2話
中井の依頼内容は、実に不思議なものだった。
先日、鴉に案内されて事務所に来た彼は
「詳しい話は自宅でしたい」
と、詳しい話をしなかった。
それを不信に思った鴉が
「何故?」
と洩らし、対して縁は実にあっさりと答えを述べた。
「かなり特殊な探し物なんだろう。恐らく人間か、あるいはその人間の何かか・・・」
「どうして分かるんです?」
「お前は馬鹿か?ここでは話せない事なんて、話したら普通は依頼を受けてもらえないような事なんだよ」
「えっ?」
「しかも話を聞かせてから『依頼を受けない』なんて言われたら相当厄介なことになるんだろうな」
「じゃぁ・・」
「これ、多分殺しが関係してると思うぜ」
「そんな!?」
鴉は何故そんな依頼と分かっていて受けるのか、そう彼に問いかけずにはいられなかった。
「・・・以上、俺が予想した依頼内容ですが?」
縁は鴉に説明したような内容を中井に再び行った。
「そこまで・・」
「そこまで分かっていて何故依頼を受けたのか、ですか?」
中井は黙って頷いた。
ニヤリ。縁の口が弧を描く。
「そんなの決まってんじゃン。面白そうだから」
鴉にした理由と一言一句違えることなく全く同じ台詞で返した縁。
そんな縁に鴉はため息をつき、中井は瞠目する。
「でさ、詳しい話をして頂けませんか?」
悪戯が成功した。そんな笑みを見せながら縁は呆然としている中井に話しかける。
「あ、あぁ・・・」
中井は少し間を置き、再度縁に確認の問いをする。
「本当に依頼を受けて頂けるんじゃろうか?」
「俺達はそのために来たんだよ」
中井は深く頷き、覚悟を決めたのか、縁達を正面から見据えた。
「あの子の・・・香月の記憶を探し出して欲しいのじゃ」
中井の目には涙がたまっていた。
****
香月は夢をみていた。
香月は夢をみている自覚があったのだ。
「私、いつの間に寝ちゃったのかしら?」
そう言いながら自分の記憶を辿る。
しかし、不思議な事にあるべき記憶は断片的にしか思い出せない。
それどころか、寝る前に何処に居たかすら忘れてしまっているのだ。
「どうして?」
香月は恐ろしくなった。
このままでは全ての記憶が消えてしまうのでは、と思ったのだ。
『大丈夫』
誰かの声が響いた。
『要らないモノだけ消してあげるから』
優しく呟く声。
暗闇に抱かれながら、香月は夢の中で眠った。
深く、深く。
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