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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第九の部 狂う人形

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第百二十二話 周囲が彼のシリアスを許さない場合もあったりする

「下手に取り繕うつもりは無いみたいだな」
「本来ならならもう少し粘るんですがね。どうやらあなたの中では確信があるようだ。たとえ周囲が止めたとしても、倒れている僕にとどめを刺すぐらいのことはするでしょう。人質であったはず・・の僕を躊躇無く蹴り飛ばすなんて暴挙を仕出かす人だからね」

 マリト──『彼』の予想は正しい。あのまま死んだふりを続けていれば、俺は特大の氷塊を叩きつけるつもりだった。

「自分の手は汚さず、人様を好き勝手に操る輩に遠慮してやる道理は無いからな」
「そこの軍人に周りにいる魔獣。ついでに、さっき遺跡の中とブレイズリザードの渓谷で襲撃してきた奴らも全部お前の仕業か」
「へぇ、そこまで察しがついているんですか」
「あいにくと、俺の第六感センサーは特別製らしくてな」

 先ほど男とわずかに言葉を交わしたが、そこからどうも『意識』らしきものが感じられなかった。 

 俺の目には、帝国軍人の男と『彼』を繋ぐ『魔力』が見えていた。

 状況から見て、魔力を使い、少年の姿をした『彼』が男を操っているのだろう。

 魔力それはさながら、人形を操る糸のようであった。

「いつ、僕が怪しいと思ったんですか?」
「第一印象からちょっと怪しいと思っていました!」
「…………は?」

 少年風の顔立ちが、面白いほどにひきつった。

「じょ、冗談は嫌いなんですがね」
「や、〝第一印象〟ってのは半分冗談だけどな」

 年齢にしては随分と落ち着いていると思ったのは事実。この世界に成長が極端に遅いドワーフ族の他にも、幼い外見でよわい千を越える存在しているのを知っている。正確にはその化身ではあったが、少なくとも『子ども』というだけで無条件に信用するのは躊躇われた。

「一応、今の俺は護衛だからな。念のために部外者を護衛対象ファイマに近づけないようにいろいろと気を使ってたんだな、これが」
「……え? カンナがそんな気遣いを?」
「おいファイマ。いまの「え?」はどういう意味だ」
「だって……ねぇ」

 ファイマの言葉に、キスカとランドも「うんうん」と揃って頷いていた。覚えてろよお前ら。
馬車に案内役ガイドの親子を乗せる際に、あえて俺が指示を出したのもその為だ。この時に、俺がらしくもなく指示を出したことにランドが気づき、こちらの意図を察してくれた。そして念のため、後でランドと二人だけで話し合い、案内役の親子を警戒してくれるように頼んでいたのだ。

「もちろん、取り越し苦労ならそれはそれで全く問題なかったさ」
「……まさか、馬車の中で僕に見せたあの態度は?」
「ああ、わざとだ」

 実のところ『竜帝の歴所』に関する説明はしっかり聞いていた。聞いていないフリをして、話を無視された時の反応が見たかったのだ。

「いくら優秀な子どもだっつっても、初めての職場体験にしちゃぁ落ち着きすぎだ。普通、あんな態度を取られたら表情が崩れてもおかしくないってのに」

 違和感が確信に近づいたのは、竜帝の歴所いせきに到着した際、パペトが管理人に挨拶をしに行ったときだ。

「案内役の跡取りを目指すってんなら、観光名所の管理人ぐらいには親父と一緒に挨拶するだろうが。実際に、パペトとそこの管理人ぐんじんは顔見知りらしいからな」

 けれども、初めてこの遺跡に来たというのに、息子かれ父親マリトと共に管理人に会いに行こうとする素振りすらなかった。勤勉で真面目な跡取り息子であるのならば、考えにくい行動だ。その後も、父親からそこに関しての言及は一切無かった。

「この時点で八割くらいは疑ってたな」
「では、それが確信に至ったのは何故ですか?」
「最初の襲撃にあった後におまえがやった子どものフリが、超絶に気持ち悪かった」
「ですから、冗談は嫌いなのですが──」
「いや、こっちは真剣マジだ」

 もう、見ていて哀れと思えるほどに、子どものフリが似合ってなかったのだ。下手な役者が意気込みすぎて逆に滑稽になっている感じだ。鳥肌が立つのを根性で耐えたほどだ。

「少なくとも俺の中ではあの時点でマリトおまえが〝クロ〟だと確信できてた。だから、とりあえずお前の提案とは真逆の行動にでてたわけよ」
「……つ、つまり特に深い理由はなく、この僕をただ単純に〝怪しい〟という第一印象だけで疑っていたわけですか?」
「概ねそんな感じ」

 俺の正直な感想に。先ほどよりも更に少年顔がひきつった。

 推理小説で例えるなら、『噛ませ役が適当に〝怪しい〟と公言した人間が、本当に犯人だった』と、奇をてらうにしてもお粗末すぎる話の作りだ。

「さて、長話もここまでにしておこうか」

 俺は氷円錐の数を一気に増やし、全ての先端を少年かれに向ける。これだけの数であれば、盾となる操り人形ぐんじんがいても防ぎきれないはずだ。

「ちょ、話はまだ──」
「離れてろファイマ。この手の輩は、時間を掛けると余計面倒くさい事態に発展するのが相場だ」

 ファイマが止めようとするが、俺はその言葉を途中で切り捨てた。今の話に付き合っていたのは、ファイマたちに俺の行動を納得させる意味合いが強かった。もしこの場に彼女ファイマたちがいなければ、『玉砕混淆ドロップキック』の直後にトドメを刺している。

 ただ、完全に息の根を止めてしまうのはそれはそれでまずい。こいつには聞かなければならない事情が山ほどある。

「だから、とりあえず無力化して、手の内を封じる。話はその後でじっくりと聞けばいいさ」

 ドラクニルの皇居に戻れば、犯罪を犯した魔術士を拘束するための方法くらいはあるだろう。それまでは、意識を奪った上で両手両足を拘束し、氷の檻にでも閉じこめておけばいいはずだ。

「まさか……また裸にする気か!?」

 アガットの言葉に思わず膝が折れそうになり、氷円錐の切っ先もガクリと下がった。

「貴様! もしや人の裸に興奮する輩なのか!」
「何で俺がシリアスな空気を出すとお前らことごとくへし折ってくんのかなぁ!? あれか!? 俺がシリアスになるのが許せないのか!?」

 お姉さま系の巨乳美女の裸は大好物だが、幼女趣味はない! 例えロリ巨乳でも食指は動かんわ! 『男の娘』だったらなおさらノーサンキューだ!

「……普段の行いが悪いからでしょ」

 ファイマが少し離れた位置からツッコミを入れてくる。

「やかましい!」

 半ばキレ気味に叫び返してから、俺は氷円錐を少年に向けて放った。もはやグダグダだな畜生。

 案の定というべきか、少年の前に軍人が両腕を広げて立ちふさがった。その身を盾にさせる・・・つもりか。

身代わりそれは想定内だ!」

 氷円錐の速度は、全力の六割程度に抑えていた。それでも、ちゃちな鎧なら貫通できる程度の威力は有している。精神力の消費を押さえる意味もあったが本命は別だ。

 速度を抑えた分だけ、〝制御〟に意識を向ける。氷円錐の先端が盾代わりの軍人に届く寸前で、その軌道を一気に傾けた。軍人の躯を迂回し、その先にある少年をカーブを描きながら少年へと氷円錐が殺到する。

 ──氷円錐は少年に届くこと無く空中で砕け散った。

 多少なりとも制御に精神力を費やしていた反動で、俺の指先に強い痺れが生じる。

「……あまり僕を舐めないでいただきたいですね」

 怒りと嘲りを混ぜ合わせたような声を発しながら、少年がゆっくりと立ち上がった。入れ替わるように、身を盾にしていた軍人はまさしく糸が切れたように力を失い、膝を折って倒れた。

「自分が動くのは主義ではないのですがね、ここに至っては仕方がないでしょう。光栄に思ってください。僕自ら手を下すことなど、滅多にないのですから」
「そんな光栄は物理的にクーリングオフしたいね」

 他人に卑怯云々を説教できるほど上等な人間ではない自覚はある。そんな俺であっても、許せない領分とは間違いなく存在していた。己の手を汚さず、一人だけ高みの見物を決め込む外道に対して、俺は強い不快感と怒りを覚える。

「いつまでも『お前』呼ばわりは嫌なので名乗っておきましょう。

 ──結社『大いなる祝福アークブレス』の一柱。『糸使いのラケシス』。

 短い間柄になるでしょうが、よろしくお願いしますよ」

「誰がよろしくするかこの畜生が」

 何よりこいつは、クロエを使い捨ての手駒としていたのだ。

 許せる道理など、欠片一つもない。

「てめぇの胸くそ悪い筋書きシナリオなんぞ、俺が愉快に痛快にぶっ潰してやる。覚悟しやがれ!」
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