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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第二の部 異端なる邂逅

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第十三話 最近は傍観者サイドの主人公とか多いけどな

とうとう書き溜めていた分を出し尽くす。目指せ一週間更新
 
 突然ではあるが、俺の幼なじみの話をしようか。

 腐れ縁こと出雲有月は、ラノベ的登場キャラの役割に当てはまると『主人公』の枠に入る。不思議なくらいーーむしろ殺意を覚えたくなる位に面倒事に巻き込まれ、そしてその友人である俺をも巻き込んでくれる、厄介極まりない役柄だ。

 なまじっか能力が高いので、有月は出会った事件に何かと首を突っ込み、解決に乗りだそうとする。それは別に良い。俺も人の子なので、人道的に見過ごせない時には協力を惜しむ積もりはない。ぶっちゃけ、人様の人生を台無しにしようとする外道共に慈悲を掛けるつもりは無い。

 ところがどっこい、問題なのは有月こと馬鹿の短絡的行動だ。この馬鹿は全国模試でトップクラスの成績を誇るのに、悲しいほどに馬鹿なのである。知識はあれど知恵はない典型だ。

 何が悪いかって? あのヘタレイケメンは、目前の事件解決を最優先事項に置き、その後に起こり得る二次災害は計算度外視なのだ。

 お陰で俺は、同校のいじめっ子どもに囲まれたり、他校の不良共に囲まれたり、借金取りのやくざに囲まれたり、とある少女のファン共に囲まれたり、とあるお嬢様の護衛衆に囲まれたり。一度か二度位は本気で命の危機を覚えたりもした。俺の数少ない取り柄の一つにあるしぶとさは、これによって培われたといっても過言ではない。

 もちろん、最終的には有月の首根っこを捕まえて、無理矢理事件解決を手伝わせた。奴は馬鹿ではあるが有能な馬鹿である。順序立てて物事を一つ一つ解決させていけば、最後はすっきりと収まる。

 …………だいぶん話が逸れたな。最初っから逸れまくりだ。

 身近に主人公体質のヘタレがいたせいで、俺はよく事件に巻き込まれてきた。が、それはヘタレが巻き込まれたのであって、俺が巻き込まれたわけではない。ヘタレが巻き込まれたから、その巻き添えが俺にも及んでいた。

 長くなった。つまり、俺が言いたいのは。

「俺は主人公体質じゃねぇ!」

 という心からの叫び。


(だから、たまたま寄った食料品売場に、何で昨日の赤毛巨乳がいるんだよ。どんな偶然だよ)

 朝に遅刻で道を全力疾走してパンを口に咥えた美少女転校生とぶつかり合うぐらいの、テンプレかつ現実にはあり得ない展開である。俺が主人公体質を忌避する理由もわかったろう? もう厄介事の予感しかしない。

 宿で昼食を取った後、俺たちは予定通りに明日以降の旅路に必要な食料品等を買いに市場に繰り出していた。金銭のやり取りは殆どレアルで、俺は荷物持ちをしながらそのやり取りを観察する。今後、一人で買い物をする機会があるだろうし、買い物をするときの常識的な対応を覚えるためだ。

 で、食料品を買い込む段階にいたり、最初の食料品売場にきた段階で、最初のモノローグに戻る。

「ん? どうしたカンナ」
「…………レアル、俺はちょいと急用を思い出したから宿に帰る。後の買い物は頼んだ」
「へ? あ、ちょっとおい!」

 俺は雑貨の入った小物を、咎めようとする相棒に押しつける。

 まだだ。赤毛女は此方に気がついていない。目の前にある商品を見定めるように観察したままだ。何かの拍子がなければしばらくはあのまま。音もなく、自然な形で立ち去れば問題はーー。

「ーーお嬢様、こちらの買い出しは終わりました」

 神の悪意か、悪魔の悪戯か。回れ右になる直前である。声に引かれ、赤毛女が売り物から目を離し背後を振り返った。

 赤毛女の目が、俺の姿をバッチリ視界に収めた。

「…………………………………………」
「…………………………………………」

 時が凍り付いた。

「凍り付かせるのは君の専売特許でしょ?」

 どこぞの精霊様を幻視する。やかましいわッ。

「………………………………(ダッシュ!)」
「………………………………ッ、待ちなさい!」

 五秒ぐらいの時空凍結(比喩)の後、先に元の時間に戻ったのは俺の方だった。すぐさま回れ右をして全力で走りだした。一拍遅れて、赤毛女が鋭い声を上げた。もちろんここで待つ馬鹿はいない。

「ーーーーッ、その男を捕まえなさい」

 赤毛女を振り向かせた人物。紙袋を抱えた冒険者風の男は女の声に反応するとためらい無く荷物を手放し、俺を捕獲しようと両手を広げて立ちふさがる。

「ーーーーッ」
「なにッーーーがぁッ」

 妨害者の前で減速すると思っていただろう、だが俺は逆に男を正面にしてあえて速度を上げた。驚く男を余所に、俺は彼の手の動きに注意を払い、その左脇腹辺りをねらってぶつかった。衝突の直前、左手を男の脇に、右手を伸ばされた腕に添える形で両手を捻り込み、その脇下をこじ開けるように駆け抜ける。

 俺の躯が完全に通る寸前、男の右手が俺の服の裾を狙うが、それを予想していた俺は躯の勢いをそのままに水平方向に一回転、服の裾を掴もうとする指先を躯の遠心力を使って強引に引き剥がした。

 舐めるなよ。こちとら伊達に様々な包囲網を突破してきていない。たかが一人程度で俺の脱出技術を阻止できると思わないでもらいたい。自慢できる技能でもないがな!


 にしても、赤毛と冒険者の男は主従関係にあるようだ。赤毛の言葉に脊髄反射で従っていたし。お嬢様って呼ばれていたし。

 くそっ、こんなフラグは普通は有月の担当なんだがな。有月が『身近』にいない今、奴の悪運が俺に降りかかってきてんのか?

 とりあえず俺は、ひたすらに町中を駆け抜けていった。


 走りに走った俺だったが、土地勘のない町中を周囲をろくに観察せずに逃げたのが悪かった。勢いで駆け込んだ路地裏だったが、その到達点は建物の壁に囲われた袋小路。

「逃がさないわよッ」
「げッ…………」

 一度は撒いたはずの赤毛女が奇しくも追いつき、唯一の逃げ道を塞いでしまう。続けて、複数人の冒険者ーーおそらく全員が赤毛女の従者ーーが路地裏になだれ込んできた。

 分かり易いほどの袋の鼠だ。

「ふん、私に声を掛けられながらも逃げ出すなんて、舐められたものね」

 獲物を追いつめた事で優越感に浸っているのか、勝ち誇った笑みで腕を前で組む赤毛。むぅ、胸が強調される格好だ。思わずガン見する。やはり見事である。

 赤毛が、俺の視線が己の顔に向いていないのに気がつく。

「って、あなたどこを視ているの?」
「その我が儘なおっぱいを」
「ーーーーッ…………しょ、正直に答えるのが美学とでも思って?」
「むっつりよりおーぷんであれ! が俺の信条だ」

 俺の真心からの(使い方あってるか?)返答に赤毛が怯み、拍子に乳も揺れる。昨日からどうにも頭の中がおかしい。乳の事ばかり考えている気がする。

「…………下賤な平民らしい、獣じみた発言ですこと」
「男ってのは、誰も彼もが心の中に獣を飼ってるんだ。女性の胸に実るたわわな果実を貪りたいと常日頃に考えているんだ!」

 普段の俺なら絶対に発言しない台詞だ。たぶん、昨日からのアレで性欲が溜まってるせいだ。でなけりゃ心の中の本音を口にしたりしない。

「それはあなただけですッ」
「いんや、みんな同じだね。そこの冒険者どもッ、考えなかったとは言わせないぞ。隣を併走しているときに、赤毛の胸がたゆんたゆんに揺れているを見て何も想像しなかったとはッ」

 話を振られて、ぎくりと肩を振るわせる野郎陣。彼らにとっての幸運は、赤毛が俺の言葉を鼻で笑い、背後を振り返らなかった事だ。

「彼らは私の家に仕える忠実な部下たちです。いかに私の美貌であろうとも、そのような目を向けるはずが無いわ」

 信頼を寄せているようだが、奴らは俺と目を合わせようとしない。よかったね、と他人事のように念を送る。

 冒険者風従者たちの尊厳が辛うじて保たれた所で、俺は改めて思案する。

 逃げ場は正面方向に限られ、赤毛を含んで障害が四人立ちふさがっている。つい先ほどのような振り払い方は通用しないだろう。

 実力行使でいくか? 初見での不意打ちなら、たぶん問題なく突破できる。ただ、昼間の町中で、というシチュエーションと今朝のレアルとの会話が待ったをかける。切羽詰まるほどの危機的状況ではない。

「さぁ、教えてちょうだい。昨日、あなたはいったい何をしたの? 何をどうすればあの短時間で私に術式を悟らせないような構築ができたのか」

 真剣な眼差しが、昨夜に俺の胸ぐらを引き寄せたときと同じだ。

「…………企業秘密ってことじゃだめか?」
「だめね。昨日からあたしなりに色々と考察してみたけど、あの氷魔術は異様すぎだわ。どれほどの技術があって、優れた術式があったとしても、魔力を練り上げてから術式の構築、そして発動の瞬間にまで一切魔力を感じなかった。一人の魔術士としては見過ごすわけにはいかないの」

 お陰で寝不足だわ、とぼやいた。

「もちろん、ただとは言わない。相応の礼はするつもりよ。魔術式の理論は言い値で買うわ。そうね、学会にでも発表して認められるなら、その最大協力者として名を残すことも約束する。その他に発生する経済効果の何割かも保証する」

 初対面の時と同じで、一人で勝手に話を進めていくなこの赤毛さん。 

「光栄に思ってほしいわ。このあたしが、それほどまでにあなたの能力を買っている事実に」

 そして清々しい位に唯我独尊である。ぶっちゃけ、俺はあなたの身分とかこれっぽっちも知らないんですけどね。雰囲気的に貴族であろうとは思うんだが。

 …………はて? 首を傾げる。

 赤毛さんの気配ーー魔力に違和感を覚えた。ごく最近に、似た魔力を感じた記憶がある。けど、思い出せない。記憶を探ろうとすると、胸の奥から凄まじい『嫌悪』が吹き出してくる。赤毛さんに対しては欠片ほどの敵意は感じないのに、記憶の中の『似た誰か』さんには凄まじく怒りを覚えている。

「…………なぁ、赤毛さん」
「ーーーーそれってあたしのこと?」
「この場に赤毛はあんただけだろう。名前知らないし」

 あ、と赤毛さんは呆けた。今更に思い出したようだ。

 魔力の気配がーー雰囲気が似ているという事は、その誰かが赤毛さんに近しい人物の可能性がある。いの一番に浮かんだのは、血の繋がり。

「もしかして、あんたって妹か弟とか…………」

 その先を口にする前に、俺の背筋がビリっと痺れた。

 この感覚は覚えがある。麓の村を出発してから何度か感じたこれは。

「ーーーー殺気ッ」

 はっとした俺は反射的に手の中に握り拳ほどの氷を生み出し、全力で投擲した。俺の突然の行動に前方の赤毛さんたちはぎょっと凍り付くが、狙いは彼女たちではない。氷の投球は赤毛さん達の横を走り後ろに突き抜けて『何か』に衝突し、爆発が起こった。

 衝撃の煽りを受け、赤毛さんは地面に倒れた。他の従者たちも倒れはしなかったがバランスを崩したたらを振む。

 危なかった。後もう少し手前で爆発していたら、少なからずの負傷者がでていたかも知れない。そして、赤毛さん達のど真ん中でだったら、爆心地にいた彼女らはバラバラに吹き飛んでいた。

 爆発の後に、新しい足音が近づいてくる。冒険者風の出で立ちが六人。顔を布で覆い隠しているので人相の把握はできない。とりあえず、進んで交友関係を結びたくはない格好だ。
 
今更ですが、サブタイトルの付け方は銀髪天然パーマで糖分好きの侍が出てくる漫画を参考?にして作ってます。たまにサブタイトルだけ読み直してたりします。


次回はバトルのお話
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