ぎでも起こさないか?」
「「……………………」」
「おい、お嬢さん方。そこでどうして俺のことをじっと見てるんだ」
「「これまで騒ぎの火種に率先して爆薬を投げ込んで来た人が何を言うのか、と思っただけ(でござる)」」
「おまえら息ぴったりだな!?」

 長い台詞を一字一句間違えずにシンクロさせてきた女性陣に、俺は慄くのであった。
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