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カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー 作者:ナカノムラアヤスケ

第八の部 歪む天命

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第九十五話 断崖絶壁はすぐに思い出せませんでした

ガンダムブレイカーをプレイ中。
何を考えたのか、カプルの胴体(=頭とセット)でラスボスを倒す。
終盤が非常にシュールな絵になった……。
 
 ドリスト伯爵家に到着した時点で、既に多くの招待客が到着していた。パーティーの会場は、伯爵家屋敷にある講堂だ。パーティーを開催できるだけあってその大きさは広々としており、内装も豪華だ。貴族という存在の財力を窺い知ることができる。

 屋敷の門前で馬車から降りたファイマとはその時点で別れ、会場の警備に参加する俺を含む四人は屋敷の警備責任者の元へ向かった。パーティー参加者の御付き以外の護衛者は、一度責任者に話を通しておく必要がある。そうしないと、皆が好き勝手に動いて収拾が付かなくなるからだ。

 責任者は剃髪で厳格な表情が印象的な壮年の男性だ。

「貴殿らが、ユルフィリアからいらしたご令嬢の護衛か。私はドリスト家守護の責任者だ。話は既にゼストから聞いている。本日はパーティーの警備をよろしく頼む」

 俺たちの場合は既にゼストに御付きとそれ以外の護衛の数を申告していたので、責任者との打ち合わせはそれほど時間は掛からなかった。中には事前申告よりも倍以上の人数をつれてくる輩もいると、彫りの深い顔に苦笑を混じえて聞かされた。

「……あまり言いたくはないが、くれぐれも問題は起こさないでくれ。貴殿らの主は国賓とはいえ外様とざまだ。下手を打てば外交問題に発展するのでな」
「…………ご忠告、感謝いたします」

 アガットはそう言ってから、俺の方を一睨みした。おいおい、人をトラブルの申し子みたいに見ないでくれ。

 俺だったらトラブルに発展しないように上手い具合に立ち回る。

 バレないように不届き物を折檻するのは大得意だ!



 講堂へと続く大扉はパーティーの参加者用なので、俺たちは使用人が出入りする小さな扉から会場の中へと入り込んだ。

 一歩踏み出せば、そこは『貴族の世界』だ。

 パーティーの正式な開始の宣言はされていなかったが、会場の中には既に来賓の貴族達で賑わっており、誰も彼もが上等な服や煌びやかな装飾品を身に纏っている。

 至る所で、笑顔を浮かべた紳士や貴婦人達が会話を楽しんでいるように見えるが、それを眺める俺の内心はどうにも辟易していた。

「……どうしたのですかカンナ殿。随分と険しい顔をしていますが」
「ちょいと気が滅入ってきそうだ」

 貴族様のパーティーと聞けば晴れやかなイメージが強いが、実際はそうではない。むしろ、表の印象が明るければ、その裏側の陰もまた強くなるのだろうか。

「どいつもこいつも腹に一物抱え込んでいるようなのばっかりだな」
「初めて貴族が主催するパーティーに参加すると、目を輝かせる者が大半だが、貴様の反応はむしろ長年社交界パーティーを渡り歩いてきた古株のようなそれだな」

 感心とも呆れともとれるアガットの言葉だ。

 人の醸し出す気配に敏感になってから、初めてこの感覚を呪いたくなった。

 昼間の街道で人混みの中を歩いているときは、様々な感情が行き交っており、むしろ統一性がなかったことで逆に気にならなかった。

 ところがこの場にいるのは、笑顔の仮面を張り付けて相手の内側を探ろうとする者ばかり。あえて味覚で例えるのならば、口に含んだ瞬間は甘いが、その後に果てしなく苦みが続いていると表せばいいか。正確に言い表すのは難しい。彩菜関連のパーティーに参加した時はさほど気にはならなかったが、今の俺にとっては色濃く感じ取れてしまうのだ。

 俺ほど顕著に人の機微を読みとれなくとも、その渦中に身を置くのだ。ファイマがパーティーに苦手意識を持つのも理解できる。

「入り口付近で固まっているわけにもいきません。そろそろ配置に付きましょう」

 スケリアに言われて、俺は頷いた。

 仕事で来ている以上、「雰囲気が嫌いなのでパス」とは言えないのだ。

 ミッション『壁の模様』。

 ミッション内容『壁の模様になること』。

 ミッションの心得『俺は壁で壁は俺と強く念じること』。

「貴様は事あるごとにフザケないと生きていけないのか?」
「よく考えてることが分かったな。ご褒美に飴ちゃんいるか?」
「子供か私はっ!? ……まぁ、くれるというのなら貰うが」

 貰うんかい。だんだんと、アガットが精一杯背伸びをしている子供のように見えてくる。見た目が爽やかイケメンだからギャップが半端ない。もしかしたら、これはこれで一部の『大きなお姉さん』達に大人気かもしれないと思い始めてきた。

 ……パーティーが終わったら、真面目にランドと話をしておくべきだろうな。アガットが肉食系女子に『喰われる』前に。

 俺たちはそれぞれ指定された位置に付いた。警備の者が一カ所に集まっているとパーティーの光景に似つかわしくないと言う理由で、個々の距離はある程度離れている。分散して警備の目を広くする意味もある。監視カメラという便利道具がないこの世界で頼りになるのは人間の目である。

 それから十分ほどが経過した頃か、会場の奥の暖炉と絵画が立てかけてあるもっとも目立つ位置に一人の貴族が歩み出た。青い髪に二股の角を持った竜人族の男性だ。特徴から言ってドリスト家の当主か。

 彼は美辞麗句を並べた前口上の後に、パーティー開始の宣言をした。内容は学校の校長が朝の集会で口にする無駄に長い話と同じく、つまらなかったので大半は聞き流した。立ったまま居眠りをしなかった俺の忍耐力を誰か褒めてくれ。

 既に賑わいを見せていた会場内だったが、開始の宣言と共に会場内に音楽が流れ始める。見ると、楽器を持った集団が演奏をしている。

(さて、我らがお嬢様はどこかなっと……)

 視線を巡らせると、運の良いことに俺が担当する場所から見える位置にファイマの姿を見つけることができた。当たり前の話がその傍にはランドとキスカが立っている。どうやらファイマは、この国の貴族らしき恰幅の良い男性と話している最中だった。人見知りを拗らせてはいても教育はされているのか、ファイマは笑みを浮かべながら話を続けている。ただ注意深く観察すると、その表情が微妙に硬いのが見えたが。

(しっかし、ああやって着飾ってるとお嬢様ってぇよりは『お姫様』に見えるな)

 彼女の美しさは周囲の女性たちと比べて明らかに輝きを放っていた。話をしている男性の他にも、彼女に顔を向けている人間がちらほらといる。純粋に外国からのお嬢様に興味を持っている者もいるが、彼女の美貌に見惚れている数の方が多い。俺だって、知り合いでなければ同じく彼女の美しさに視線を奪われていただろう。

 この時点で、俺は彼女に視線を奪われているのだと、少しの間をおいてから気づく。やれやれ、思春期かい。ああ、思春期真っ直中でしたね、俺。

 男性と話し合っていたファイマは小さく息を吐くと、何気ない動作で顔を動かす。その過程で不意に俺と視線が合った。距離も離れており、人も多く間に挟みながらもあちらはこちらの姿を確認できたよう。俺は周囲に見咎められない程度に小さな動作で手を振ると、彼女は先ほどまでとは違う屈託のない笑みを浮かべた。彼女も小さく手を振ってから、会場の奥へと進んでいった。

 衣装一つを変えるだけでもこれほど印象が変わるとはな。俺が初な少年だったら一目惚れも不思議ではない。

 俺はふと、レアルの事を思い出す。

 彼女も、鎧姿からワンピースに着替えればその印象もガラリと変わった。叶うならもう一度あの姿を拝みたいところだ。あ、だったらワンピースではなく今のファイマみたいなドレスでもーー。

 そこまで想像した俺は、己の頬が強烈な熱を帯びたのを自覚した。

(これはやばい…………理性が)

 ファイマのドレス姿も『破壊力』は十分だったが、レアルのそれはまた別に凄まじい威力を発揮していた。想像しただけでもこれなのだから、実際に目にしたら果たして俺は正気を保っていられるか。

 俺はこんなに純情な男では無いはずなのだが。レアルを『女』として見たとき、俺は自らの感情を制御できないようだ。

 ーー俺がその『感情』に明確な言葉で表すのはまだ少し先の話だ。

 俺は着飾った銀髪美女を頭の中から打ち消し、誤魔化すように会場内を見渡した。



 どうせなら奇抜な壁の模様になればおもしろいのでは無かろうか、と危ない思考を頭の片隅にくすぶらせつつもパーティーは続いていく。

 これまでに何度か貴族に声を掛けられた。内容は「トイレはどこか」だとか「人気ひとけのないところで休みたい」という道案内。言葉遣いは三日間の練習で、屋敷の構造は責任者に『屋敷の内部で貴族に聞かれるであろう場所』をあらかじめ教わっていたのでその通りに答えた。付け焼き刃の対応だがどうにかなっている。

「ごめんなさい。ちょっといいかしら?」

 また声が掛けられる。これまた随分と綺麗な女性だ。一部分だけ・・・・・が個人的に非常に残念な事になっているが、それを除けばまさに一級品の美しさ。

「なんでしょうか?」
「少し会場の熱気に当てられたようなの。どこか夜風を静かに涼める場所はないかしら?」
「それでしたらーー」

 こちらも警備責任者に教わっているのですんなりと答えることができた。だが、女性は少し困ったような顔をしてしまった。

「……ごめんなさい、ちょっと覚えきれないわ。申し訳ないのだけれど、案内してもらえないかしら?」

 よく見れば、女性の頬は若干だが上気している。会場の熱気と言うよりは、出された酒類で酔ってしまったのかもしれないな。招待客とは言え、屋敷の中を好き勝手に歩き回られたら困るだろう。酔いが回っているのならば尚更だ。

「少々お待ちください、他の警備の者に伝えてまいりますので」

 俺は女性に小さく断ってから、一番近くで警備を行っている者の所に向かう。一時的にこの場を離れるために、その旨を他の者に伝えるためだ。

 近くにいた警備の者は話がすぐに了解の返事をくれたので、俺は礼を言ってから女性の所に戻った。

「お待たせいたしました。ではご案内いたします」

 女性を連れて、俺は静かに会場の外へ出た。

 電気蛍光灯などあるはずもなく、屋敷の通路には魔術具のあかりが、足下を見失わない程度にともっている。会場から賑わいのある声が漏れ聞こえてくるためか、不気味さと寂しさを増している。

 程なくして、屋敷の中にある庭園に到着した。小さな噴水に腰を下ろせるベンチもある。訪れた俺たち以外に人の姿はないし、一人で休むにはちょうどいい場所だろう。

「どうでしょう、ここなら静かに涼むこともできると思いますが」

 俺はそう言って振り向こうとした。


「……ええ、ありがとう。白夜叉・・・君」


 背中から声を掛けられた瞬間、身も心も鷲掴みにされたような錯覚に陥った。心臓が激しく脈を打ち、血流の流れが耳元に届く。


 咄嗟・・に、十近くの氷円錐を空中に具現し、振り向き様に『女性』へとその全ての照準を定めた。


 他人が見れば俺が暴挙に出たとしか思えない光景だろう。だが、数多の氷円錐の先端を向けられながらも、女性は微笑みを崩さなかった。

 ーーパチパチパチ。

 それどころか、俺を褒めるように手を叩いたのだ。

「……いやはや、素晴らしいな。後もう少し反応が遅れていたら『殺して』いたところだが、僅かな間もなく臨戦態勢に入るとは」

 口調が変わった女は、笑みを保ったまま。だが、にじみ出る気配は道案内を頼んできたときとは全くの別物だ。お上品な貴婦人の内側に隠れていたのは『獣』を思わせる獰猛な影。

 どこに隠していたのか、膨大な量の魔力が今ははっきりと感じられる。

 俺は氷円錐をいつでも発射できる状態にありながら動きを止めていた。本能的な部分で、迂闊に手を出せば最悪の展開に陥るのだと悟っていたからだ。

「……何で俺の事を知っている」
「別に不思議な話ではないだろう。この町の冒険者にとって、君の二つ名は有名だ。鉱山事件の解決に大きく貢献し、Aランク冒険者の後より答えを出す者フラガラッハや、元Sランク冒険者であるギルドマスターとも個人的な繋がりを持っている。話題にならない方がおかしい。ーーもっとも」

 女は彼女は己の左腕をさすった。まるでそこに刻まれた『何か』を愛おしむかのように。

「これは後から調べて知ったことだ。私が君に興味を持ったのはそこ・・ではない」
「悪いが、知り合いにアンタみたいな物騒な美人はいないんだが」
「おやおや、忘れてしまったのか。あれだけ堅くて大きなモノをぶつけてくれたというのに」
「人聞きの悪いことを言わないでくれませんかね!?」

 美人とは言えこんな危険な匂いのする女性に手を出すほど、俺は女に飢えてはいない。ましてやこんな断崖絶壁・・・・には……。

「おい、今物凄く不届きな事を想像していなかったか?」

 勘も鋭いらしい。純度の高い殺気・・・・・・・の篭もった目で睨まれる。
 俺はこの瞬間になってようやく女の顔に見覚えがあるのを思い出した。

 浴びせられる刃のような気配に隠れ、最初は気が付かなかった。だが、彼女の今の『目』を見て記憶が呼び覚まされると、その魔力の中に潜む『気配』をありありと感じ取れた。

 俺が『白夜叉』と呼ばれるようになった鉱山事件の最後に出くわした、『黒幕』の片割れ。六本の剣を携えていた女だ。

 だがあの女は……。

「嘘だろ。巨大氷砲弾あれで仕留め切れてなかったのかよっ!?」
「ようやく思い出してくれたのか。酷い男だ。私はあの日から君のことを一瞬たりとも忘れたことは無かったのに」

 男としては殺し文句にも聞こえるセリフだ。ただこの女の場合、比喩表現の入り込む余地がない、本当の『殺し』文句に聞こえるから恐ろしい。

「一度は冒険者ギルドに身を置いていたからな。『二つ名』は知っているだろうが名乗っておこう。

 私の名は『天剣のシュライア』。そしてーー」

 彼女は間を置いてから、宣言するように言った。

「結社『大いなる祝福アークブレス』の一柱だ」
『敵』と『真面目』に顔を合わせたのはおそらく今回が初めてでしょう。
……正しくは前にも別の人間と普通に顔を合わせていると思いますが、『彼』を明確に意識をして相対したのは『天剣』が初めてです。
先に断っておきますが、彼女はヒロインではないのでご注意を。



次は多分、『カンナ』よりも↓こっちの方を更新するかな?
『アブソリュート・ストライク 〜防御魔法で天下取り〜』
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