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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第十の部 真実の一端

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第百五十五話 躯は枯れているが懐はほかほか

部屋が混沌に飲み込まれていたので新たに秩序を取り戻す。だが、いずれはやがてまた混沌の海にのまれることであろう。世の真理とは常に混沌と秩序が入れ替わりなのである。
……お部屋が汚かったので掃除しただけです。散乱した本の数がやばかった。

 話に区切りが付いたのだろう。婆さんは大きく息を吐き出してから乾いた喉をお茶で潤した。

「お茶請け話にしちゃぁ随分と重い話になっちまったね」

 婆さんがそれまでの空気を払拭するように明るく言ったが、俺は素直に頷けなかった。

 これってレアルに断りを入れずに話して良いないようだったのか? や、今の話を聞く限りではリーディアルの婆さんがレアルの育ての親だ。親直々の語りであったし、ぎりぎり道理は通ると思っておこう。

「さて、世間話はここまでにしておこうか」

 世間話、と呼ぶには相当に濃い内容だったがな。婆さんの言葉には同意だったのでツッコミは控えた。

「気を取り直して、あんたを呼び出した本題に入ろう」
「で、結局何の用事だったんだ?」
「まぁそう焦りなさんな。今から説明していくから。それに用件は一つだけじゃないんだよ」

 まずはこいつだ、と婆さんは懐から一枚の封筒を取り出し、俺に差し出した。

 受け取り触ってみると上質な素材でできているのが分かり、封に使われている蝋の紋章も八枚の翼を持った竜を象ったものとこれまた凝っていた。

恋文ラブレター……って感じじゃないよな」
「あんたが護衛の依頼で倒れている間に、私の所に届いたもんだ」

 婆さんに促され、俺はその場で封蝋を割って中の手紙を取り出した。

「えーっと、なになに?」

 ──────────……………………。

 しばらく黙って書面に目を通していると、だんだんと眉間に皺が寄るのを感じていた。指を当ててグリグリと揉みほぐし、婆さんに聞いた。

「なぁ、この内容は婆さんも知ってるのか?」
「口頭では差出人──正確にはその代理人からある程度は。詳細な内容は知らんよ」

 手紙の内容は──ディアガル皇家からの感謝状であった。

 ──国賓でありユルフィリアの王女であるファルマリアスを助け、なおかつ大いなる祝福アークブレスの一人と戦いこれを退けた功績をここに賞する。

 もの凄く端的に要約するとこんな内容だ。ご丁寧に、手紙の端っこには封蝋と同じ八枚翼の竜を象った印が押されている。

「この八枚翼の竜って──」
「その封蝋と印は皇家の者だけが使用できる由緒正しいものだ。偽造しようとすれば重罪に処される」

 言い換えれば、この手紙は正式に皇家から送られたものであるとの証左であった。

「本来ならAランクの冒険者でも稀にしか貰えないような感謝の手紙だ。まさか冒険者に成り立てほやほやの新人に送られるとはねぇ」

「本当に何をしでかしたんだか」と感心したような呆れたような婆さんの表情に、俺はどう言葉を返せばいいのか分からなかった。便宜的なものを計ってくれるとは思っていたが、まさかこういった形とは想像もしていなかった。

 婆さんには『感謝状』ということだけは伝わっているが具体的になんに対するものかは伏せられていたようだ。だとしても、その重大性は婆さんも深く承知しているらしい。

「いくらギルドがお国とは別組織とはいえ、皇家からの感謝状を無碍には出来ない。冒険者の実績としちゃ最上級のものを貰ったようだね」
「……分不相応な気がして仕方がない」
「ディアガル皇家──ひいてはこの帝国は実力主義の国だ。ゆえに皇家が感謝状をしたためたということは、世辞ではなく純粋にあんたの成果を認めたんだ。誇ってもいい」
「でもなぁ……」

 なおも受け入れがたい俺に、婆さんは少し口調を強めた。

「驕り高ぶらない姿勢としてなら褒められるかも知れないが、その過小評価すぎるところはあんたの悪癖だ。ひいてはあんたを認めた人物を貶める行為にもなる。素直に受け取りな」
「うっ……りょ、了解」

 現実世界では〝認められる〟ということが非常に少なかったために、こうして正当に評価されと及び腰になってしまうのは、確かに俺の悪い癖だろう。この世界に来てから褒められる機会が多いくなったが、未だに慣れない。

「……ま、畏まっちまう小僧の気持ちも分からんでもないよ。何せ相手が皇家だからねぇ。私も現役時代に一つか二つしか貰えなかったよ」
「や、一つも二つも貰えてる時点で十分凄すぎる事実だと思うぞ、俺は」
「あの頃は私も若かったからねぇ。無鉄砲に色々とやらかしたもんだ」

 その〝無鉄砲〟を具体的に聞いてみたいような、怖いような。判断に迷ったが聞かないことにした。

「この感謝状と共に、あんたには依頼主からとは別個に皇家から報奨金が支払われることとなった」
「お、マジで? いくら?」
「金貨百枚だ」
「……え、そんなに?」

 日本円換算で一千万円近く。高校生が稼げる額を軽く超越しているのは俺の気のせいではないはずだ。

「鉱山での一件といい今回の働きといい、稼ぎだけに限定したらもはやBランクの上位陣にも匹敵するね」

 使う機会があまりないので金が貯まる一方だ。貯蓄の分を合計すると、金貨二百枚──日本円換算で二千万円近くの貯金がある。そろそろ一軒家とか現金払いで購入できそうだ。

 額のデカさに気圧されていると俺に、婆さんが更に話を続けた。

「で、次の用件だ」
「まだあんのかよ。感謝状と報奨金の額で俺はもう一杯一杯だ。これ以上は食あたり気味だっての」

 俺はぐでっとソファーに背中を預けてだらけた。

「あんたにはBランク・・・・への昇格試験依頼を受けてもらう」

 婆さんはこちらの言葉をにべもなく切り捨てると、とんでもないことを言いだした。
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